存在しないべき武器
遅くなりました。
再び戦闘が始まる。魔物は自分を警戒している。今のうちだ。右手に魔力を集める。そのままバーナーをイメージする。火炎放射器のように。目に映る物すべて焼き尽くしてやる。
「燃え尽きろ」
その一言を呟いた瞬間、手から燃え盛る業火が吹き荒れた。正面にいた魔物だけではなく、遠くの魔物や左右の魔物も巻き添えにして、触れた物全てを消し炭に変えた。
数を半分以上減らした魔物の群れは怯えの色を見せ始めていた。何せ一瞬で大半の仲間が焼かれたのだから。逃げ出す者もいたが、陣形から外れた魔物はアルカネに切り捨てられる。
魔物たちが迷っている間にも和人は魔物を切り伏せていく。
「邪魔だ、どけ」
その姿はまるで死神。剣で首を断ち、燃え盛る炎で逃げる魔物を焼く。次々と刈り取られる命を前に、魔物たちは決心をした。和人から遠く離れたアルカネに狙いを定めた。
止まれば死ぬと分かっているため、魔物は止まらない。命を奪う為、一目散にアルカネの所へ向かった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「・・・ッッ!」
アルカネは息を飲んだ。急に残った魔物全てが自分の方向へ向かってくる。ざっと20はいるだろう。流石にこの数を捌く余力は残っていない。
半ば諦めかけ、剣を構えたとき、声が聞こえた。
「届けええええええええええ!」
同時に、規則的な音が鳴り響いた。
タタタタタタタタタッ
タタタタタタタタタッ
音の正体を探す暇もない。気がつくと魔物全て
が地にひれ伏していた。皆全身に沢山の穴をあけていた。
カズトの方をみると、何かを握っていた。黒くて長い何かを。アルカネには、それが何かは理解できなかったが、あの武器が自分を救ったということだけは分かった。
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魔物がアルカネに向かっていったとき、和人は焦っていた。遅れて走りだすが、とても間に合いそうにない。あのまま魔物たちが目的を果たせば、向かった所には見るも無惨な死体が一つ転がっているだろう。
どうする、火炎放射をすればアルカネも巻き込んでしまう。かといって今から援護にいっても間に合わない。どうすればいい?俺はまた目の前で失うのかよ。守るべき者を。また死なせるのかよ!
この世界に来る前、永遠を守ることはできなかった。いまはそれが出来る力を持っているのに。届けよ、届けよ!
「届けええええええええええ!」
その瞬間、時が止まった。
[アビリティ『魔力創造』発動します。]
そんなテキストが目に映る。手から魔力が溢れ、ゆっくりと一つの形になる。それはかつていた世界でよくゲームで目にしたものだった。
vz61スコーピオン、軽機関銃だ。
32ACP弾を用いたこの銃は、分速750~850の弾丸をばらまく銃だ。精度もそこまで悪くない。
アビリティによって作られたこの銃は、不思議なほど手によく馴染んだ。魔物に銃口を向け、引き金を引いた。
タタタタタタタタタッ
タタタタタタタタタッ
乾いた音とともに弾が放たれた。弾丸は外れる事なく魔物たちに吸い込まれていった。無数の穴を空け、魔物は崩れ落ちる。
弾切れが起きる。しかし2~3秒するとまた弾が放たれた。弾も魔力で補充できるらしい。
数回撃つともう立っている魔物はいなかった。
この瞬間、和人は一つの死を乗り越えたのだ。
とりあえず戦闘終了です。しばらくまったりさせます。
ご意見ご感想、アドバイス等ございましたら気軽にお寄せください。待ってます。次は1~3日後を予定してます。