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剣と魔法と銃器を武器に僕は世界に立ち向かう  作者: 雨空涼夏
一章 若き少女と竜の巫女
36/87

引き金を引いて

お待たせしました。

前に遭遇した時とは雰囲気が違う。前はただ冷酷そうで、頭の切れる竜人と感じていた。今はそんなものは微塵も感じられない。狂ったように溢れ出す殺意が全てを覆い尽くしていた。


「父さん、ここまで来て何のつもり? 私たちはこれからアルトノリアに戻るんだけど」

「言わなくても分かるだろう。お前たちを殺しに来たんだ」


ガナンが言うと同時にアキナは急降下する。次は三方向から熱線が飛んできた。魔法が展開されている場所はそれほど遠くない。射程はかなり短いのだろう。だがそれでも威力は十分に危険だ。


「アキナ、空中じゃ分が悪すぎる! 地上で戦おう!」

「真下は森よ!? 平地はもう少し先だから移動しないと!」

「空中じゃガナンの方が上だ。平地なら僕も戦える。援護はするから急いで!」

「分かった。やられないでよね」


のんきに話している暇はない。すぐさま平地を目指して移動するが、ガナンが黙って見ているわけがない。アキナの飛行を遮るように熱線が僕たちを焼き焦がそうと飛んでくる。後ろや横から飛んでくる熱線は僕が防壁でせき止める。前から飛んでくる熱線はアキナが躱す。まるで弾幕ゲーだ。平面ではなく立体なのでどこから飛んでくるかは見える範囲でしか分からない。一人だったらすぐに被弾しているだろう。


熱線の量は留まることを知らない。平地に近づくにつれて威力、密度がどんどん高くなる。アキナが躱すのもそろそろ限界に近い。


「アキナ、一気に平地に近づいて! 進路は防壁で作る!」

「分かった! お願い!」


平地へ向けて一直線にドーナツ型の防壁を張る。真ん中の穴をアキナは一気に駆け抜ける。狙いを察したガナンは、空洞目がけて後ろから熱線を放ってきたが即座に防壁を張りそれを防ぐ。その隙に僕たちは地へ足をつけた。


「カズト、ここからどうするつもり!?」


どうする、相手はガナン、竜人、人間、殺すことは出来ない。死なない程度に攻撃を与える? そんなのほぼ不可能だ。接近すら出来ないというのにどう攻撃を当てろと? いや、銃がある。あの竜人に向け引き金を引けばいいだけだ。そんな単純な事のどこに躊躇う必要がある? だめだ、殺しちゃいけない、殺しちゃいけないんだ!


「カズト、危ない!」

「ああクソッ!どうすればいいんだよ!」


僕が躊躇っている間に、ガナンはご丁寧に全方向から極太の熱線を僕に向けて放ってきた。もちろんこのままでは炭どころか塵さえ残らないので、防壁で耐えるしかない。小さい規模で展開し強度を高めた防壁は攻撃を耐え続ける。だが熱線がいつまで続くか分からない。どうしようか考えていた時、アキナから


「カズト、聞いて」

「何!? ちょっと待って!」


アキナから放たれた言葉は、僕が聞きたくないことだった。耳を塞いだが意味はない。確かに僕の鼓膜はその振動を受け取り声へと変えた。


「父さんを殺して」

「……え?」

「カズトが嫌がってるのは分かってる。でもやらなきゃいけないの。お願い、お父さんを殺して」

「無理だ! 僕には出来ないよ!」

「ここで父さんを殺さなきゃ私たちは死ぬ。そうしたら今度はアルカネや里に危害を加えるに違いないわ。殺さないんだったら父さんをどう止めるつもりなの?」

「それは……」


殺したくない。その必要があるとしても、僕には出来る気がしない。そうしなければいけないのは分かっているのに、頭の奥でそれを阻害する何かがあるのだ。


「熱線が止んだわ。相当な量を撃ってきたからしばらくは熱線は放てないはず。やるなら今しかないわ!」


アキナは耐久値のない防壁を叩き割るとガナンに向けて飛んだ。両手には炎を宿している。


「魔力を用いて宣言する! 焼き尽くせ、『業炎ごうえん』!」


その両手から炎が飛び出し、瞬く間にガナンを包み込んでしまった。


「やった!?」


そのセリフはダメだ、そう突っ込むよりも早くフラグは回収された。業炎の中からガナンが飛び出し、アキナを殴り飛ばす。来ると予想していなかったアキナはなす術もなく吹き飛ばされた。


「アキナッ!」

「ぬるい。ぬる過ぎるな。殺したいのならば今の100倍程度の威力が欲しいところだ」


アキナに駆け寄って怪我の具合を確かめる。


「アキナ、痛いところは!?」

「あ、足……」


足か。触ったり持ち上げたりしてみる。どうやら足首を捻ったみたいだ。治療しながらガナンの様子を窺う。僕たちをなぶるのが楽しいのか、その表情は愉悦で満たされている。


「待ってて、すぐ治すから」

「ありがとう……。気をつけてね、力はお父さんの方が圧倒的に上なんだから、真っ正面から当たっちゃダメ」

「アドバイスありがとう。肝に肝に銘じておくよ」


そろそろ治ったかな。足首に触れてみるが痛がる様子もない。アキナも足首を回してみて大丈夫と判断したみたいだ。立ち上がりガナンを見据える。ガナンは不敵な笑みを浮かべ。挑発するように言った。


「治療は終わったか。好きなだけ治すがいい、すぐに新たな苦痛を与えてやろう」

「ふざけるな。僕は死なない、アキナも死なせない!」

「よかろう。ではその言葉、実行に移してみせろ」


その瞬間、視認していたはずのガナンの姿が消えた。どこだ?周囲を見回すがどこにも見当たらない。


「カズト、後ろっ!」


背中狙いか! 防壁を張り地面に伏せると、強烈な風圧とともにガナンが防壁を殴りつけている姿が見えた。けっこう丈夫な防壁を張ったはずなのだけど、すでに蜘蛛の巣状にヒビが入っている。


「ふむ、加減したとはいえ防がれるか。次はもう少し力を出そう」


攻撃の力量を確認しているのか、手を握ったり開いたりしている。ガナンがもう一度防壁を殴るとあえなく砕け散ってしまった。逃げないと、こいつも当たったら即死だ。助かってもただじゃ済まない。僕は身体強化を使って全力で距離を取る。だが、ガナンの前ではそれすらも無意味だった。


「その程度か? 救世主」


移動したにも関わらず、ガナンは僕の正面に立っていた。すぐ、横っ腹に衝撃。受け止めきれなかった勢いが全身で暴れ、吹き飛ばされた体が地面を転がる。蹴られたみたいだ。ガナンは僕に近づきながら落胆の声を漏らした。


「期待外れだな。もういい、お前は死ね。死後の世界で誰一人として守れなかったことを悔いるがいい」


僕の上に魔法が展開されていく。だがその規模は驚くほどに小さい。位置からして心臓か頭を貫いて終わらせるつもりなのだろう。逃げたいが手足が動かないし進行形で治療をしてはいるものの間に合う様子もない。諦めと絶望が思考を支配していく。


嫌だ、こんなところで死んでいられない。生きて帰る、元の世界に帰るんだ。諦める暇があったら頭を使え。手を使え、体を使え!


「うあああああっ!!」


自棄になって叫びながら、僕は右手に銃を出した。グロッグ18、フルオート機能が付けられた自動小銃だ。反動と精度は全くと言っていいほど最悪の銃だが、この近距離なら関係ないはずだ。体の状態なんて気にしていられない。腕が痛むのを承知でガナンに向けて引き金を引いた。鳴り響く発砲音。分速1200発の射撃レートは伊達ではない。1~2秒で弾倉が空になった。


ガナンは舌打ちをしながら銃弾を回避する。しかし突然現れた銃に反応が遅れ、数発発腕と肩に被弾した。痛みに呻きながらガナンは僕から離れた。その隙に足の方を全力で治す。腕が使えなくても逃げることができれば形勢逆転できるはずだ。


「ちっ、油断したな。楽に死なせようかと思ったが止めだ、四肢を切り刻んで焼いてやる」


物騒なことを言わないでほしい。いつの間にかガナンの手には炎で作られた剣がある。あれで焼き切るのだろうか。当たったら即死というルールは変わらないようだ。足は走れる分には回復している。次は右腕を。銃がある限りガナンは警戒してそう近寄っては来ないはずだ。


「かかってこいよ、殺せるものなら殺してみろ」

「威勢がいいな。いつまで続くか見物だな!」


再びガナンの姿が消える。だけどさっきよりは場所の特定がしやすい。立ち上る炎が通った道を示してくれる。


「そこだ!」


真後ろへグロッグを向けて撃つ。銃弾が何かに擦るような音が聞こえた。遅れて熱が背中を暖める。後ろを向くとガナンが肩を押さえてうずくまっていた。グロッグからP90に銃を変え、ガナンに標準を合わせる。


「チェックメイトだ、ガナン」

「殺したければ殺せ。そうすれば貴様もかつて我らの里を犯した異世界人と同類となるのだ」


それを聞いたとき、僕は躊躇った。引き金を引くことを。アキナから聞いた異世界人と同じになると言われ、動揺してしまった。それは致命的なミスだった。


わずかな隙をついてガナンは距離を詰めた。握っていた銃が切り裂かれ地に転がる。気付いたときには、僕の喉元に向かって炎の剣が突き出されようとしていた。駄目だ、間に合わない。銃を出すのも、身を捻ることすら叶わない。チェックメイトなのは僕だった。


「死ね、救世主!」


その時、体に違和感を感じた。棒立ちだったはずの僕の体が宙に浮いているのだ。ほんの僅かな、けれども攻撃から逃れるには十分な距離。すぐに僕は突き飛ばされたということに気づいた。一体誰が?振り向くと、すぐ隣にアキナの姿があった。


「離れて! そこは危険だ!」


そう叫ぼうとした。アキナに向かって、危険を知らせようとした。だがそう言ったとき、アキナは既に炎の剣によって喉を貫かれていた。世界が遅くなる。アキナが地面に倒れる、その一瞬が何十秒にも感じた。


おい、嘘だろう?嘘だって言ってくれよ。倒れたアキナに駆け寄る。何かを言っているが、喉に空いた風穴が声をただの空気へと変える。完全に焼いていないようで、血だまりがゆっくりと広がっている。今から治療しても間に合わない。ガナンがそんな隙を与えるとも思わない。


「どうしてだよ!? どうして庇ったりしたんだよ!?」


僕の問いに、アキナは答える。声は聞こえないけど、ちゃんと聞いた。僕にはアキナの言葉が届いた。


「カズトを守るのが、私の役目だもの。当然でしょ」


苦しいだろうに、辛いだろうに、それでもアキナは無理矢理笑顔を作って笑った。


僕はなんて無力なんだ。たった一人の命すら救えない。たった一人すら満足に守れない。一緒に事故に遭った永遠を助けることが出来なかった時みたいに、こうしてまた一人、守り通せなかった。世界が色褪せていく。意識が遠のいていく。もう限界だ。後ろではもうガナンが炎の剣を振り降ろしているのだろう。すぐ背中に熱を感じる。諦めた僕は意識を手放した。


「俺の番か。後は任せろ、和人」


そんな声と、僕の中で何かが弾けるのを感じながら。その声は、僕の声に随分と似ていた。

今日は大みそか!明日はお正月!雪国はいつでも雪かき!

寒い……。かじかむ手でスマホで小説を書いてます。


今年もあと一日ですね。一応活動報告でもあけましておめでとうございますと書くつもりです。よかったら誰か反応してください!誰もいなくて寂しいんです!


それとお礼を! ブックマークしてくれている皆さん! 評価をして頂いた皆さん! なんとなくふらっと読んでくれている皆さん! なんとなくじゃなくて普通に読んでいるという皆さん!


こんな未熟者の小説を読んでいただき本当にありがとうございます!

これからも自分なりに精進していきますので、気が向いたらでいいので応援よろしくお願いします!(他の人からみたら全く成長していないかもしれないですが)

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