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52話

「君は一体何者なんだね。見たことのない武器を使う上にとてつもなくデカい音を出すし……魔物もそのままアイテムボックスに入れてしまうし……」

「これは……魔道具という物です。アイテムボックスは……秘密ってことで」

「魔道具?……魔法の一種なのか?」

「そうですね。そう思ってもらって構いません」


 神殿へ戻っている間に神殿の護衛が色々と質問してきた。何かまだ聞きたそうだったがFN SCAR-Hをアイテムボックスに入れて足を速める。


 階段の下で他の護衛と一緒にエルビラさんが立っていた。


「なんかバタバタしましたが、とりあえず終わりましたので帰りましょうか」

「もう大丈夫なんですか?まだいたりとか……」

「いえ、この辺りにはもういないですよ。大丈夫です」


 周辺を危険察知で見る限り問題はなさそうだ。


 エルビラさんの手を握り馬留の方へ向かおうとしていると、護衛の冒険者が声を掛けてきた。


「君達。すまないがもう少し待っててくれないか。いま神殿へ事情を説明しに向かわしている。そいつが帰ってくるまでここにいてもらえないか?」


 エルビラさんを見ると首を縦に振るので護衛に構わないと使えた。


 暫くすると神殿へ行っていた護衛が帰ってきて何やら話し合いをしている。

 なぜかこちらをチラチラと見ているのが気にはなるが……。

 話し合いが終わった護衛がこちらへやってくる。


「待たせてすまない。私は神殿の護衛をしているタシトだ」

「冒険者見習いのドルテナです」


 挨拶の握手をして話が先へ進む。


「見習いであの魔物を倒せるとは大した者だな」

「ありがとうございます」

「それでな、急な話なんたがこの後神殿の者達がミキヒへ帰るんだが、それの護衛を頼めないだろうか?」

「え?護衛……ですか?あの、私は見習いなんですが……」


 護衛の依頼はランクDからしか受けられないはずだ。ましてや見習いが受けるなんて聞いたことないぞ。


「ああ、それは分かっている。ここの神官長から話があってな──」


 いつもならまだ神殿へで仕事をしている時間なんだが、さっきの魔物騒ぎを聞いた神官長が、巫女さん達や一般人の身の安全を考えて全員でミキヒへ帰ることにしたそうだ。

 所謂神殿の早仕舞いだな。


 それだといつもの護衛だけでは手が足らなくなる。だから魔物を倒した俺にも護衛を依頼しようということになったらしい。


「見習いであってもしっかりと報酬は出るし悪い話しではあるまい?」


 まぁ、そうなのたが……。護衛経験もだがエルビラさんが一緒なのだ。彼女をほったらかしにはできない。

 

「ありがたいお話ですが、私には連れも居ります。彼女は1人で馬に乗れないので私が一緒に乗らないといけません。それに護衛なんてしたことありませんから……」

「それなら、彼女は神殿の馬車に乗ってもらうというのはどうだ?そうしたら問題ないだろう?」


 俺の横で話を聞いていたエルビラさんはどう思うんだろう。

 エルビラさんの方を見ると頷いた。


「皆様がお困りなのでしょ?私は馬車に乗っても構いません」

「そうかそうか!いやぁ、ありがとう、助かるよ。ドルテナくん、いい彼女だな!」


 そう言って俺の肩をバシッと叩いて仲間の元へ帰って行った。

 なにやら誤解している部分があるが、それを伝える隙もなかったな。


「よかったんですか?神殿の人達なんで変や奴はいないと思いますけど……」

「心配して下さるんですか?大丈夫ですよ。神に仕えている人達ですから安心です」


 俺もそう思ってるけど、前世ではそういう神に仕えている奴が児童買春をやってて問題になってるニュースを見てたからなぁ。


 そんな事を思っていると階段の上から神殿御一行様が降りてきた。


 いつの間にか階段の下には装飾が施された馬車が待機していて、その前でタシトさんと話をしている。

 するとタシトさんがこちらに来るように手招きをしてきた。

 俺はエルビラさんを連れて近づいた。


「ドルテナくん、こちらがハーシェル神殿の神官長を努めておられるセレドニオ様だ」

「初めまして、冒険者見習いのドルテナです」

「おぉ、あなたが魔物を倒してくれた冒険者殿ですか。この度は皆の命を救って下さったとのこと。ハーシェル神殿を預かる者として心からお礼申し上げる」


 そう言って深々と頭を下げてきた。


「そんな、冒険者として当たり前のことをしたまでです」

「左様ですか。見習いであるのに殊勝な心をお持ちのようだ。ドルテナ殿と仰いましたかな。貴方様の今後に幸多からんことを祈っております」


 そう言って神官長さんは馬車へと乗っていった。


「では彼女は後ろの巫女達が乗る馬車へ行ってくれるか。それと、ドルテナ君は馬に乗ってこの馬車の山側を併走してくれ」


 俺とエルビラさんはタシトさんの指示に従った。


 エルビラさんが馬車に乗り込み、他の人も移動後できるようになったことを確認したタシトさんが出発を告げ、俺達はミキヒへの帰路についた。


 徒歩でミキヒまで帰る人達もいたので移動速度が遅くなり、ミキヒに着いた頃には日が沈みかけていた。


 案の定、警備兵に詳しい事情を聞かれることとなった。


 エルビラさんは神殿の馬車の通り道に宿があったので、一足先に宿へ送ってもらった。


 俺は警備兵の詰め所にある部屋の中で、タシトさんも同席してもらい魔物の件を報告している。


「では、その狼達は猪の魔物から逃げてきたというのだな」

「ええ、恐らくは。タシトさん達と向かい合っているにもかかわらず後ろを気にしていましたから」

「確かに、俺達より後ろの方を気にしてましたね。そのお陰で楽に倒せたのもありますよ」


 俺の話をタシトさんが肯定してくれる。


「そうか、分かった。……で、その魔物はどうしたのだ?」

「それならドルテナ君が持ってますが」

「なに?聞いた話だとかなりのデカ物のはずだが?」

「ええ、でもドルテナ君がアイテムボックスに入れております」


 警備兵は信じられないという顔をしている。


「すまんが、その魔物を見せてもらうことはできるか?」


 警備兵としたら本当に魔物かどうか等を諸々確認したいのだろう。


「構いませんが、どこに出したらいいですか?」

「表で構わんだろう。どうせ門は閉めてあるんだから誰の邪魔にもならんはずだ」


 そう言うと部屋を出て表に向かって歩き出した。

 俺とタシトさんもそれに続いて外へ出た。


「よし、ここに出してくれ」


 門の前を示していたので、そこへ2匹の魔物をアイテムボックスから取り出した。


「これまたデカいな……。これを君1人で仕留めたのか?」


 俺が頷くと周りの警備兵達も驚いていた。


「うむ、ありがとう。仕舞ってくれ」


 俺が魔物をアイテムボックスに入れ終わると、なにやら書類を持ってきた。


「これを冒険者ギルドへ提出してくれ。魔物の追加の討伐報酬が受け取れる」

「追加ですか?」

「ああ。本来なら軍が処理しているはずの魔物であったこと。神殿への被害を未然に防いだことの二点について報酬が追加としてもらえる」


 それはラッキーだな。ありがたく頂戴しておこう。


「ギルドに行くならこれも一緒に出すといい」


 今度はタシトさんが書類を渡してきた。


「これは?」

「神殿からミキヒまでの護衛分だ。依頼という事になっているからな。ギルド経由での報酬になるんだ」


 俺はそれぞれから書類を受け取り、お礼を言った後ギルドに向かった。


 ギルドはやはりというか、やっぱりというか、大混雑だった。


「時間帯が悪いよなぁ。一番混む時間帯だからしょうがないか」


 独り言を言いながら報酬受け取りのカウンターの列に並んだ。


 30分近く並んでやっと俺の番になった。


「お待たせしました」


 カウンター内の女性スタッフが笑顔で出迎えてくれる。

 警備兵とタシトさんにもらった書類をギルドカードと共に渡す。


「はい、お預かりします。えっと……ふんふん……」


 ギルドカードや書類の中身を確認していた女性スタッフがそのまま奥へ向かい、上司と思われる人と話をしている。


 ……できたら早くして欲しいんだが。お腹も空いたし、何より後ろに並んでいる冒険者の苛立ちが怖い。


 10分くらいすると女性スタッフが戻ってきた。


「すみません、お待たせしました。書類の確認をさせていただいておりました。では討伐証明部位をもらえますか?」


 ……あ!しまった……。


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