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剣と魔法と銃器を武器に僕は世界に立ち向かう  作者: 雨空涼夏
一章 若き少女と竜の巫女
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特訓開始

次の日。


起きて着替えて食事をし、使いの人を待つ。特訓とは何をするのだろうか。横を見やるとアルカネも心なしかそわそわしている。


「大丈夫?」


声を掛けるとぴくっと跳ね上がり、こちらへ振り向いた。


「びっくりした。カズトか。ちょっと楽しみなのよね。今日の訓練が。私ね、誰かから習うって事が無くて。ちょっと新鮮なのよ」


それってつまり、魔物の集団と渡り合えるだけの実力を一人で身に付けた、って事?誰の助けも借りずに?つい、口から思ったことが漏れていた。


「凄いね、アルカネは」

「え、何が?」

「全部自分で身に付けたんでしょ。剣技とか、魔法とか」

「そうだけど、そんなに凄いことかな?」

「うん。とっても凄いことだよ」


僕だったらきっと無理だ。魔物と戦う時に死んでいるはずだ。凄いと思うけど、ちょっと悔しい。


「あ、来たわよ」


アルカネの指指す方向には、もはや顔なじみとなった使いの人が荷車に乗って来ていた。


城に着くと、城門で王様が仁王立ちになって待ち構えていた。


「遅いぞ!何時だと思っている!」


何時って、昨日何も言われなかったから宿で待ってたんだけど。迎えに来てくれたし、遅いわけでは無いと思うのだけれど。


「王よ、あなたが指示した時間通りに到着したのですが」


使いの人が不満そうに言う。


「お、そうだったか?」

「いい加減自分で言ったことは覚えてください。あなたは昨日時間を彼らに指示していませんでしたよね?だから私に9時にここに連れてこいと言ったのではないですか。あなたの頭は3歩歩けば忘れるヒヨコですか?だいたいあなたという人は・・・」


使いの人のお説教が始まった。

口調が厳しい。あの王様が縮こまって謝り倒している。

かれこれ10分位立っただろうか。まだお説教は続いている。さすがに見てるこっちが申し訳なく思えてくる。そろそろ止めよう。


「あの、もうそろそろ良いんじゃないですか?」

「・・・そうですね。今日はこれで終わりますが、以後は気をつけて下さい」

「はいっ!」

「それともう一つ、勝手に城外に出ないでください。近くを通る国民が怯えてしまっています。曲がりなりにも王なのですからもう少し自分が及ぼす影響を考えてください」

「はいわたしが愚かでした浅はかでしたすいませんもうしません許してくださいお願いします!」


やばい、自分が言うのもなんだけど使いの人怖い。使いの人は荷車に乗っていってしまった。


「みっともない所を見せたな。済まなかった」

「それは良いですけど、使いの人って一体誰なんですか?」


話を聞かない王様をねじ伏せる人だ。相当偉い人のはずだ。


「あいつはこの国の大臣だ。国の雑務や催事などを仕切ってる。て言うかあいつに仕事の殆どを丸投げしてる」

「自業自得じゃないですか!」


心配して損をした気分だ。可哀想とか思った気持ちを返して欲しい。


「ちゃんと全部こなすから何も言い返せないんだよ。俺はただの王で、国を仕切ってるのはほぼあいつだ」

「なんでそんな人が僕たちを迎えに来るんですか?」

「知るか。他の兵士にでもやらせりゃいいものを、何故かあいつが自分から行くんだ。訳が分からんのはこっちだ」


王様でもよく分からないらしい。


「とりあえず訓練場に行くぞ。説教のせいで無駄な時間を食っちまった」


連れて来られた訓練場はかなり広かった。伝わらないかもしれないけど、100平方メートルくらいの広さがある。ちなみにアルカネとは別々だ。アルカネは剣技の練習を他の場所で兵士達と一緒にするらしい。


「じゃあ始めるぞ。ちょっと結界を張るから待ってろ」


そう言うと王様は何かつぶやき始めた。


「魔力を用いて宣言する、死と破壊を乗り越え黄泉より目覚め続けよ!『輪廻転生』!」


その瞬間、訓練場全体が薄紫色に包まれた。


「よし、OKだ。じゃあ早速だがまずは魔法を教える。といっても下級魔法は扱えるらしいから『防壁ぼうへき』を教えよう」


聞いた感じだと防御するための魔法かな。


「まずは壁をイメージしろ」


言われたとおり、硬そうな石の壁をイメージした。すると右手から魔力が流れ、目の前に青白い2メートル四方の壁が出現した。


「ほう、詠唱も無しで魔法を扱えるのか。面白い力を持っているな」


王様はその壁をぶん殴る。ガラスが割れるような音がして青白い壁は砕け散り、粒子となって消えた。


「今のをさらに丈夫にしろ。どう丈夫にするかはお前のイメージ次第だ。しばらく試してみろ」


丈夫にする、か。硬いと言えば金属だけど、何が良いかな。とりあえず同じ魔力量で鉄をイメージしてみた。同じように目の前に青白い壁が現れる。


「どれどれ・・・」


またぶん殴る。ドン、と鈍い音がしたが壁は割られてしまった。


「今のは鉄か。発想は良いと思うが、ただ硬いだけじゃダメだぞ」


殴っただけで材質が分かるって何者ですか。聞き壁パンとか出来るんじゃないだろうか。硬いだけじゃ駄目ってどうすればいいのかな。ゴムとかどうだろう。伸びるし。ゴムのように伸びる鉄をイメージする。青白い壁が出現する。さて、どうだろう。


王様がぶん殴ると鈍い音とともに壁がへこんだ。そして殴った拳を押し返した。


「うおっ」


一緒に王様も押し返される。


「いいな。さっきの壁にゴムを混ぜたな。これでかなり丈夫になったぞ。アドバイスだが、壁の面積を小さくすればそれだけ強度が上がる。大きくすれば脆くなる。注ぐ魔力の量を増やせばどちらも堅くなる。これを覚えておけ」


「分かりました」


「次は身体強化だ。全身に魔力をみなぎらせろ」


体を流れる魔力に意識を集中させる。さっきより速く、たくさんの魔力を循環させる。


「よし、次は足が速くなるイメージをしろ」


自動車に追いつくくらいの速度をイメージする。時速60キロくらい。自然と足に魔力が集まりだした。


「よし、走れ」


「はい。ってうあああああ!?」


走り出したらものすごい勢いで体が進んだ。本当に時速60キロくらいで。止まれるわけもなく、あえなく壁に激突。


「痛ってええええ!」


当然骨が折れる。木っ端みじんだ。体全体がグチャグチャだ。これ死ぬんじゃないの?


「こりゃひどいな。一回死んだ方が早いな」

「ど、どうい、うこと、です」


上手く喋れない。多分肺に骨が刺さってるんだろう。

痛い。苦しい。


「黙ってろ。一回殺す」


王様は背中から大剣を抜くと、僕めがけて振り下ろした。



気が付くと訓練場の地面に寝転がっていた。


「よし、生き返ったな。続きやるぞ」

「え、なんで生きて・・・」


確かにさっき叩き切られたはず。体を見るが服にすら傷一つ付いていない。


「結界の効果だ。死ぬと結界を張る前の状態にリセットされる」


なにその便利な結界。


「俺が作った結界だ。兵士の特訓に必ず使っている。死を恐れていちゃあ、満足に戦えないからな」


「つまり、ケガをしたら自殺すれば良いんですか?」

「そういうことだ」


えー。死ぬのが前提ってさすがに嫌なんですが。


「どう動けば死ぬかわかるからな、戦場に行かなくても場数が踏めるんだ。もっとも、この訓練場でしか張れない結界だけどな。とりあえず、身体強化はそんな感じだ。魔力を集めて、ステータスを強化できる。上手く調整して使え」


とんでもない教え方だが、確かにわかった。防壁と身体強化。ちゃんと使えば強くなれる。


「つーわけでテストだ。良ーく聞け」


どんなテストだろうと思い聞くと、王様の口から出たテストは、とち狂ったテストだった。


「俺は一切攻撃しない。おまえの力と今教えた技術で俺を一回殺して見せろ」


・・・はい?今なんと?


「全力で殺しに来い。そのほうが最っっ高に楽しいからなあ!」


何故か口調が変わっている。


「どういうことですか!訳が分からないです!」


「そのまんまだ!さっさと殺しに来い!強くなりたいんだろう?だったら実戦あるのみだろう?ハハハハハハ!」


うわあ…。完全にスイッチ入っちゃってるよこれ。

やるしかないか。


王様、工藤楓。正体は戦闘大好き狂戦士バーサーカー

叩きつけられた挑戦状に僕は挑む。

感想、アドバイス等お待ちしております。

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