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19話

「ありがとうございます。では場所を移してもいいですか?男達の死体を見てもらった方が理解してもらいやすいので」

「では裏の解体場はどうですか?人払いも可能ですし」


 ということで、ギルド裏にある解体場へ移動する。そして人払いがされたことを確認して死体を出した。


「この2人です。連続レイプ犯ですか?」

「あぁ……。この2人は人相も背格好も手配中の犯人とそっくりだな。身分が分かる物はないか?」

「どうでしょうか。殺した後直ぐにアイテムボックスにしまいましたけど足元には何も落ちていませんでしたよ?」


 人が死ん場合、アイテムボックス内にある物は全て外に出される。でも男達の足元には何も落ちなかった。


「そうか、なら何処かにあるかもな。おい!こいつらの持ち物を探せ」


 連れてきていた部下の警備兵が、男達の身包みを剥がし出した。すると持っていた小袋の中にギルドカードが入っていた。チラッと見えたランクはF。冒険者の最低ランクだ。

 まぁ、冒険者としてやっていけないから犯罪に走るんだろうな。


「ところでドルテナ君。どうしてこいつらを倒した後、警備兵を呼ばなかったのか聞きたいのだが。」

「分かりました。この犯人達を見てもらうと分かると思いますが、剣で倒したわけではありません。特殊な武器を使って倒しました。その武器のことを知られたくなかったから警備兵には知らせませんでした。それに、冒険者見習いの私が倒したとは信じてもらえないとも思いましたので」


 少なくとも剣の技術がほぼない子供が、大人2人を相手に無傷で完勝する可能性はないだろう。


「なるほど。その武器を見せてもらうことは可能か?」

「ここで見ていただくのであれば大丈夫ですが、どこかに持って行くようなことはやめて下さい」


 武器には所有者登録がされているから、俺以外には使えない。それに、長時間俺の手から離れると、自動的にアイテムボックスに帰ってくる仕組みになっている。

 パーナーショップさんが頷いたのを確認して、ハンドガンを取り出して渡した。


「ほぉ、こんなに小さい物でどうやって倒したのだ?殴るにしても軽すぎるし、投げるにしては大きすぎる。奴らについている傷は付けられそうにないぞ」

「これは魔道具といって、魔力を使って武器として使用します。この小さな穴から魔力の塊を高速で飛ばして相手にぶつけます」


 母やペリシアに説明した内容をパーナーショップさんにも話した。“銃”なんて言ってもわからないからな。

 パーナーショップさんに説明をしていると、部下の警備兵がパーナーショップさんに何やら伝えに来た。


「……………」

「……うむ、……あぁ、……そうか、わかった、ご苦労。では運んでくれ」


 部下との話が終わったパーナーショップさんは俺にハンドガンを返してくれた。


「見せてくれてありがとう。それで、あの2人は間違いないく犯人だ。ドルテナ君、君のお陰で連続レイプ犯を見つけることができたありがとう。殺した方法についても教えてくれて感謝する。口外はしないので安心して欲しい。報酬の受け取りだが──」

「犯人確定なんですか?背格好だけで?」

「あぁ、犯人のある特徴が一致したんだ。これは公表していなかったんだが、男の腹部に大きなアザがあったのを被害者が見ていたんだ。そのアザがこの男にあった。もう一人の男は背中の大きな傷2カ所が証言と同じだ」


 なるほど、秘密の暴露ってやつか。


「それで、報酬の受け取り方法だが、警備兵からの報酬はギルド経由で構わないか?ギルドからも報酬があるだろうからな。一度で済む方がいいだろ?」

「はい、私は構いません」

「グストル部長、今日の夕方には持ってこさせるので頼みます」


 と言うことで、明日ギルドで受け取ることになった。

 犯人の装備や所持品は倒した俺の物になるそうだが、特にいらないので、お金以外はギルドに買い取ってもらうことにした。


「それからな。もし今後喧嘩などに巻き込まれてやむを得ず相手を殺した場合でも一応警備兵を呼ぶようにな。後でいらぬ嫌疑をかけられても困るだろ?」

「そうですね、わかりました。今度はそうします」


 パーナーショップさんから注意を受けていると馬車が解体場にやって来た。


 ん?なんだ?あの馬車……


 俺が馬車の方を訝しげに見ていると、パーナーショップさんが俺の隣に来た。


「どうした?あぁ、あれは彼奴らの死体を運ぶための馬車だ。一度本部に持ち帰り、その後焼却することになる」

「あの馬車の人も警備兵の方なんですか?」

「いや、全員ではない。今降りてきた2名は私の部下だ。御者は斎場の者達だ。本部に持ち帰った後は斎場で焼却するから斎場の馬車に来てもらっている」


 ふぅ~ん、そうなんだ。御者が警備兵に見えないから誰かと思った。


 死体を乗せた馬車は直ぐに出て行った。

 死体も運び出され、パーナーショップさんも帰ったので、俺も部長さんに挨拶をしてギルドを出る。この後どうしようかと思ったのだが、薬剤店の娘には会いに行った方がいいような気がする。

 殺し方を他の人に喋らないという約束を守ってくれたようだし。そう思い、薬剤店に向かうことにした。


「こんにちは~」

「いらっしゃいませ。あっ、お客様!あの、えっと、し、暫くお待ち下さい」


 薬師の娘さんが挙動不審になってしまった。奥にいる薬師の父親を呼びに行った様だ。


「お客様、ご無沙汰しております。何時ぞやは大変ありがとうございました。実は、娘が襲われた件で、警備兵の方から話を聞かせて欲しいと言われまして……」

「あ、はい。先ほどギルドで話をしましたよ。かなり卑劣な奴らだったようです」


 娘さんがあの時のことを思い出したのだろう、青い顔をしている。


「では、やはり」

「はい、奴等が連続レイプ犯で間違いないと警備兵の人が言ってました」


 俺の言葉を聞いた娘さんの顔が更に青くなった。そりゃそうだよね。あのまま俺が通りがからなかったらあの男達の餌食になってたんだ。本当に、文字通りの危機一髪だったわけだな。


「娘もお客様に助けていただけていなかったらと思うと……本当にありがとうございました。あの時はお礼の品を受け取って頂けなかったのですが、ぜひ今回はお受け取り下さい」


 と言って液体の入った小さな陶器を3つ渡してきた。


「これは?」

「当店で作った治療薬です。クラス4となっております。きっとお仕事のお役にたてるかと」


 クラス4といったら、即死しない程度に切られた傷や裂傷、骨折などが直すことが可能だ。後、自然治癒力が強くなるので体力さえあれば大体治るというレベルだ。

 これ、かなり高価だぞ。


「こんなに高い物は貰えませんよ!それに、警備兵とギルド双方から報酬を貰えることになっていますから、こちらから頂くわけにはいきませんよ」

「いえいえ、それはそれです。もしかすると娘は命を落としていた可能性もありました。今こうして娘がここにいられるのもお客様のお蔭。本来であればもっとよい品をお渡ししたいのですが、当方がご用意できるお礼としてはこの程度。どうかお受け取り下さいませ」


 2人で頭下げられたら断れない。でもいくらお礼とはいえクラス4の治療薬はもらいすぎな気がするから、手持ちのオバ草を渡しておく。

 それでもまだ多い気がするな。

 今回はこのまま貰うけど、いつか何か購入してもう少しは返そう。


 高価な品をお礼として貰い、薬剤店を後にした。


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