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64話

 1つの頭へ狙いを付けて引き金を引こうとしたとき、盾を構えていたセベロが蛇の尻尾に叩かれて吹き飛ばされ、10m先の木にたたきつけられた。

 木の根元に倒れてたまま起き上がってこない。身動き1つしていないが危険察知は反応しているので気絶しているだけのようだ。


 セベロを吹き飛ばしたことで邪魔者がいなくなった蛇は、地面に転がっている獲物へ視線を向けた。

 中央の蛇がアダンを咥えて持ち上げると、左右の蛇が頭部と足をそれぞれ食い千切ってしまった。

 その光景に思わず目を逸らせた。


 蛇はムシャムシャと咀嚼しながら次なるターゲット、俺を見据えていた。


「……ったく、オマエらグロすぎるわ!悪いがそっちに勝ち目はないぞ」


 未だに口を動かしている蛇に時間は与えない。

 直ぐに狙いを付け直して引き金を引く。


ー タンッ …………ドゴォン!! ー


 俺が引いた引き金は銃身の下に付いているアンダーバレルの方だ。

 このアンダーバレルにはグレネード弾が1発しかないが銃弾よりも破壊力はある。


 そのグレネードが着弾したのは3つの蛇の胴体付近。

 態々3つもある頭を別々に相手してやる必要なはいからな。


 グレネードは期待したとおりの破壊力だったが、ど真ん中には当たらなかったようで蛇の胴体の半分ほどを大きく抉る程度だった。

 着弾した辺りは血が噴き出しており、肉の焦げた臭いが俺の所まで漂ってきている。


「チッ!ど真ん中に当たらなかったか」


 3匹は怒り狂って襲おうとしているが胴体が動かないのでうまく移動できず、俺まで近寄れないようだ。

 こうなればもう怖くない。


 先ずは1匹目、パメラを食べた奴から頭部に狙いを付けてトリガーを引く。


ー ダダダダダダ ー


 FN P90に比べて威力の上がったFN SCAR-Hの弾を受けた蛇はビクッと身震いをした後、ドスン!と地面を揺らして倒れ込んだ。


「よし、当たれば倒せるな!……次!」


 マガジンを交換して2匹目に狙いを付ける。


ー ダダダダダダ …… ダダダ…ダダダ… ダダダダダダ ー


 1匹目が倒されて何が起きたのかある程度理解したのか、頭を動かし続けているせいでなかなか当て難い。

 だが胴体が動かせないので必然的に頭の動く範囲も決まっている。

 何度か外したが銃弾を頭に当てることができた。


 2匹が倒されたことで勝てないと思ったのか最後の1匹が逃げだそうとしている。

 しかし胴体がグレネードで吹き飛ばされ、他の2匹が地面に倒れている状況では首を後ろに向けるのが関の山だ。

 頭が狙える位置に移動しながらマガジンを交換する。


「もう観念しろ。俺がいた時点でオマエらに勝ち目はなかったんだよ」


 俺が近づくのが分かったのか、生き残っている蛇は胴体から首が離れるんじゃないかと思うくらいに必死になって伸ばしている。


「……じゃあな」


 最早脅威にもならなくなった変異種の蛇へ向けて引き金を引く。


 ー ダダダダダダ ー


 他の2匹と同じように頭に銃弾を受けた後、ビクッと体を震わせて動きを止めた。

 すると蛇を覆っていた赤いシルエットは消えた。


「ふう。……変異種ってこんなにデカくなるもんなんだな」


 倒したとはいえ、蛇がこのデカさになるなんて信じられない。


「ヘイデンさんの容態はどうかな?」


 急いで2人のいる所まで戻るが、エルビラに看病してもらっているヘイデンさんの顔色は余り良くない。


 ……脂汗が凄いな。


「ドルテナ君!」


 近づいてきた俺にエルビラが抱きつく。


「もう大丈夫だ。蛇は死んだよ。ヘイデンさん、ワカミチまでの辛抱ですから頑張ってください」


 俺の問いかけに首を動かして応えた。


「エルビラ、俺はセベロを縛ってくるからもう暫くここにいてくれ」


 ヘイデンさんとエルビラを縛っていた縄を拾いセベロを縛り上げる。

 その際に防具は全て脱がせておいた。

 アイテムボックスからナイフなんかを取り出されたらたまらないので、掌は何も物が持てないようにグルグル巻きにしておいた。

 ボクシングのグローブみたいになったが安全第一だ。


 蛇をアイテムボックスに入れて、落ちている剣を拾っておく。


 幸いなことに馬車と馬は無事だった。まぁ、馬はかなりビビっていたが水と飼い葉を与えて落ち着かせた。

 馬車に馬をつなげた後、ヘイデンさんとエルビラを乗せて、最後にセベロを馬車に放り込んだ。


「エルビラ、こいつを見張っておいてくれ。いざという時のためにナイフを渡しておくけど、何かあったら直ぐに俺を呼ぶんだぞ?」

「わ、わかったわ」


 御者台からエルビラに声を掛けて馬車を出す。

 エルビラの横に寝ていたヘイデンさんはかなり辛そうだ。やはり蛇の解毒ができていないのかもしれない。

 普通の蛇なら兎も角、変異種となると毒も変異している可能性が高いと思う。


 途中の休憩所には寄らずに走り続けた。馬達にも頑張ってもらったお陰で2時間ちょっとでワカミチまで帰って来られた。


 馬車としてはかなりのスピードで近づいてくる俺達に警備兵が警戒している。

 門の手前ギリギリで馬車を停めた俺に向かって警備兵が怒鳴ってきた。


「オマエら何を考えてんだ!敵対行為で攻撃されても文句は言えんぞ!!」

「すみません!でも仲間が怪我をしていているんです!変異種に襲われたんです!」

「ッ!!変異種だと!」


 変異種が出たと聞いた警備兵が慌てて馬車の中を確認した。


「怪我人は1人か?……なんでこいつは拘束されてるんだ?」

「1人です。そいつは俺達を騙そうとしたんで捕まえました!早く解毒剤を!蛇の毒が抜けてないんです!」


 グルグル巻きにされたセベロを見た警備兵が周りの者達へ指示を出す。


「とりあえず中に入れ。おい!医療班を呼んでこい!怪我人を詰め所に運ぶぞ。そいつは適当にぶち込んどけ」


 警備兵の指示に従って馬車を詰め所に停める。

 運ばれていくヘイデンさんにエルビラが付き添うなか、俺は警備兵に説明を求められた。


「きみ、詳しく話を聞かせてくれ。変異種はどこで出た?どんな奴だった?」

「2つ目の休憩所で出ました。頭が3つある蛇で胴体のサイズは直径が1m以上。3人の冒険者が犠牲になりました。仲間も肘をやられましたが、ランク4の治療薬でとりあえず止血はできていますが解毒はできていません」


 ヘイデンさんは2時間以上毒に犯されているから早く解毒しないと危険だ。


「今、仲間は医療班が処置をしているから安心しなさい。直径1m越えか……おい、軍に連絡を入れろ!討伐軍を出すぞ」

「え?あ!ちょ、ちょっと待ってください!それは必要ないです!蛇は倒しましたから。だから仲間を助けて下さい!」


 蛇よりもヘイデンさんなんだよ!


「いくら仲間を助けたいからって、バカなことを言っちゃぁいかんよ!君の話だと1小隊は必要な相手だ。それを倒しただって?他に仲間がいるのか?」

「いえ、仲間はあの親子だけです。あの蛇ならアイテムボックスに入ってます!……必要なら出しますけど」


 そんなデカい物をオマエが持っているわけないだろって顔で俺のことを見てくるから全員外に出てもらった。

 それなりのスペースを警備兵に空けてもらって俺は蛇を出した。

 殺して直ぐにアイテムボックスに入れた為、蛇の至る所から血が出てきて地面を赤く染めていった。

 余りの大きさに周りにいた人の顔が強張っていた。


「ね、死んでるでしょ?もういいですか?アイテムボックスに入れますよ?」


 このままだと地面が血だらけになりそうなので、早々にアイテムボックスへ入れた。


「……なんであんなデカい物がアイテムボックスに……いや、それより本当だったんだな……まさかあれを君1人で?」

「ええ、眼を潰したのは俺じゃないですけど、倒したのは間違いないです」

「いったいどうやって倒し………なに?…ふむ……わかった」


 俺と話していたのに他の警備兵が何か伝えている。


「詳しい話は後でまた聞かせてくれ。君は仲間の所へ行きなさい。話があるからと呼んでいるそうだ」


 話の途中にやってきた警備兵に連れられてヘイデンさんが治療を受けている部屋に案内された。


 ベッドの上にヘイデンさんが寝かされていて、エルビラが手を握っている。

 その顔は泣き続けているために眼が腫れていた。


 近くにいた医療班の人が容態を教えてくれた。

 俺の懸念通り、解毒ができないらしい。原因は恐らく変異種になった際に毒も変異したため、通常の解毒剤が効かなくなったのだろうと思われる。

 なのでこれ以上は手の施しようがなく、明日まで持つかどうかも怪しいらしい。


 俺がもっと正確に射撃できるだけの腕があれば、あの時にヘイデンさんが怪我をする事はなかったんだ。

 銃の威力に頼り切って練習をしなかったせいだ……。

 誰かに教わることもできないが、それでも数をこなさなければ上達しないのに……。


 医療班と話していた俺に気付いたエルビラが側に来るよう手招きをしている。


「お父さん、ドルテナ君が来ましたよ」


 エルビラに声を掛けられたヘイデンさんが何か喋ろうとしているが、声が小さくて聞こえにくい。

 耳を口へ近づけて何とか聞こえた。


「……ドルテナさん……お願いが……あります…………娘を妻として……側に置いてやってくれませんか……」


 ……へ?ナンダッテ?


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