宿屋での休息
1ヶ月越しの投稿。
中に入るとバンダナを頭につけた少女が出迎えてくれた。アルカネを見つけるとこちらに向かって走ってきた。
「いらっしゃいませ!宿泊でしょうか?」
「ええ。部屋は開いているかしら?」
「少々お待ちください。確認してきます」
少女は店の奥に走って行き、数秒で戻ってきた。
「申し訳ありません。ただいま一人部屋が空いて無い状態です。二人部屋ならご提供出来ますがそれでもよろしいでしょうか?」
「構わないわ。二人部屋でお願い」
「何日お泊まりになりますか?」
「とりあえず1ヶ月かしら」
「1泊小銅貨50枚なので、30日で中銅貨15枚になります」
アルカネは袋を取り出すと中銅貨15枚を少女に渡した。
「はい。ちゃんとある?」
「大丈夫です!たしかに頂きました。それではお部屋にご案内しますね」
・・・・・・あれ?二人部屋でいいの?一緒の部屋?
「ちょっとアルカネ、二人部屋で良かったの?普通男女別に泊まるものだと思うんだけど」
「大丈夫よ。部屋を2つ借りると高いし、カズトとなら私は平気よ」
「分かったよ」
本人がいいらしいので気にしないことにした。少女に連れられて二人部屋のある二階に向かうと、沢山の人がごった返していた。
「人が多いね」
「ここの宿は人気なのよ。サービスが行き届いているし、料理もおいしいの。代わりに料金は他の宿と比べて高いんだけどね」
「お客様。お部屋に到着しました」
どうやら部屋に着いたらしい。
部屋の中はベットが2つと、引き出しのついたドレッサーが備え付けてあった。荷物を整理していると一階から少女の声が聞こえてきた。
「ご夕食の時間でーす!お客様は一階の食堂にお越し下さーい!」
「アルカネ、夕食だって」
「そうね。下に行きましょうか」
食堂は想像以上の広さだった。ショッピングセンターのフードコート位の広さで、食べたかったものを好きなだけ食べられるバイキング形式の夕食だ。
「お客様ー!少し説明があるのでお待ちください」
僕とアルカネが呼び止められる。
「説明って何かな?」
「これからの時間についてです」
少女は息を吸い込むと喋り始めた。
「食事の時間は1時間となっております。それから1時間後は入浴の時間になります。女性、男性の順で1時間ずつです。こちらでも時間の報告はしますので、時間をお間違えのないようお願いいたします」
少女は説明を終えるとふう、と一息つき、「ごゆっくりどうぞ」と言って去っていった。
僕が呆気にとられているとアルカネが僕の手をつかみ歩き出した。
「ほらカズト、早く食べましょ。時間が無くなっちゃうわ」
「うん、そうだね」
アルカネに連れられて僕は料理を取りに行ったのだが、その中に見知った食材を見つけた。米だ。ご飯があったのだ。僕はご飯に駆け寄り、持っていた器にこれでもかというくらい山盛りにご飯をよそった。おかずはサラダとソーセージをいくつか取り、アルカネのところに戻った。
アルカネはたくさんのデザートをテーブルに並べていた。自分の食器を置く場所もない。
「アルカネ、ちょっとテーブル空けてくれない?食器が置けないんだけど」
「あ、ほへん、ひあははふへふ」
アルカネは口一杯にケーキを頬張りながら果物やパンケーキを脇に寄せた。
「ごめんなさい。全部美味しそうで持ってきちゃったの」
「別にいいけど、全部食べられるの?」
「これくらい全部食べられるわよ」
この小柄な体のどこに、テーブルいっぱいのデザートが入るのだろうか。みるみるうちにデザートがアルカネの中に吸い込まれていく。10分ほどでデザートはテーブルから姿を消した。
「ふー。お腹いっぱい。私は先に部屋に戻ってるわ。カズトも時間には遅れないようにね」
アルカネは食器を片づけて部屋に戻っていった。
よく食べるなあ。体重とかどうなってるんだろうか?僕もさっさと食べよう。残ったご飯を口に詰め込み、部屋に向かった。
「女性のお客様ー!ご入浴の時間でーす!」
部屋に向かう途中、ちょうど少女の声が宿に響いた。




