12話
狩りを諦めた俺は、南門から街に入り冒険者ギルドを目指す。
ギルドに入ると、俺と同じように早めに依頼を終えた冒険者達で既にバーが忙しそうだ。
この時間から飲めるのは羨ましいな。
まだ13歳の俺の体にはどんな影響があるか分からないから、この世界ではまだ飲んだことがない。
この世界の酒に興味があるが、楽しめるのはまだまだ先になりそうだ。
そういえば、この世界に来る前に飲もうとしたプレミアムなビール。……飲みたかったなぁ。
そんなバーを横目に買い取り専用のカウンターへ向かい、カウンターの向こうで作業をしているスタッフへ声をかける。
「すみませ~ん、買い取りをお願いしたいんですが」
「はい、今行きます」
返事をしてくれたのは女性のスタッフだ。男性スタッフもいたがそちらは作業を続けている。
受け付けなどのカウンター対応するのは基本的に女性のようだ。
「お待たせしました。何をお持ちですか?」
「薬草のオバ草を買い取ってほしいのですが」
俺はギルドカード先に渡し、今日採取したオバ草を少しだけ残して、全てカウンターに出した。ギルドカードには、買い取りのギルドポイントを加算してもらう。
「はい、カードをお預かりしま…すぅ?!……えっと、こちらの量を全て買い取りということでよろしいですか?」
俺は頷いた。何故がギルドのお姉さんが若干引いていたような気がする。
オバ草の量がマズかったのか?いや、ランドセル3個分程度に抑えてあるから問題ないような気がするんだがなぁ。
通常、アイテムボックスには私物などを入れておくため、今回のように最大容量に近い量の買い取りなどはまずないのだが、容量に余裕のあるドルテナは思いもしなかった。
そもそも大量のオバ草を持ち込む冒険者も珍しいのだが、それこそドルテナには知るよしもない。
「それでは査定を、品質確認をさせていただきます。暫くお待ちください」
そう言うとスタスタと奥に戻り他のスタッフに声をかけていた。
「……ねぇ!ちょっと手伝って!!」
うむ?新人のスタッフだったのか。
声をかけられたので2人ほどがやって来た。他の人も手伝うなら変な査定にはならないだろう。
「ボソ(これ全部あの子の?)」
「ボソボソ(そうよ、アイテムボックスから出したのよ)」
「ボソボソ(結構大きなアイテムボックスなのかしら)」
「ボソ……ボソボソ(ねぇ、それよりこのオバ草、全部鮮度がいいわよ)」
「ボソ……ボソボソ(ほんとね、今採ったばかりって言ってもいいくらいよ)」
「ボソボソ……ボソボソ(これだけの量を採るなら時間も掛かるから、普通はこんなに鮮度を保てないわよ)」
「ボソボソ(ほらこれ見て。まだ茎も葉も萎れてないわよ)」
「あの子何者なのよ?!」
あぁ~、やらかしたか?どうやらあれでも量が多すぎたらしいな。鑑定スキルがあるから探す手間がかからないから、あれ位簡単に集まっちゃったんだよねぇ。っていうか、おねぇさん達が小声で喋ってる内容が聞こえちゃってるんですけど……。
とはいえ、鮮度はそんなにはよくないと思っていた。採取した後に射撃の練習をしてたから時間はそれなりに経ってるからだ。
手伝いに来たスタッフも経験が浅いのかな?
「お待たせしました。全て鮮度がよく高品質でしたので、今回は1株200バルで買い取らせていただきます。170株ありましたので34,000バルとなります。ご確認ください」
と言って銀貨34枚をカウンターへ出された俺は銀貨を見て固まった。
薬草にはいろいろとあるが、今回のオバ草は草原で採れるもので、見習い冒険者でも簡単に採取できるレベルの物だ。
だから買い取り価格も安かったはず。1株200バルはいくら何でもあり得ない。
高額の買い取り価格で暫く固まっていると、奥から別のスタッフがやって来た。
「ドルテナさん、初めまして。私、査定部長のグストルと申します。今回の買い取りについてご説明をさせていただきたいと思います。とりあえずこちらのお金はお納め下さい」
そういわれて思考が動き出し、目の前のお金をアイテムボックスにしまう。
はぁぁ、見習い冒険者相手に部長さんですか。いやな展開になりそうなんでこのまま帰りたいけど……それは無理そうだな。
「本日は大変よい品をギルドへ売っていただきありがとうございます。ドルテナさんもご存じとは思いますが……」
と、説明を始めた。
草原で採れる薬草のオバ草は通常1株50バルだそうだ。依頼ボードに出ていたやつは、だいたいそのくらいだったと思う。
そして鮮度を保つため数株採ったら直ぐに売却するのがセオリーらしい。
売却先はギルド以外にも薬師などへ直接売る方法もあるが、見習い冒険者なんかは足下を見られて安く買われることがあるからギルドへ売った方が安心だそうだ。
そして、今回の買取額が高かった理由が一つは鮮度。部長さん曰く、今まで買取りしてきたどの薬草よりも鮮度がよかったそうだ。
オバ草は街周辺では採れない薬草の為、採取して直ぐに持ってきても徒歩で40分かかる。
馬を使えばもっと早いがそれでは採算が合わないし、そもそも見習いで馬をもっている者はいない。
借りることもできるが、1株50バルのために馬をわざわざ借りて使うとかあり得ないし大赤字もいいところだ。
もう一つの理由が品質だ。
俺が採ってきたオバ草は、葉の色艶や形、茎の太さ、根の大きさや形がいいので最高品質だったようだ。
薬草の鮮度や品質が落ちればその薬草を使って作る治療薬の品質が落ち、その結果、治療具合に影響が出る。なので価格に反映されたのだ。
手当たり次第採っていたのに何故が全てが最高品質。ラッキー♪……ってそんな訳はない。
手当たり次第ではあったが為に、根の部分が歪だったり、葉が何かの病気にかかっていたりした奴も結構あった。
中には色も形もきれいな物もあったとは思うが、そういう物の数は少なかったと思う。
査定してくれたお姉さんが出血大サービスをしてくれた訳ではないが、他に心当たりがない。
「……ですので、当ギルドと致しましても大変うれしく思います。採取場所や鮮度を保つ運搬方法などを聞くといった、冒険者としての手の内を探るような事は勿論致しませんので、これからも当ギルドで買い取らせていただきたく思います。よろしくお願いいたします」
今の所、薬師の知り合いもいないのでそのつもりだ。見習い冒険者は足下を見られやすいので、ギルドへ売った方が安心できる。
最後に、カウンターで最初に対応してくれたお姉さんを紹介された。
今後、買い取りの際は彼女が俺の担当になるらしい。俺が見習い冒険者なので、困ったことがあれば買い取り以外でも遠慮なく言って、ほしいと言われた。
「狐族のアビーと申します。ドルテナ様を担当させて頂きます。よろしくお願いいたします」
「見習い冒険者のドルテナです。分からないことだらけですが、よろしくお願いします。あと、僕はまだ見習いです。様付けなんて恥ずかしいのでやめてもらえれば……」
アビーさんは見た目20歳くらいだ。年上の人に様付けされるとムズムズするのでやめてもらった。
前世では取引先の人とかに何故か「先生」って言われていた。
なんで先生だったのか今でも分からないよなぁ。俺は何も教えてないのにね。
俺の様付けの件は「ドルテナさん」で落ち着いた。
そんなアビーさんは、ショートヘアで身長がモデル並みのスレンダーな190㎝級。スラッとした長い手足。お胸は…こちらもスレンダーだ。
しかしアビーさん、腰の位置高いなぁ……。
その高い腰の少し下、つまりキュッと引き締まったおしりの上から、狐特有のふわっふわの尻尾が出ている。凄くさわり心地がよさそう。
オバ草を買い取って貰ったので、それではと挨拶をしてカウンターを去ろうとした時、カウンター越しに、査定部の方々が立ち上がり頭を下げてきた。
周りからの視線が辛いので足早にギルドを後にする。
帰り際、チラッと後ろを見るとアビーさんが手を振っていたので思わず振り替えした。ちょっとだけドキッとしてしまった。
その時、ふわっふわの尻尾が左右に揺れていた。
へぇ、あの尻尾って動かせるのか。一度は触ってみたいな。
ギルドを出た俺は、街中を散策し、小腹を満たすために屋台へ寄る。
オバ草が予想以上の稼ぎになり一気に懐具合が暖かくなったので、これくらいは大丈夫。
香草パンに焼いた鶏肉を挟んだ物があったので、それを一つ買って小腹を満たした。
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通貨単位=バル(B)
1バル= 銅貨1枚
100バル=大銅貨1枚=銅貨100枚
1,000バル= 銀貨1枚
100,000バル=大銀貨1枚=銀貨100枚
1,000,000バル= 金貨1枚
100,000,000バル=大金貨1枚=金貨100枚
1,000,000,000バル= 白金貨1枚
100,000,000,000バル=大白金貨1枚=白金貨100枚




