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迎撃

お待たせしました。小説を書く時間が取れなくなってきているので、字数を減らして更新させていただきます。更新頻度もやや不定期になると思われますが、頑張っていく所存です。

テストも終わったので、点数次第ですがかなりの時間を確保できるはずです! ……多分。

集めた魔力がイメージを現実にする。

数秒で実体化したその銃はドラグノフ狙撃銃、SVDとも呼ばれる1960年代にソビエト連邦が開発したセミオートの狙撃銃だ。

アサルトライフルや機関銃などはたくさん知っているが、狙撃銃はこれしか知らない。僕の知識の幅の狭さを思い知らされた。


平坦な地面の続く平野の2キロ先に狼の魔物がいるというノノさんの言に従って、地面に伏せてスコープを覗き込む。僕たちのいる場所は平野の高い所に位置し、魔物が向かってくる方向は緩やかな下り坂になっている。


有効射程距離約600mのこの銃では、動く影は捉えることが出来てもその体に着弾させることはまだ出来ない。ゲームですらまともに使ってこなかったものを現実で扱えるかと聞かれれば頷くことはできなかった。


「見つけました。あと何メートルですか?」

「今は1500メートル程だ。狙えるか?」

「撃ってもこの距離じゃ当たらないです。まともに使ってこなかったので、射程圏内でも当たるかどうかってレベルです」

「構わない、撃ってくれ。必要な情報があったら私に言ってくれ。可能な限り伝える」


光学標準機PSO-1の中では、魔物らしき姿が徐々に近づいてくるのが確認できる。マークスマンライフルとはいえ、ある程度の長距離狙撃だって出来る銃だ。それに悠長に狙いを定めていては先に接近されてしまう。弾着地点を予測し、狼の少し先へ向けて僕は引き金を引いた。

強い反動と共に7.62×54mmR弾が発射される。当たらないと思っていた弾丸は一直線に飛び、焦点の合わない目をした魔物の眉間に風穴を開けた。ビギナーズラックだろう。


「あと9体、動きが止まった。今のうちだ、更に狙え」


何事もなかった仲間が突然死んだことに動揺したのか、魔物達の進攻が止まる。こちらに接近してこないのなら動かないただの的だ。次々と標準を合わせて引き金を引き続ける。1マガジンに相当する10発の弾を撃ち終わり、狼たちの数は半分に減っていた。


銃の性質を本能的に理解したのか、狼たちはジグザグに動きながらこちらに近づいてくる。スナイパーライフルではもう当たらないだろう。距離も1キロを切ったし、P90に切り替えよう。そう思いドラグノフ狙撃銃を消すと、ノノさんが言った。


「少年、もう大丈夫だ。あとは私が終わらせる」

「え?」


僕が聞き返すよりも早く、ノノさんは駆け出していた。

速い。気を抜けばすぐに見失ってしまいそうだ。万が一の事を考え僕もノノさんの後を追う。


高速で移動するノノさんは腰から短剣を二本引き抜いた。その時はためいた白衣の下には、沢山の物が収められていた。同じような短刀、注射器に薬品のような物が入った試験管や注射器、それらが白衣の内側や腰回りに見えた。


ノノさんはそれを前方に向かって投げた。かなりの距離があるにもかかわらず、短剣は吸い寄せられるかのように魔物に向かい、眉間に深々と突き刺さった。


「まず二匹」


ノノさんは別の短剣を引き抜き構える。残る3匹の魔物達はノノさんを射程に収めるとそれぞれ首、腕、腿目掛けて飛びかかった。


ノノさんは避ける素振りすら見せない。あのままだと噛みつかれてしまう。


「ノノさん! 避けてください!」

「なに、そう焦るな」


カラカラと笑うノノさん。そのまま無造作に振るった短剣は首に飛びかかった魔物の首に刺さり、狩人は自らが狙った獲物に狩られてしまった。ノノさんは刺さった短剣を手放してもう片方の短剣を足元に投げつけた。短剣は腿に飛びかかっていた魔物の足を掠め、僅かな傷跡を残して地面に埋まる。痛みで少し怯んだ瞬間、足で狼を蹴り上げる。女性が放ったとは思えない速さの蹴りが直撃し、何かが折れる音と共に数メートル先に転がっていった。


残った魔物は腕に噛み付くことが出来たが、固い金属音が響いた。


「噛み切らせはしないぞ、眠れ」


白衣の中から取り出した一本の注射器を首に突き立て、中の薬液を打ち込む。放すまいと喰らいついていた狼の身体がビクッと震え、しばらくすると力なく地面に落下した。中身は何だ? 毒?即効性のあるものなので危険なのには変わりないが。


強い。少なくともただの医者などではないことが今分かった。でなければ戦闘中に笑うことなんて出来ないし、数で負けている状況で制圧できるわけがない。


「ノノさんって、何やってたんですか?」


自然と、僕の口から漏れた言葉だった。


「なに、あの戦闘狂に少し稽古をつけてもらっただけだ。ある程度、自分の身を守れるようにしたかったのでね」


涎で袖がびちゃびちゃになった白衣を脱ぎながら答えるノノさん。中には金属の籠手に革の鎧を着ていて、ポーチや剣があちこちにぶら下げてある。格好的には盗賊とかの雰囲気がする。

薬品関係はショルダーバックとか白衣の中に仕込んでいるようだ。

ノノさんは白衣を畳んで地面に置くと、結晶化し始めた魔石を集め始めた。さすがに遠くの魔石は集めに行かないようだけど、わざわざ集めなくてもいいんじゃないかな。と思ってたいたら集め終わった魔石を僕に渡してきた。


「ほら、折角の臨時収入だ。私は魔法に適性が無いから君たちが持っていた方が良いだろう。特に少年は魔力が切れては何もできないのだろう? 見た所魔石を持っていないようだったから、お守り代わりにでもするといい」


そういえば魔石から魔力を補充できるんだっけ。記憶からすっかり抜け落ちていた。拠点にする村で魔石があったら譲ってもらえないか聞いてみよう。


「さて、そろそろ出発の時間だ。食後の運動にもなっただろうし、後は彼女が戻って来るのを待つだけだ」


さほど大きな消耗もなく戦闘は終わった。それにしてもこんな昼間に魔物が現れるなんて、森に何か異変でも起きているのだろうか。少し急いだ方が良さそうだ。


荷車に戻ると、アルカネが地面に座っていた。アキナはまだ寝ている。


「あ、お帰りなさい。どこに行ってたの?」

「なに、ちょっと野暮用でな。そろそろ出発するぞ。少年が乗り物を用意してくれたから掛かる時間が大分短縮できる。運転は私がする、後ろに乗り込んでくれ」


うーん、まるで遠足の時の学校の先生みたいだ。さながら自分たちは生徒と言ったところか。さらっと誤魔化したのは相手にするのが面倒だからだろう。後ろに乗り込むと、さっきまで戦っていた平地がみるみる遠くなっていく。急な魔物の襲撃もあって、何か嫌な予感がした。


「カズト、どうかしたの?」

「いや、何でもないよ」

「?」


何かを感じ取ったのか、心配そうにアルカネが聞いてくる。すぐ脇のアキナの寝顔を見ると、波立っていた心が落ち着きを取り戻す。このままで、僕はいいのだろうか。そもそも、何に違和感を感じているのかすら分からない。


頭を振って、進展のない思考を振り払う。まずは村に行くことが先決だ。目の前のことに集中しよう。

ノノさんの運転する荷車は、淡々と目的地に進んでいった。



誤字脱字等ございましたらお手数ですがご連絡していただけると助かります。

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