21話
「さてと……ふむ。今日はこのまま狩に行く予定だったが……変更するかな」
当初の予定を変更し、街に向かって歩き出す。
所々で店を冷やかしながら街中をゆっくりと歩く。途中、防具店に気にる物があったので入ってみる。
「いらっしゃいませ。何かお探しですか?」
20歳くらいの男性が声をかけてきた。俺は目的の物を告げると、こちらですと案内してくれた。
お?!あったあった。
俺の目の前にあるのは外套だ。
戦闘服の上から着られる物があれば欲しいと前から思っていたのだ。
何着かあるが、希望の物があるかどうか……。店員に希望を伝えて、ここにあるかどうか聞いてみる。
「大きめのフードが付いていて、着たままで手が出せて自由に動かせること。あと、足元まで長さが欲しいです」
「そうしますと……今ある中ではこの3着ですね。長さは後ほど調整できますので、フードと手が出せるというのはこれだけ出すね。お気に召さなければオーダーも承りますが?」
オーダーもいいが、今すぐ着られる物の方が助かる。
3着の内、1つが薄いグリーンだったのでこれにしよう。
「こちらですね。ありがとうございます。238,000バルの商品になります。これには防水加工がされております。もし効果がなくなりましたら再加工も可能ですのでお申し付け下さい。それでは裾を合わせますね」
高っけぇなぁ~。前世みたいに機械で作るわけじゃないからな。全て手作業だからしょうがない。
でも防水加工があるのはいいな。雨の日でも着られるのはいいね。裾を合わせてもらう間、店内の商品を見て回る。
「お客様、お待たせしました。裾を合わせましたので着てみてもらえますか?」
手直しされた外套を受け取り着てみる。うん、なかなかいい感じだ。
この外套は頭から被るスタイルだが首元とフードは裏から紐で調節が出来るようになっている。
更に、サイドから手が出せるようにスリットが入っている。
このスリット部分は、普段は折り重なる様になっているので、内側を見られる心配もない。裾の長さも丁度いい。
「うん、いい感じですね。裾の長さも丁度いいようです」
「ありがとうございます。こちらは着て行かれますか?」
「はい、着て行くのでこのまま頂きます」
238,000バルを支払い店を出る。負けてはくれなかった……。
店を出てその先の路地に入り、戦闘服に着替える。と、外套もアイテムボックスに入ってしまった。
装備品に予め設定しておくのを忘れていた。
戦闘服でもレザーアーマーでも外套を着た状態になるよう設定しておく。
今回は仕方がないので、アイテムボックスから外套を取り出してから着た。
戦闘服のお陰で足取りも軽くなる。
「よし。これで戦闘服を着たままで街を歩いても大丈夫だな。さてと、どうしようかな……墓地でいいか」
目的地を墓地に定め、ゆっくりと歩き始める。途中の花屋で父の墓前に供える花を買っていく。
墓地は教会の裏手にある。まずは教会で神を祈りを捧げ、その後で裏の墓地に向かう。
父の墓前にある古い花を除けて、新しい花を添える。
この古い花は母が待ってきた物だろう。3日に1度はここに来て、花を添えているはずだ。
墓前に手を合わせて立ち上がる。
右か左に行くと出口だが、そちらには向かわずに正面の建物に向かって歩き出す。
この建物は古い花などを焼くための焼却炉だ。ここに捨てておくと教会の墓守が処分してくれる。
左手に古い花を持ち、建物の10m程手前で止まる。
「俺に何の用だ!……出てこいよ!そこの陰にいるのは分かっているんだ!」
俺は、建物の陰に隠れている人物に向かって叫ぶ。すると1人の男が物陰から姿を現した。
今日の予定を急遽変更したのは、今朝、ギルドに行ってからずっと俺をつけ回してるこいつがいたからだ。
最初は物取りかとも思ったが、俺が大金を受け取る後ならいざ知らず、それよりも前から俺に狙いを定めているということは物取りではない、と判断した。
襲われるにしろ撃退すらにしろ、人がいない場所の方が俺にとって都合がいいので墓地まで来たのだ。
「いやぁ~申し訳ない。こちらから声をかけようと思ったのですが、どなたかの墓前の前では気が引けましてね~。初めまして。私、警備兵のマギルと申します」
と何とも軽い感じの男だが着ている物は確かに警備兵の鎧だ。腰には剣を下げて、手には槍を持っている。
「昨日の件でお聞きしたいことがありましてね。申し訳ないんですが、ちょっとご同行願えませんかねぇ」
「あぁ、そうなんてすね。でもそのお誘いはお断りさせてもらいますよ」
「それは困りましたね。警備兵の要請には従って頂かないと、ここで私に殺されても文句は言えませんよ!」
と言って、男は俺に向かって槍を構える。
「警備兵の正式な要請には従うさ。正式ならな。だがあんたのは正式じゃないだろ。分かってんだよ、俺がギルドから出てからずっと後を付けてただろ。それにあんた、昨日死体を運ぶ馬車に乗ってたよな?だから初めてじゃないよな」
昨日、ギルドの解体場へ連続レイプ犯の死体を運ぶためにやって来た警備兵の1人がこいつだった。
なぜ覚えていたのかというと、その時からこの男は赤いシルエットに包まれていたからだ。
最初はなぜ敵意を向けられているのか分からなかった。
ギルドスタッフの熱狂的なファンか?なんて思っていたが、それなら今朝からずっと後を付けられて、更に槍を向けられるとかあり得ない。
まして警備兵という立場を利用するとか、バレたら首は確実。物理的な意味で。
「ほぉ。昨日のあの一瞬で顔を覚えられたのですか?あなたの方は見ないようにしていたつもりでしたが……。見習いとはいえ、なかなか侮れませんね。あの2人が簡単に殺された事も私にとっては大変な驚きでしたよ。あ、そうそう、あの2人はランクFとなっていますが、私が訓練をして実力的にはランクEの上位レベルでしたからね。さて、あなたが受け取った報奨金は私がいただきますよ」
なるほど、あなたは共犯者でしたか。3人目の共犯者がいるとは聞いていなかったな。パーナーショップさんの職務怠慢か?
まぁしかしよく喋る。ここで俺を殺すつもりだからベラベラと教えてくれるのだろう。
俺は古い花をアイテムボックスに入れ、外套の中でサブマシンガン【FN P90】をサプレッサー付きで取り出した。
相手にバレないようにコッキングレバーを引き、いつでも撃てる体制を取る。
相手は共犯者とはいえ警備兵になれる実力がある奴だ。あのランクFの2人との実力差はかなりあるはずだ。この距離くらい簡単に詰めてくるだろう。
「そうかい。お前が奪えるとは思えんがな。彼奴らは所詮、か弱い女をいたぶることしか出来ない生きる価値のない屑だったって事さ。あぁ、すまない、お前もその仲間だったな。そうか、ならオマエも価値のない屑だな」
俺はわざとらしい演技で挑発した。
「口だけは一人前だな。あの2人と俺を一緒にするな!小僧が!」
そう言い終わるのと同時に共犯の男は俺に向かって走り出した。俺もサブマシンガンを男に向けた。
が、その時
「2人とも動くな!」
引き金に掛けた指に力を入れる寸前、教会の横の方からの聞こえた声に2人とも動きを止めた。
声の方に少し視線をずらすと、パーナーショップさんが5名の部下と共にこちらへ走ってきていた。
その姿を見た共犯者の男は、槍を捨て踵を返して走り去ろうとした。
慌ててパーナーショップさんが叫ぶ。
「待て!」
って、そんなことを言って待つ奴なんかいねぇよ!
パーナーショップさんの声を無視して逃げようとしている男へ俺はFN P90を向ける。
狙いは足だ。
本当は体にぶち当ててやりたいが、あいつの口から、仲間がまだいるかどうか聞き出さなきゃならない。
そう思いながら引き金を引いた。
ー タンッ タタタタタタ ー
逃げようとしている男の足を狙って放たれた弾は、数発目で男の足を確実に捉えた。
足を打ち抜かれた男は、走っていた勢いのまま前に倒れ込む。
「ぐぁっ!……痛ぇ!……足が!足が!……」
倒れ込んだ共犯の男の元へパーナーショップさんが連れて来た警備兵4名が行き、身柄を確保する。
そして俺の元には、パーナーショップさんと残りの警備兵が近寄ってきた。
FN P90をアイテムボックスに入れて、一応、両手を挙げた。敵意がないことを示しておく。
「ドルテナ君、詳しい話を聞きたいから、近くの詰め所まで一緒に来てもらえるかな?」
俺は頷き、パーナーショップさんの後に付いていく。
共犯者の男は警備兵だったが、警備兵全員が共犯者ってことはないだろう。
暫く歩くと詰め所に着いた。そして詰め所の一室に案内された。




