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72話

 ヘイデンさんの葬儀が終わった翌日。


 今日はお店の商品を中心に片付ける事になっている。朝の仕事を終えた母とペリシアも手伝うから夕方までには終わるだろう。

 皆が片付けをしている間、俺はマホンへ帰ってきた報告と変異種などの報奨金を受け取りにギルドへ行く。


「ここに木箱を全部置いておくよ。ギルドから帰ってきたら俺も手伝うから」

「ありがとう。いってらっしゃい」


 整理して入れる木箱をアイテムボックスから出して1カ所に纏めておく。

 詰め終わった木箱は重いからそのまま部屋に置いておいてもらい、俺が後で回収する事になっている。


「お母さん、後お願いね」

「大丈夫よ、テナーも気をつけてね」

「お兄ちゃん、いってらっしゃい」

「うん、行ってきます」


 皆に見送られて久しぶりのギルドへ向かう。


 既に朝の忙しい時間を過ぎているギルド内は人は疎らだった。

 今回は売却ではないのでアビーさんのいる買い取りのカウンターではなく、依頼カウンターへ向かう。

 ここは依頼人と冒険者の斡旋するためのカウンターとなっており、依頼達成の報酬を受け取るのもここだ。


「報酬を受け取りに来ました。それと、マホンへ帰ってきたのでついでにそれの手続きも一緒にお願いします」


 ワカミチ村で受け取っていた書類をギルドカードと共に受付嬢へ渡す。


「依頼達成の報酬と帰還の手続きですね。暫くお待ちください」


 受付嬢が処理をしてくれている間は特に何もする必要がないのでギルド内を見回している。

 チラッと買い取りカウンターを見たが、アビーさんの姿は見えなかった。


「お待たせいたしました、手続きが終わりましたのでカードをお返しします。こちらが報酬と素材の代金等になります」


 カウンターに置かれた硬貨に思わずあんぐりと口を開けてしまった。

 金貨が57枚に大銀貨が5枚、後は銀貨と銅貨が複数枚あった。


「凄い額ですね」

「そうですね。通常はPT内で分配されるのが一般的ですので、ドルテナさんのように1人で受け取られる人は見たことがありません。それと、素材の買取額もかなりの額だったようです。明細には……魔石が3個もありますので」


 あいつらそれぞれに魔石があったのか。

 銀貨とか銅貨はノーラ達の分かな?


「そうですか……ではありがたく頂戴します」

「あ、それとドルテナさんへお伝えしなければならないことがございます。恐れ入りますがお時間を少しいただけますか?」


 ギルドから俺へ話があるらしいが、そんなに時間は取れないんだよな。

 受付嬢がカウンターに出した硬貨をアイテムボックスへ入れながら時間があまりない旨を伝えた。


「いえ、ご心配なさるほど長くはならないと思います」


 長くなるならエルビラの片付けが終わるまでに帰れなくなるけど、そうじゃないならいいか。


「わかりました、それなら大丈夫です」

「ありがとうございます。ではご案内いたします。こちらへどうぞ」


 受付嬢に促されてカウンター内にある応接室へ入りソファーに座る。

 案内してくれた受付嬢がお茶を出してくれたのでそれをいただきながら待っていると1人の男が入ってきた。


「待たせてすまない。君がドルテナだね?私はギルドランクの試験官のヴィクターだ」

「初めまして。見習い冒険者のドルテナです」


 出された手を握りながら挨拶をする。


 で、ランクアップの試験官が何の用だ?


 試験官はランクD以降のランクアップの際に、その冒険者が上のランクでやっていけるだけの戦闘力があるのか、また素行はどうなのか等を試験を通して判断する。

 ランクEまではギルドポイントを規定数満たせば自動的にアップする仕組みとなっており、試験官のお世話にはなることはない。


 そして、ランクFになったばかりの俺はまだギルドポイントが貯まってないからそもそもランクEには届かない。

 変異種を倒したがそれだけでランクアップにはならないだろう。


「さてと、何から話すべきかな……。ふむ、そうだな、君のランクについて話すか」

「私のランクですか?今はランクFですが」


 話の先が見えんな。もしかして「実はランクFは間違いでした」とかって事はないよな?


「知ってる。君は確かにランクFの見習い冒険者だ。見習いでランクFなんて近年聞いたことがないからな。それでだ、君はランクEへのランクアップの機会があればどうする?」


 いや、どうするって聞かれても。ランクは上げるほど受けられる依頼の報酬額が高くなるから上げたいに決まっている。


「ランクアップはしたいです。けど、その機会というのはどういう事ですか?」

「うむ、先日の変異種討伐とその素材をギルドへ売却したギルドポイントにより、ランクEになれる」

「ふへ?……E?」


 予想していなかったランクEにランクアップするという言葉に思わず変な声が出てしまった。

 この前ランクFになったばかりでポイントは貯まってなかったはず。

 あ、ミキヒで普通の猪と魔物の猪を倒したからゼロではないか。でもそれとて高がしれている。

 俺が理解できないという顔をしているとヴィクターは話を先に進めた。


「だがな、それには試験みたいなものを受けてもらうことになるがな」

「試験?ですか?」


 ランクDにランクアップする際は試験があるが、ランクEにあるとは聞いたことがない。


 ランクDからは様々な護衛依頼を受けられるようになる。

 そうなると対人戦もありえる。つまり人を殺すという行為をすることになる。それができるかどうかの試験を受けさせられるのだ。


「あぁ、本来はランクEになるのに試験は必要ないんだがな。ランクDまではギルドポイントが貯まれば自動的にランクアップする。しかし今回の変異種討伐を本当に君1人でやったのかどうか疑問視する声があってな。それを証明することがランクEへの条件と決まった」

「証明ですか?でも変異種討伐の報酬は貰えてるのでそれが証明にならないのですか?」


 俺が倒したと認定されているから俺は報酬を受け取ったし、ギルドポイントだって俺に入っている。それこそがギルドが俺が倒したと証明しているではないのか?


「君の言い分も正しい。だがな、普通ではあり得んことなんだよ。ランクFの冒険者が変異種を単独で倒すなんてな。それも見習いだぞ」


 まぁ確かに見習い冒険者が変異種を倒しましたって言っても普通は信じんわなぁ。


「この前の会議で君のランクアップの対応が議題に上がってな。幹部の意見が別れに別れて大揉め。結局結論が出たのは深夜になってからだったんだぞ。その結論が戦闘力の裏付けを取れてから、というわけだ」

「それはまた……お疲れ様でした」

「……お前のことなんだがな。まぁいい。それでだ。ヒュペリトは知ってるな?」


 ヒュペリトはマホンの西にある2,000人程が住む小さな村で、兎族が多く住んでいると聞いたことがある。

 馬車で2日位だったはずだ。

 詳しいことは知らないが村としては知っているので頷く。


「ヒュペリトから狼の群れの討伐応援要請がマホンのギルドへあった。本来なら依頼ボードに出す予定だったんだが、ちょうど君のランクアップのことがあったからギルド内で処理することになった」

「狼の群れ……ですか?それならヒュペリトの冒険者でも可能なのでは?」


 ヒュペリトが村とはいえ冒険者がいないわけではないだろう。群れくらいなら十分対応できるだろうに。


「そうだ、普通なら対応できるだろ。だが今回の群れは少し厄介でな、普通なら多くても10匹程度の群れなんだが、どうやらこの群れは20数匹。更にその群れを率いているのが魔物2頭だ。連携も普通種だけに比べてかなりいいらしくてな、護衛付きの行商人の馬車もやられたらしい」


 倍以上の規模で連携もいい群れにいきなり襲われたらキツいだろうな。


「それで、ヒュペリトから出る討伐隊に俺が加わると」

「いや、ヒュペリトからは出ない。ここから2PTが一緒に向かうことになっている」

「え?ヒュペリトから討伐隊は出ないんですか?」


 ヒュペリトの討伐隊が主でマホンからは増援というのが当たり前なんじゃないの?

 なんでマホンのギルドに押し付ける?


「あぁ、こちらの都合で全て受けさせてもらったんだ。考えてみろ。うちから応援に出した奴が、実はランクアップ試験を兼ねていてオマケに見習い冒険者です、なんてヒュペリトからしたらあり得んだろ」

「……それもそうですね」

「だから今回の討伐はマホンのギルドで責任を持つことにしたんだ。それにランクFがこのタイプの依頼を受けられんのだ」

「でしょうね。ランクFの冒険者が狼の魔物の群れを相手にするって聞いたことないですから」


 どう考えてもランクDもしくはCの人達の仕事内容だと思うんだけど。


「ふん。変異種を単独で倒せるやつなら狼程度どうってことないだろ?」


 変異種よりかはここの戦闘力は低いだろうけど、今回は群れで更に障害物の多い森の中という事を考えると俺にとっては、いや、銃にとっては不利なんじゃないだろうか。

 視界が開けているから銃のアドバンテージがあるように思うんだよなぁ。


「……善処します」

「まぁ頑張ってくれ。実際の戦闘でドルテナの戦闘力を確認した後、ランクEへのランクアップとなる。それと現地までの移動手段はギルドが用意する。後の物は自分で用意するように。野営の準備については最初の講習会で習ったはずだから大丈夫だな?」


 正直うろ覚えだけど大丈夫だろう。


「はい、大丈夫です」

「では出発は3日後。日の出前に西門に集合するように。それからヒュペリトで1泊して狼の生息地に向かう。生息地までは2日かかるが、魔物の生息地が調査内容と異なっている場合は追加で野営することになる。予定より多く野営する可能性があるから用意もそのつもりでするとこ。以上だが、何かあれば私まで連絡するように」

「あ、でしたら、自分が倒した狼の所有権は主張しても良いんですか?後、討伐報酬はどうなりますか?」


 魔物となれば肉はうまいだろうし魔石もあるだろう。毛皮だって高く売れるからそれをみすみす手放すのは勘弁して欲しいと思う。


「自分が倒した狼の所有権は勿論だ。魔物の討伐報酬は一応試験となっているが通常通り出る。但し依頼報酬はないのでそのつもりで」


 自分が倒した狼の所有権と討伐部位での報酬だけか……それでも良しとするか。


「わかりました。では3日後に西門前で。それでは失礼します」


 ヴィクターとの話が終わった俺はギルドを出て、待っているエルビラの元へ少し急ぐのだむった。



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