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剣と魔法と銃器を武器に僕は世界に立ち向かう  作者: 雨空涼夏
一章 若き少女と竜の巫女
34/87

出発

ペース上げるとか言ったけど結構つらい……。文字量は削ることにしました。怒られたりはしないよね?

「ちょっと! 勝手に私を里の長にしようとしたのは誰!? 出てきなさい!」


まだ日が出て間もないというのに、元気な声が門の前で暮らす竜人たちを無理矢理呼び起こす。門のテント前に到着したアキナはひたすら叫んでいた。


「は、や、く、出てきなさいって言ってるでしょうが!」

「ちょっとアキナ、まだいちおう朝だから叫ぶのはやめてあげて! もう少し静かに!」

「出てきなさい! 出てくるまで私は何度でも叫ぶわよ!」


荒ぶるアキナを宥めようとするも効果無し。アキナはテントから眠そうに目を擦る竜人が出てくるまで20分ほど叫び続けていた。


「ったくうるせえな。一体何の騒ぎだ?」

「やっと出てきた。そこのアンタ! 私のことを長にしようと提案したのは誰!?」

「ああ?誰だこのうるさい小娘は? いきなり質問なんざいい度胸じゃねえか」


テントから出てきた大柄な竜人はアキナを物理的に見下ろすと、気怠そうな声で呟いた。それを聞いた直後、アキナから大量の魔力が溢れだした。あ、これはやばい。逃げよっと。身の危険を感じた僕はアキナから離れて物陰から見守ることにした。

アキナから溢れだした魔力を感じ、大柄な竜人もすぐに自分の失言に気が付いたが、時すでに遅し。


「魔力を用いて宣言する、燃え上がれ『火球』」


アキナは手のひらに小さな火の玉を作っていた。気のせいだろうか。徐々に大きくなっている気がする。うん、気のせいだ。


「あらそう、じゃあアンタが馬鹿にしたこの小さな小娘が竜人の巫女だって言えば分かるのかしら?」


おお怖い、さっきより10割増しで怒ってらっしゃる。溢れだす魔力の量も増え、火の玉の巨大化もそれに比例して加速する。あのままではせっかく助けた竜人たちが真っ黒な炭になってしまう。


「竜人の巫女……? も、もしかしてアキナ様?」


ようやくアキナが誰かを理解したらしい大柄な竜人は鮮やかな動きで土下座をした。必死そうな声でアキナに話す。


「私はその方は存じ上げません! 朝にここに到着した者たちは門の外で里へ戻る準備をしております! おそらくですがそこで指揮を執っている者が提言者かと思われます!」


確かに朝に来た人たちはここにはいないようだ。試しに向かってみるしかないだろう。


「アキナ、取りあえず門の外に行こう! その人は朝に来た人じゃない!」

「あらそう。教えてくれてありがとうね」


居場所が分かって怒りが収まったのか、溢れだす魔力は止まり、火の玉の巨大化も停止した。巨大化が停止しただけで、最初はピンポン玉くらいだった火の玉は、大玉転がしの玉くらいにまで大きくなり今も燃え盛っている。そのせいで周囲の気温が上がり続けているのだが、それを出した本人は涼しい顔をしている。僕と土下座中の竜人は汗だくだ。熱くて接近出来ないので、遠くからアキナに話しかけた。


「アキナ、その火の玉どうするの?」

「こうするの。それっ!」


僕の問いに答えると、アキナは火の玉を空に向かってぶん投げた。かなりの速さで飛んでいった火の玉は、燃え尽きたのか、はたまた離れすぎたのかは分からないが、空の彼方へ飛んだっきり見えなくなった。処理適当すぎない?唖然としている僕を置いて、アキナは軽快に駆けていく。僕もその後を追った。


さっきの竜人が言ったとおり、門の外では朝早くに見た集団が剣やら鎧やらを背負い、飛び立つ準備をしていた。僕たちを見つけると朝の竜人が大急ぎでこちらに近寄ってきた。


「アキナ様、お待ちしておりました!」

「こっちは不機嫌なの。見てわかるでしょ? 私を長にしようとかふざけたことを言ったのは誰?」

「私でございます」


恭しく一礼をする竜人。彼を待っていたのはアキナの無慈悲な腹パンだった。竜人は地面に膝をつき、苦悶の表情を浮かべている。


「私は長になんてならないわよ。里を取り仕切るなんて私には出来っこない。どうせ面倒なことは私に押し付けようって魂胆でしょ?お父さんを引きずり下ろすのには賛成。でも私を長にすることは出来ないってことを伝えに来たの。ちゃーんと伝えたからね?」

「は、はい……。確かに承りました……。里へのご同行は、どうなされますか?」

「もちろん行くわ。私がいないと事がうまく運ばないでしょ。変えるのは私たち、ここにいる竜人全員よ」


それを聞いた竜人はほっと溜息をついた。まだふらついているが指揮に戻るようだ。アキナはすっきりしたのか道の脇に咲いていた花を眺めている。腹パンされた竜人が可哀想だったので治療をしてあげようかな。


「大丈夫ですか?治療だったら少しはできますよ」

「本当ですか。申し訳ありませんがお願いします」


許可を取り、拳が当たったと思われる所に魔力を集め、治れと念じ続ける。


「凄いですね。痛みが引いていきます」


それから「もう大丈夫ですよ」と言われるまで僕は治療を続けた。かなり強い力で殴っていたみたいで、痛みは引いても体に少し違和感が残っているみたいだ。それでも完全に復帰した竜人はてきぱきと指示をだし、それから1時間ほどで完全に出発する準備が整った。


「それではこれから竜の里に向かいます。カズト様は背中にお乗りください」


そう言って朝の竜人は背中をこちらに向け片膝をついた。これはどう乗ればいいのかな。迷った結果普通におんぶしてもらうことにした。


「全員準備は出来ていますね? では戻りましょう、私たちの里へ!」

「私が先頭を行くわ。皆ついてきて!」


アキナが先導するみたいだ。どうやって行くのかと考えていると、竜人たちが背中から翼を出した。翼と言っても光っている。仕組みは分からないが魔力でできていることだけは分かる。魔力の翼を出した竜人たちは次から次へと空へ飛び立っていく。


「カズト様、しっかり掴まっていてくださいね」


そう言うと朝の竜人も空へ飛び上がった。普段感じることが出来ない風圧が全身を襲うがしがみついて耐える。しばらくすると、上昇しきったのか風圧が弱まった。目を開けると、雲よりも高く空を飛んでいた。限りなく青い空、眼下に広がる街と大地。清々しい風が顔を撫でる。ゲームでしか見ることの出来なかった世界が今目の前に広がっているのだ。


どれくらい飛んだのだろうか。視線のはるか遠くに山が見えてきた。針山といった見た目のする、尖った山が連なっている。


「もうすぐですよ。あれが竜の里です」

「あとどれくらいで着きますか?」

「それほどかかりませんよ。あと5分くらいですね」


あと5分くらい。ノノさんの部屋を出るときに建ててしまったフラグのこともあって、安全に帰れる気はしなかった。絶対何かが起こる予感がした。


一応確認してはいますが誤字脱字が前回の話で見つかりました。気付いた方は、よろしければご指摘お願いします!


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