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死神の鎌、捕食者の剣  作者: 神奈
7/12

翡翠と莉亜は…

「莉亜を奪いにきた」

彼は確かにそういった。

皆、惚けている。

でも、私だけは違った。

ゆったりとした足取りで、翡翠の元へ。

「行こう、莉亜」

彼は手を差し伸べた。

「話し合いましょう」

しかし私は、その手を取らなかった。

「莉亜は、殺したこと無いんだろ?なら、まだ間に合う。表に戻るんだ」

その言葉に、私はとびっきりの笑顔で返した。

「嫌だ」

だって、表は退屈すぎる。

「ん、そうそう」

三影が口を挟んだ。

「明日の夕方、一緒に仕事しよ、莉亜ちゃん」

「おい、それ以上は莉亜に話しかけるな死神ッ!」

翡翠はそう叫んだ。

「はい、します」

私は三影にそう言った。

「莉亜!」

翡翠の叫びは、少し痛々しかった。

それでも私は、冷酷に告げる。

「私は表に戻らないよ。何を言われようと、絶対に」

いつの間にか私の中に戻っていたセシルが、嗤う。

煩いなぁ、と心の中で毒付いた。

「何…言って」

私は自分の能力で、記憶をすり替えて初対面ということにしようと試みた。

でも、効かなかった。

私は大きく目を見開く。

私はセシルにそれを訊いた。

「何でか知らねぇが、彼奴には能力は効かない。ま、悪魔の能力は別だけどな!」

悪魔の能力だなんて初耳だぞ。

「てことで、バイバァイ」

三影は翡翠にそう言った。

だが、翡翠が帰る様子はない。

彼は強引に私の手を掴む。

「強行手段は使いたく無かったんだが」

今迄とは打って変わり、その声は氷河のように冷たかった。

「嫌っ、離して!」

痛い。締め付けられる。

「やめろ」

ハルの声。心なしか、震えた声に聞こえた。

翡翠に隙ができたのを見計らい、私は翡翠の鳩尾を思い切り殴った。

「ぐっ…」

やってから、ちょっとだけ後悔する。

いや、何というか…ごめん。うん。

やり過ぎた。

私を掴む手が緩んだので、ハルの背後に逃げた。

翡翠は俯いていた。

「俺は……よ」

「え?」

私は聞き返した。上手く聞き取れなかった。

「俺は悪者かよ!?」

悲痛、だった。

「そうやって、俺が莉亜を攫おうとしてる、みたいに…元のように、生活してほしいだけ、なのに」

それって。

「私、翡翠と会ったことある?」

そうにしか、聞こえない。

「もう、3年だもんな。覚えてないよな」

肯定。でも私は、思い出せない。

「もう、いい」

そう言い残し、帰っていった。

力無く歩く、その姿は今にも壊れそう、で。

それが、翡翠の心の闇。

悪者扱いされることが、前にもあったんだろう。

彼はそれに、酷く傷付いた。

そりゃもう、トラウマになるくらい。

閉まったドアに何も言えず、私は立ち尽くした。

でも。

「─────闇」

私はそう呟いた。

覚悟を決め、翡翠を追い掛ける。

外は暗く、星が瞬いていた。

貴方の本心は、私が見抜く。

三影やハルの声が聞こえたが、知らんぷり。

「翡翠!」

私はその背中に叫んだ。

彼は驚いて振り返る。

「それが、貴方の本心」

私は聞こえるか聞こえないかの声でそう言った。

「莉亜…?」

私は彼に対峙した。

「貴方は、悪者なんかじゃない」

だって、貴方は。

「赤の他人の私を、本気で心配してくれてる」

「赤の他人じゃないッ!」

いきなりに翡翠が叫ぶ。

真っ直ぐに、こちらを見て。

「俺たちは、3年前に会ってる」

彼の頰を、涙が伝った。

「それは」

私は思い出せない。

「3年前の、何月?」

「─────五月」

思い出せなくて、当然。

「私は、その一ヶ月後、事故に遭ったの。そして、記憶を失ってる」

この能力に気付いたのは、その後。

記憶の代わりに、能力を持った。

「ごめん、覚えてられなくて。あと……痛かったでしょ?」

苦笑気味に問う。

彼も少しだけ、微笑んだ。

「翡翠は前にも善意でしたことで、悪者扱いされたこと、あるんでしょ」

問いかけではなく、確信を持って告げた。

翡翠の顔から笑みが消え、目を見開いた。

「辛かったんだよね。トラウマになるくらい」

「何もわからない癖に」

刺々しく吐き出された言葉。

「少しは分かるつもりだよ」

儚げに、微笑んでみせた。

「空回ってばかりなんだよ、表って。でも裏なら、やってける気がする。だから…」

「わかった。莉亜がそれでいいなら、いい」

その時みせた笑顔に、不本意ながらときめいた。

「絶対死ぬなよ」

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