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移動中

遅くなって申し訳ありません。リアルが忙しいのです

僕たちは遠い村を目指し歩く。人が踏み固めた道が果てしなく続き、草や花が無骨な茶色の道を華やかに飾り、澄み渡る空と青々と茂る木々が時折姿を見せる。

鳥がさえずり、昆虫が草の隙間を駆けていく。自然豊かな常に移りゆく風景に、僕の心は楽しみと驚きで満ち溢れていた。


日も高く登り、一日の折り返し地点に差し掛かる頃、アルカネのお腹から音が鳴った。当の本人は気付いていないようだ。


「そろそろ昼だ。休憩にしよう」

「はーい!」


保護者のノノさんから昼食の時間を告げられる。見通しのよい平地に敷物を敷き、荷物を重石代わりに四隅に置く。


「何か準備するものはある?」

「火種を灯すまきがいる。乾物を炙るだけだ、それほど量は必要ない」

「じゃあ私取ってくる!」


薪の用意をやりたいとアキナが元気よく手を挙げる。


「では君に薪集めを頼もう」

「分かった! すぐ持ってくるね!」


言うが早いか、アキナは言いながら森へ向かって飛んでいった。


「さて、薪がくるまで特にすることがない。少年、何かないか」

「どういう振りですか!?」

「振りという訳ではないぞ。ただ干し肉や干物では物足りないかと思ってな。少年なら何かできると見込んで聞いたんだ」


といっても何が良いだろうか。割と肉ばっかりだから野菜とかかな。

料理なんてしたことない男子1人が献立作りに必死になっているところ、地面を揺るがす衝撃が起きた。敵襲かと思い顔を上げるとアキナが戻ってきていた。


「ただいま! 持ってきたよ!」


アキナが地面に降ろしたのは僕たちの身長を優に超える巨大な木だった。幹ごとぶった切ったらしく、上の方には若々しい葉が沢山付いている。


「……私は薪と言ったのだが、説明不足だったか?」

「説明不足じゃないと思います。僕なら枝とかを持ってきます」

「なんで!? 薪って言ったら木じゃないの!?」

「規模が違いすぎるよ!」

「別に良いじゃない、これから割るんだし」


アキナはぶつくさ言いながら木の中心に空手チョップをかました。それで木は真っ二つに切断される。


「……彼女は武道を嗜んでいるのか?」

「そんなの知るわけ無いですよ。力技でぶった切るってありですか」

「アキナすごーい! 切断面も綺麗じゃない!」


アルカネを除いて唖然としている僕たちを無視し、アキナは幹を次々と叩き割り薪に変えていく。数分そんな光景が続き、最終的には一冬越せそうな量の薪が平地に山積みになった。


「どうよ! やってやったわよ!」


薪を持ってくるという任務を果たしたアキナは、自慢げに胸を張りドヤ顔をしている。ああ、悪気は無いんだろうな。この薪どうしよう。とても使い切れる量じゃない。持ち運ぶにも大臣さんが乗ってきた乗り物を出さないといけないし、かなりの魔力が必要になるだろう。


「少年よ、何か案はあるか」

「バーベキューでもすればある程度の量は減らせます。もういっそ乗り物を出して積み荷にした方が、歩く手間も省けて早いと思います」

「だな。早々に負担を掛けて済まないが頼めるか」

「分かりました。任せてください」


魔力を集めながら、アルカネと乗った乗り物を思い出す。時間を掛けゆっくりと魔力が乗り物の形を成していく。魔力を半分ほど使い、何とか創り出す事が出来た。どうせだからバーベキューの道具と食材も出してしまおう。

トングに野菜、肉を次々と出していると、ノノさんが興味深そうに聞いてきた。


「この緑色のものは何だ?」

「それはピーマンです。これが玉ねぎで、黄色い小さい実を付けているのがとうもろこしです。全部野菜ですよ」

「見たことの無いものばかりだ。そちらは肉なのか?」

「はい。豚肉、牛肉、鳥肉、どれもスーパーで買った事のある安いものばかりですけど」


ちなみに、肉は全てお店に並んでいるそのままの状態で出てきた。発泡スチロールに入れられている状態と言えば想像できるだろうか。とりあえず食材類は全部用意できたので後は焼くだけだ。


調理器具をスタンバイし金網をセット。薪を並べてアキナの薪作りの際に出た枝や葉っぱを放り込む。ここに火種を与えて風を送れば燃えてくれるはずだ。


「じゃあ火起こしは私がやるわ。そろそろ何かしないと気が引けるしね」

「うん、お願い」

「魔力を用いて宣言する、火種を灯せ、『火炎』」


アルカネの詠唱で葉に小さな火が起こる。ゆっくりと燃え始めたそれは枝に、薪に引火し大きな焚き火となっていく。


「よし、じゃあどんどん焼いてください! 食材は僕の魔力が尽きるまで出せるので偏りすぎない程度に食べて下さい!」


3人にトングと焼き上がった食材を取る皿を渡す。一応焼肉のタレも用意してあるが、大食漢の2人は多分そのまま食らいつくだろう。


僕はひたすら金網に食材を並べる係に徹した。食べるのは嫌われ者の野菜たちだ。アキナとアルカネはひたすら肉を食べている。野菜も時々取るが肉と野菜の比率は5:1程度だ。ついには肉を奪い合う場面も見えた。食い意地を張っている。2人とも育ち盛りということにしておこう。


1時間程焼き続けると、さすがの2人もお腹いっぱいなのか肉を取る手が止まった。


「私はもう止めておくわ。ごちそうさまでした」

「私も-。いっぱい食べられて満足!」


ご満悦のアキナは、さっきの魔力で創り出した乗り物に乗ると横になって寝てしまった。アルカネは食後の運動をすると言って平野を走りに行った。満足したら戻って来るそうだ。さて、片付けようかな。使用したものを消そうとすると、それを制止する声が響いた。


「待ちたまえ。少年、君は殆ど食べずに焼いてばかりだったろう? 君の分を取り分けておいた。ちゃんと食べなければ持たないぞ」


ノノさんが、焼いた肉と野菜が入った皿を差し出してくれた。その隣にはノノさんのシンボルになっている干し肉が添えられてあった。水でもかけたのか、少しふやけていて噛みやすそうだ。


「ありがとうございます、ノノさん」

「なに、気にするな。昼食が干物から肉と野菜の食べ放題にグレードアップしたんだ、二人も満足だったろうし、私も文句はない。これくらいはしないと罰が当たるだろう?」


ノノさんの気遣いに感謝し、味わいながら食べる。味に飽きてきたら塩を振り、数分で完食した。後は後始末をしてアルカネの帰りを待つだけだ。

ゴミや調理器具等は魔力で創り出したからはすぐに消すことが出来る。念じて消し、残った焚き火の燃えカスをどうしようかと悩んでいる時だった。ノノさんが遠くを見つめながら険しい顔をしていることに気が付く。


「ノノさん、どうしたんで」

「少年、ゆっくり休憩と行きたい所だが、どうやら私たちに来客のようだ」


来客? こんな時に人が来るなんてどういうことだろう。思い当たる人がおらず、首を傾げる。ノノさんはなおも遠くを見つめ続ける。


「数は1、2、3…………全部で10か。厄介だな」

「ノノさん、どういうことですか? 10って何の数」

「魔物の襲撃だ。普段は森から出てくることなどないのだがな。相手は狼型、2人で相手をするには少々数が多いが何とかするぞ。距離はあと2キロ、数十秒で接触する。君の武器で牽制できるか?」


異常事態が起きていることを把握しすぐに立ち上がる。アサルトライフルじゃ届かないし狙撃するにも当たる自信がない。でもやらなければこっちがやられてしまう。悩む暇も惜しく、僕は手に魔力を集めた。


テスト期間に入るのでしばらくの間更新を停止します。

ちゃんと書き溜めを作る意味もあります。

更新ペースを守れないのは個人的にも良くないと思っているので、安定して投稿できるよう努めます。


更新を再開する時は活動報告でお知らせします。

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