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34話

 ククル亭でお昼御飯を食べ終えた俺達は、木工細工の店にやって来た。


 俺の父がやっていた家具がメインの工房とは違って、生活用品や工芸品など様々な物があった。

 エルビラさんは可愛らしいコップが気になるようだ。そんな中、俺は気になる物があったので手に取ってみる。


「これ、なんでこんなに撓ってるんだ?」


 俺が見つけたのは木の撓りを利用した髪留めだ。その撓りが凄い。よく折れないなと思うくらい撓っている。


「お客様、こちらはエスポタチという木で作っております。エスポタチは非常によく撓りますので、その特性を生かして髪留めを作ってみました。よろしければ彼女さんにいかがですか?」


 20歳前後の若い女性スタッフが説明しくれた。エルビラさんが今度は彼女になった。まぁ妥当なところだな。

 年配の人から見たら俺達の年齢は分かり難かったのか、それとも奥さんに仕立てるのが流行っていたのか……。


 この髪留めは細工もいいと思う。草木をあしらった物が彫られていて落ち着いた感じだ。

 色は素材そのものの色と、何かで少し黒っぽい落ち着いた色が付けてある物がある。


「どちらのお色も表面につやの出る加工を施しております。強度もありますので髪の毛をしっかりと止めることが出来ますよ」


 物も良さそうだから母とペリシアのお土産にちょうどよさそうだ。

 あとエルビラさんにも1つもらおう。エルビラさんの髪の毛はブラウン系だから、明るい木の色が残っている方がいいだろう。

 母とペリシアほ俺と同じ薄いオレンジ系だから黒っぽい方にしてみよう。


 後は彫ってあるデザインだな。全て手彫りだから一つ一つ違う。母には落ち着いたデザインの物を。ペリシアとエルビラさんには可愛らしものを選んだ。


「この3つを下さい」

「ありがとうございます。3個で9,000バルになります」


 9,000バルを払って髪留めを受け取る。黒っぽい方は母とペリシアのお土産なのでアイテムボックスにいれて、明るい色の方を持ってエルビラさんの方に行く。


「いいコップが見つかりましたか?」

「あ、ドルテナさん。どれも丁寧に彫ってあっていい物ばかりでしたよ」

「私もいい物見つけたんです。これ、よかったら使ってもらえますか?」


 さっき買った髪留めをエルビラさんに見せた。


「これは、髪留めですか?私に?」


(他に誰もいないよ?)


「はい、エスポタチっていう木で作られているそうです。色合いとかもエルビラさんに似合うかなと思って。あ、色が好みじゃないですか?少し黒っぽい方もありましたが……」


(あぁ~、木の色そのままだからダメだったかな?)


 エルビラさんは髪留めをじぃ~と見つめたままだ。


「いえいえ、こんなにいい物をもらっても、私何も返せないです……」

「お返しなんていりませんよ。私が勝手にエルビラさんに付けて欲しくて買っただけですから。使ってくれたらそれで嬉しいです。それに……」

「それに?」

「母とペリシアのお土産で同じ物買ってるんでエルビラさんだけじゃないんです。すみません」

「そ、そうなんですね。ありがとうございます。使わせていただきます」


 母とペリシアにも買ってるから、エルビラさんが「私はついで?」と思ってなければいいが……。

 などと心配していると、さっきの女性スタッフさんがエルビラさんに近づいてきた。


「お客様、もしよろしければお付けいたしましょうか?」

「あ、お願いできますか?」


 エルビラさんから髪留めを受け取った女性スタッフさんは、アップにしてある髪の毛に髪留めを付けた。


「ドルテナさん、ど、どうですか?」

「はい、エルビラさんの髪の毛の色とよく似合っていると私は思いますよ」


 凄くいい笑顔で微笑んでいるエルビラさんと木工細工のお店を後にした。


 村内を歩いていると、ドライフルーツを売っているお店を見つけた。ここはカフェも併設されているようだ。ちょっと休憩していこう。


「エルビラさん。ここで少し休憩して行きませんか?」

「はい、私も少し喉が渇いていたので是非」


 店内に入り、窓際の席に座る。直ぐに女店主が注文を聞きに来た。


「いらっしゃいませ。お飲み物はこちらからお選び下さい。ドライフルーツもよければ御一緒にいかがですか?」


 飲み物とドライフルーツのメニューを見せてくれた。


「飲み物はこのグラーグの紅茶を。ドライフルーツはおすすめの物を適当にお願いします。エルビラさんはどうしますか?」

「私も同じ物をお願いします」

「はい、畏まりました。暫くお待ち下さい」


 注文を取った女店主は奥へ戻っていった。グラーグというのはこの国の紅茶の中では一般的な物で、国内で広く栽培されている。


「エルビラさん?午前中から結構歩いてますけど大丈夫ですか?疲れてないですか?」

「少しは疲れましたけどまだ大丈夫ですよ。でも明日は朝が早いので夕方までには宿に帰りませんとね」

「そうですね。ここで休憩したら少し村内を見ながらククル亭に帰りましょう」


 朝早くから燻製屋に行き、シロメツを見ておじいさんに会い、シロメツの油を買いに行った。

 そして宿に戻るとヘイデンさんはまだ体調が戻らず、2人でお昼御飯を食べ、木工細工を見に行き今に至る。


(うん、よく歩いてると思うよ)


「お待たせいたしました。グラーグの紅茶とフラムと葡萄のドライフルーツです」


 このフラムというフルーツは、見た目が前世のドラゴンフルーツに似ている。皮を剥くと甘酸っぱい実が出てくる。


 2人で今日色々と見た話をしながら、ゆったりとした午後の一時を過ごした。


「そろそろククル亭に戻りましょうか。皆の様子も気になりますしね」

「そうですね。父もそろそろ起きている頃でしょうし」


 帰って皆を起こして早めの晩御飯となりそうだ。勿論お酒なしで。


 ククル亭に着いた俺達は、エルビラさんがヘイデンさんを、俺が冒険者さん達を起こしに行く。


「ではエルビラさん、後ほど食堂で」

「はい、分かりました」


 さてと、先ずは野郎共からだな。アダンさんとセベロさんの部屋に行こう。


ー コンコン ー


「アダンさん!セベロさん!大丈夫ですか?そろそろ起きて、少し早いですが晩御飯にしましょう…………ん?」


 いくら待っても返事がない。室内からも物音ひとつしない。


「アダンさん?セベロさん?ーコンコンーおられますか?開けますよ?失礼します」


ー ガチャ ー


 部屋の戸を開けて中に入ると、そこには誰もいなかった。


「あれ?もう起きてたのか……。何処か出掛けているのかもな。となると……」


 部屋を出た俺は隣のノーラさんとパメラさんの部屋をノックしてみる。


ー コンコン ー


「ノーラさん?パメラさん?……こっちもか」


 予想通り中から返事がない、ノーラさんとパメラさんも部屋にいないようだ。しょうがないので1人で食堂に行く。


「あ、ドルテナさん」


 食堂に向かおうとしていたところでエルビラさんが部屋から出てきた。


「あれ?お父様は?」

「それが部屋に誰もいなくて、何処かに出掛けているようなんです」

「そうですか。冒険者の方も部屋にいなかったんです。まぁ、部屋にいないのなら体調も戻ったということなのでしょう」


 明日は朝が早いんだから、もう少ししたら帰ってくるだろう。それまでどうするか……。


「皆が帰ってくるまでどうしましょうかね。馬達の様子でも見に行きます?」

「はい、明日からまた頑張ってもらわなければいけませんしね」


 皆が帰ってくるまでの時間を潰すために、厩舎へ行って馬達を構ってあげることにした。


 受け付けにいた女将さんに厩舎へ行くことを告げて、もしヘイデンさんか帰ってきたら伝えて欲しいとお願いしておいた。

 厩舎では少年が馬達に飼い葉を上げているところだった。


「あ、お客様。どうかなさいましたか?」

「他の人達が何処かに出掛けているようで、帰ってくるまでする事が無く暇をもてあましてましてね。それで馬達を構ってあげようかなって事に」

「そうでしたか。この子達はとてもいい子ですよ。食欲もありますし毛艶もいいです。明日からの旅も頑張ってくれると思いますよ」


 馬達の体調はよさそうだな。俺は馬達をブラッシングしてあげる。エルビラさんは馬達の顔を撫でている。馬も嬉しそうだ。


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