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剣と魔法と銃器を武器に僕は世界に立ち向かう  作者: 雨空涼夏
一章 若き少女と竜の巫女
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予感

カズトが行った後、私は宿に戻り部屋で休んでいた。

宿屋の女の子にはカズトが遅く帰ってくることを話してある。


「何かじっとしてるのも落ち着かないわね」


時間はまだ4時くらいだ。夕食の時間まではまだ長い。


「散歩でもしてきましょう。久々に街の散策もしてみたいな」


思い立ったら即行動。さっそく準備をして下のカウンターに向かった。受付にはいつもの女の子が一生懸命仕事をしている。


「ちょっと出かけて来るわ。夕食の時間には戻って来るから」

「分かりました!お気をつけてください」


外に出たが、どこに向かおうか。こっちを当分の間拠点にするつもりなので、着替えをもう少し増やしておこうか。服屋はすぐ近くにあったはずだ。周辺を歩き回るとすぐに服屋を見つけることが出来た。


「カズトにも買いに来させないとね。この世界に来た時の服、今でも大切にしながら着てるけど、いつか着られなくなる時が来るものね」


今日だって着ていたのだ。制服、と言っていた気がする。なんでもカズトのいた世界では子どもたちに勉強を教える『学校』というものがあるらしい。ここにはそんなものはない。自由に育ち、親や知り合いの仕事を継ぐ。そういうのが当たり前だ。身寄りのない子は、鍛冶屋とか、工房に弟子として入れてもらって、そこでずっと働いていくことが多い。この国の鍛冶屋だって、今の親方はその身寄りのない子どもだったはずだ。


「まあ今は早く服を買っておきましょう」


中を見て回る。けっこう広い所なのかたくさん服がある。ワンピースとかスカートとかが目を引くけど、あまりひらひらしたものは着られない。戦うときにすぐ傷んでしまう。一度は着てみたいけど私にはきっと似合わないだろう。下着とシャツ、外套、あとは短めのズボンにベルト。服屋なのに結構何でも揃っている。お金には余裕があるので3着ずつ買っていっても大丈夫だろう。あとは何かいるだろうか。


「うう・・・欲しい・・・」


ワンピースが気になる。別に買わなくていい物なのに。真っ白な生地で作られたワンピースがすぐ近くにあるのだけど、なぜか欲しくなる。私にもよく分からないのだけど。外套やらベルトを抱えながらワンピースを見ているので、周りからチラチラと見られている。視線がちょっと痛い。


「お客様、何か商品の事でお悩みでしょうか?」


私の様子を見ていたのか店員さんが駆けつけてきた。ここは素直に話してみよう。きっと店員さんなら決断できる決め手を教えてくれるはずだ。


「あ、あの、その服が気になってて・・・」

「こちらのワンピースですか?」


首を縦に何度も振る。


「よろしければ試着もできますがいかがでしょうか?」

「し、試着できるんですか!?」

「ええ。カウンター奥に試着室がありますのでそちらで可能ですよ」

「お願いします!」


店員さんは口元を隠しながらカウンター奥の試着室に案内してくれた。

渡されたワンピースを着てみて、鏡を見てみる。うん、私が着てもあまり変わらないかも。

でもひらひらしたの、可愛いなあ。よし、決めた。買おう。


元の服に着替え直し、店員さんにワンピースとその他もろもろを渡して言った。


「これ、ください!」


3時間後、軽い足取りで私は宿に向かって歩いていた。手荷物は、服のほかにパイやカズトが食べていた串焼き、防具屋で売っていた軽くて丈夫な金属製の籠手、使い勝手のいいナイフ、ポーチ付きのベルトを2つ、などなど沢山ある。大荷物だ。

お金も気付いたら中銀貨を2枚使ってしまっていた。手元に残しておいてよかった。これからはもっと考えて使わないと。外は真っ暗とはいかないまでもかなり暗い。宿はあと数分もすれば見えてくるだろう。


ドオオオオオオオン・・・・・・


「な、なんの音?」


今の音は爆発音だろうか。少し地響きもした感じがする。早めに宿に戻ろう。何か嫌な感じがする。私は駆け足で宿に戻った。


「戻ったわよ」

「お帰りなさいませ。ご無事でなによりです。つい先ほど地鳴りのような音が聞こえましたのでお気をつけてくださいね」

「いつもありがとうね。助かってるわ」

「いえ、これが私にとっての当たり前ですから」


女の子はそう言って他の仕事をしに行ってしまった。私も部屋に戻って荷物を置いてこなきゃ。

荷物を置くと、しばらくの間暇になる。


「カズト、大丈夫かしら・・・」


心配だ。さっきの地響きのせいで、カズトのことが心配になって仕方がない。部屋の中でそわそわしていると、


ドン、ドン、ドン、ドン、ドン、ドドドン、ドドンッ


断続した爆発音が聞こえてきた。今度は聞き間違いでも何でもない、確かに聞こえた。外壁の外からだ。


「ダメッ、死んじゃだめ・・・!」

「っ!?なに、今の声・・・?」


辺りを見回すけど誰もいない。部屋の外も見てみたけど酔っ払いが騒ぐ声しか聞こえない。なんだか寒気がする。カズトは大丈夫なのだろうか。もしかしたら今カズトは何かと戦ってるんじゃないだろうか。部屋に戻り、剣と防具を身に付ける。外套を羽織り、急いでカウンターに向かい女の子を探す。いた、早く行かないと・・・!


「ア、アルカネさん、どうしたんですか!?」

「カズトを探してくる!ちゃんと戻って来るわ!」


彼女の返事も待たずに関所に向かう。すれ違う人たちが私を見て来るけどそんなの今はどうでもいい。身体強化を使って走る。私は魔力が少ないから速度を上げるのは厳しいけど、ほんの少しだったら出来る。息を切らしながら関所に着くと、兵士達が慌ただしく動き回っていた。


「どうしたの!?」

「おお、お前か!さっきの爆発音は聞こえただろう。私はこの関所を統括している兵士長だ。爆発音の原因を探るために調査隊を今編成している。私のカンだが、昼頃にここを発った青年が関わっているだろう」

「カズトのことなのね!私、嫌な予感がするの!早く行かないと、カズトが危ない気がするの!」

「分かっている。あと少しで隊員の準備が完了する。恐らく途中の草原辺りが音源だろう。おい、急げ!早くしないと被害が拡大する恐れがある!国民の安全を守ることが我々の使命だ!早急に準備を整えろ!」

「「「「「はい!」」」」」


この人の号令で慌ただしかった詰め所の動きがスムーズになる。統率力のあるリーダーは優秀な人の証だ。

号令のおかげか、ものの2分で準備が完了したみたいだ。


「全員の準備が完了しました!」

「よし、終わったな。待たせたな、これから調査隊が出発する。目標は草原地帯だ。ついてきてくれ」

「分かったわ」


兵士長と兵士数名の調査隊は草原に向かって疾走していた。鎧を着込んでいるのにとても速い。

身体強化もしているんだと思うけど、日頃から鍛錬を欠かさず行った賜物だろう。

軽装で走っているのについていくのでギリギリだ。

数分走り草原に着くと、爆発したような跡があり、あちこちで煙が上がっていた。


「こいつはひどいな・・・」


兵士長が呟く。あちこちに巨大な魔物の死骸が横たわっている。その脇には魔石が転がっているのだけどとても大きい。荷車より一回り大きい魔石がゴロゴロ転がっている。それほど強大な相手だったことがわかる。


「カズトー!どこにいるの?返事をしてー!」


大声で叫ぶけど返事は返ってこない。寒気がひどくなる。早く見つけないと。ふと、遠くに何かが引きずられたような跡が見えた。引きずられたというよりは吹き飛ばされて転がったような。その先に見えたのは赤い色。その中心には人が見える。


「カズトッ!!」


駆け寄るとそこにカズトが横たわっていた。服がボロボロに、真っ赤に染まっている。大切に着ていた制服なのに。それなのに体には外傷が見られない。どうなってるの?まずはみんなに知らせないと。


「兵士長さん!こっちにカズトが!」

「見つかったか!総員、こっちに集まれ!対象が見つかったぞ!」


ぞろぞろと兵士たちが集まってくる。衛生兵らしき人が近寄ってカズトの容体を見ている。


「カズトは大丈夫なの!?」

「外傷は見受けられませんが出血量が多すぎますね。早く治療院に運んで休ませた方が安全です」

「分かった。総員、アルトノリアへ撤収するぞ!警戒を怠らず迅速に撤収せよ!」

「「「「「はい!」」」」」

「あなたもご協力をお願いします。夜間では何が起こるかわかりません」

「分かってるわ。急いで戻りましょう」


兵士長にカズトを背負ってもらい、元来た道を戻る。運良く何事もなくアルトノリアには着くことが出来た。カズトは城の治療室に運ばれて検査された。傷一つ無く呼吸も安定しているので大丈夫だそうだが、意識がいつ回復するかどうかは分からないそうだ。今は治療院のベットで横になっている。起きるのを待っているけどなかなか目を覚ましてくれない。大丈夫だと言われたけど、心配だ。カズトの手を握り、願う。


「早く目を覚まして・・・カズト・・・」

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