あかなめ
「味見しゅるんじゃなかった」
見た目にそぐわない舌足らずな発音でつぶやきながら、女は両手で持ち上げた桶をじっと見つめた。着物の襟から伸びる真っ白なうなじとまとめ上げた黒髪の生えぎわは震え、丸めた背中が微かに泣いている。
胸中に渦巻くのは、ばあさののりが旨いと言った雀への恨みか、二度と味わうことのできない目の前の好物への焦がれる思いか。
「ひもじい」
頬を伝う涙も、もう二度と舐め取ることはできない。
おしまい
ふらっと、瀬川です。
自ブログに発表したことのある旧作品です。
この作品もそうですが、本文が200文字以下の作品はここに掲載はできないということを改めて思い知りました。これは数文字足してなんとかかんとか。