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剣と魔法と銃器を武器に僕は世界に立ち向かう  作者: 雨空涼夏
一章 若き少女と竜の巫女
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帰ろう、私たちの場所に

真っ暗だった。何か大きな穴が空いている気がした。真っ暗なのは日が暮れて夜になったからで、大きな穴が空いている気がしたのはそこに私の家族が横たわっているからで。

涙なんてとうの昔に枯れていて、私はただ呆然と夜空を眺めていた。

ふと背中に何かが掛けられた。触ってみるともこもこしていて、毛布だと気が付く。


「風邪を引くぞ。少しは自分の体調のことを考えろ」

「……ありがとう」


きっとカズトの力で出してくれたのだろう。抱き寄せるととても暖かく、初めて体が冷えていた事を自覚した。


「優しいね、カズトは」

「優しいのは俺じゃない。元の和人の方だ」


元と言うことは、やっぱりいつものカズトではないのだろう。私は意を決して聞くことにした。振り返ってカズトの顔を見て聞く。


「カズトは、あなたは一体誰なの?」

「…………」


けれどもカズトは何も答えない。目を見ると、誤魔化そうという雰囲気は感じられなかった。どう伝えようか、言葉を選んでいるようだった。


「…俺は、もう1人の俺に代わって引き金を引くための存在。あいつが光なら、俺は闇だ。こいつの類を見ないお人好しは知っているだろう?」


私は頷く。カズトは誰に対しても優しい。人であれば誰でも助けようとするし、敵にも情けをかける人だ。


「その優しさはいつか仇になる。敵に情けを掛ければ死ぬだけだ。味方が寝返った時はどうする? 大人しく寝首を掻かれるのか? きっとこいつは説得しようとするだろう。専守防衛、元いた世界の常識が抜けきっていないんだ。だからお前の父親にも引き金を引けなかった。そのせいでこいつとお前は死にかけた。それで俺が出てくるハメになったんだ」


「結局のところはなんなの?」


いまいちカズトの言いたいことが伝わらない。かゆいところに手が届かないような感じだ。


「二重人格の原因は精神的ストレスから身を守るためだ。こいつ が人を殺せば間違いなく壊れる。だから代わりにもう1人の俺が殺さなきゃいけないやつを殺す。お前も薄々勘付いてはいるだろう?」


私は黙って続きを促す。私が答える気がないのは最初から知っていたのか、そのまま続けた。


「救世主に選ばれているのはあいつじゃない、俺だ。あいつじゃ世界は救えない。そもそも、その滅びってのがどんなものか分からないから動きようがないんだがな」


ある程度、予想は付いていた。誰彼構わず殺すのも問題だが、敵1人殺すことすら躊躇う人が救世主になれるのは難しい。このカズトが救世主と言われ、竜の巫女としては少しだけ安心できた。


「伝承でなら滅びのことは知っているわ。滅びについてはどっちのカズトにも教える。聞いて」


私は伝承で聞いたことしか話すことは出来ない。それでもこれから行動する時のヒントにはなるはずだ。


「滅びとは、この世界の生物全てが死に絶えること。どう死ぬのかは伝えられていない。『現れた救世主は守り人と配下を連れて遺跡を見つけ、世界を滅びから救う』 これが私が伝えられた伝承。だからこの世界のどこかにある遺跡を見つけ出して、何かすればいいって事」

「単純で分かり易い。なら当分の目標は遺跡探しと永遠探しだ」

「そうなるわね」


そのトワという子は私の能力で異世界人を手当たり次第に探せばいい。遺跡はどこにあるかは聞いたことがないので、聞いたり実際に探し回ることになりそうだ。


「さて、そろそろ戻るぞ。それはどうする、埋めるか? 焼いて灰にするか?」


カズトはお父さんの死体を見て言う。できればこのままの状態にしていたいが、そういうわけにもいかない。


「焼きましょう。でもちょっとだけ待って」


私はお父さんの首に掛けられている首飾りを外し、自分の首に掛けた。これがお父さんの形見。私の中で、お父さんは生き続けるんだ。いつまでもくよくよしてはいられない。お父さんから離れ、私は魔法を唱えた。


「魔力を用いて宣言する、燃え盛れ、『業炎ごうえん』」


唱え終わると、お父さんが一瞬にして炎に包まれる。それに合わせ、カズトが周囲に防壁を張ってくれた。


闇に包まれた平原を真っ赤な炎が照らす。それもしばらくして勢いが弱くなり、やがて鎮火した。カズトが防壁を解くと、私は近づいて残った灰と僅かな骨の欠片をすくい上げた。


その時、平原に横薙ぎの風が吹いた。すくい取った灰が、風に吹かれて夜闇に溶けていく。風は止むことを知らず、地面に残った灰すらも吹き飛ばす。あれだけあった灰は全て無くなってしまった。私は骨を拾って袋に詰め、カズトに向き直った。


「帰りましょ、私たちの場所に」

「ああ。今度は襲われなければいいな」

「冗談はやめてよ。ほんとに起こりそうで怖いから」


私にはカズトとアルカネと里のみんながいる。大切な仲間だ。小さな拳を握り締めて、私とカズトはアルトノリアに向かった。


ちょっと話のキリが良くなかったので12時にもう一話投稿します。短い方が読みやすいかも知れないので、それの試験的な意味合いもあります。もしよろしければ、いつもの長い方が読みやすいか、短い方が読みやすいか一言お寄せください。

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