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剣と魔法と銃器を武器に僕は世界に立ち向かう  作者: 雨空涼夏
一章 若き少女と竜の巫女
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名も無き世界

「あーあ、退屈だな-」


大きな屋敷の中。中世の洋館のような造りをした家の中で、1人の男が暇を持て余していた。

男は部屋の中をうろうろと歩き回る。何か面白いことはないか、探し回っていた。


「そうだ、彼の様子でも見てみようかな。どこまで強くなったかな? 楽しみだなあ!」


男は一つの部屋に入った。明かりの入らない、真っ暗な部屋。そこには大きな穴が空いていた。


穴の中を覗き込むと、仲良く食事をしている2人の少女と1人の少年が映り込んでいた。今は休憩中のようだ。既に大きな戦いは終わったような顔をしている。


「あっれえ? もしかして良いとこ見逃しちゃった感じかな? せっかく使い魔を送って狂いそうだった竜人を狂わせたのに、もう終わっちゃった感じ?」


そんな、せっかく退屈しのぎに送ったのに既に終わってしまったなんて。これではまた退屈になってしまう。確かあの世界にはあと2人一緒に送り込んだ人間がいたはず。移動していなければ森とどっかの国のお偉いさんにしたはず。何の力を持たせてあげたんだっけなあ。最近記憶が曖昧になって仕方が無い。


「ま、いっか。そろそろ飽きてきたし、彼が死んだらさっさと壊しちゃおう」

「スヴェラ様、只今戻りました」


後ろで声がした。振り向くと、ぼろぼろの服を纏った痩せた青年がいた。


「あ、お帰り! えっと、誰だっけ?」

「貴方様の従順なる使い魔でございます」

「ああ、そうだそうだ! で、なんの報告だい?」

「仕掛けた竜人ですが、救世主によって敗れました」

「あーやっぱり? やっぱりあの能力って強すぎたかな?」

「それもあると思われますが、彼は人格を2つ、所有していると思われます」


使い魔の報告は興味深い。僕が救世主として選んだ少年は人格を2つも持っているのか! これは面白くなってきた! 男ははやる気持ちを抑え、使い魔の報告を促す。


「それで、その2つの人格はどんな人格なんだい?」

「はい、通常の人格は人1人殺すことのできない、貧弱極まりない人格でございます。裏となる人格は、敵とみなした者は誰であろうと殺すことのできる人格でございます」


これまた変わった人間を捕まえてしまったみたいだ。確か彼はもう1人の女の子を探していたはずだよね。竜人の探索者も付いているはず。次はどこに探しに行くかな。部屋をうろつきながら彼の次の行動を予想する。勘が外れればこちらから干渉しても無意味になってしまう。


彼から一番近い異世界人は森にいる奴だ。そっちにヤマでも張ろう。


「よし、次の予定が決まったぞ! 彼はどう動くのかな? どんな表情するのかな? 楽しみだなあ! 気になってきたなあ! それじゃ、レポートまとめたら持ってきて。そしたら後はしばらく休んで良いよ」


「御意」


使い魔が霧散する。残されたのは僕と僕が創った世界を覗く穴だけだ。既に観察には飽きている。男は考え付いたことを実行へ移すため、別の部屋へと向かう。

迷路のように入り組んだ廊下を歩き続け、一つの扉の前で男は止まった。暗証番号を入力すると、ロックの外れる音。


部屋の中はこれまでとは違い、機械で埋め尽くされていた。無数のパソコンが並び、表示されているデータが絶え間なく更新されている。男はそのうちの一つに手を付けた。


「えーっと、どの機械でいじれるんだったっけ?」


パソコンの前を行き来して、お目当ての画面を見つける。男はその前に座り込むとキーボードをたたき始めた。

しばらくキーボードを打ち鳴らす音が断続的に響く。音が止まると、画面にテキストが表示された。


『―――――を1週間後に設定しました』


「よし設定完了! さてさて、今回の実験ではどんなことが起きるのかな? 彼が助けるのか、はたまた全滅か。楽しみにしてるよー」


男は無邪気な笑みを浮かべながらパソコンだらけの部屋を出る。男が次に向かったのは重厚な金属の扉の前だった。男が扉に触れると、扉は跡形もなく消えてしまう。そして中に入るとまた現れ、新たな侵入者を阻む。


部屋の中は光で満ち溢れていた。木の座席に色とりどりのステンドグラス、奥にそびえ立つ巨大な十字架。教会を模した部屋の中心には、一人の少女が横たわっていた。


「うんうん、よく眠ってる。君の王子様がいま頑張ってるから、応援してあげてね! 僕は観察がしたいだけだからそれほど無茶な悪戯はしてないけど、もしも死んじゃったら運が悪かったと思って死んでね?君は大事な全クリ後の景品だけど、プレイヤーがゲームオーバーになったら、景品の君もゲームオーバーだからね」


少女は答えない。び出した時から深い眠りについている。未だに目覚めることはない。


救世主に選んだ彼の戦う原動力は、この少女と再会するという希望だ。


今回んだ彼らが最後の実験体。誰かが誰かのために命を懸けて戦う姿を見たい。彼が僕を倒し、囚われの姫君を救う。そんなエンディングを見てみたい。


もう台本なんてない。僕が試練を与えて彼がそれを突破する。突破できずに倒れたのなら、世界ごと滅ぼす。残ったこの子も殺す。そしてまた実験を始めるんだ。


「今度こそ見せてよ。大切な人を助ける意志の強さを、生きたいと願う本能を、狂気に抗う姿を!」


男は笑い続ける。どことも分からない世界の片隅で何時までも。その笑い声に答える者はいなかった。

そうして孤独な神は、願いを叶えるために今日もヒトを観察する。



かつて見ることのできなかった光景を求めて。


手に入れられなかった、愛を、友情を、絆を求めて。

あった方が良いかなと思い、予告もなしに投稿しました。正確には予告するの忘れてました。すいません。


次から新章の予定ですが、2時に間に合うかどうか分からないです。間に合わなかったら、日曜日中に投稿します。

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