三影の本心
「あの……」
説明の後、私は少し躊躇いがちに切り出す。
「ん?」
「生命操作って、人を生き返らせることも出来るんですか…?」
予想通り、三影は頷いた。
「えと、じゃあ…その……」
言葉が見つからず、口籠る。
「つかぬことを聞きますが、人を生き返らせたこと、あるんですか?」
かんがえるような仕草を見せてから、三影は答えた。
「使おうとしたけど、使えなかった」
「それは、どういう……?」
思いも寄らない言葉に、私は聞き返してしまう。
「24時間以内に死んだ人にしか、使えないらしいんだ。俺はそれである人を生き返らせようとしたけど、無理だった」
寂しさの混じった笑顔。切なくなった。
「ある人って…?…」
これ以上聞いちゃ駄目だ。そう思っているのに、気になってきいてしまう。
「今までの人生で、唯一俺の愛した女性」
辛い筈なのに、三影は笑って告げる。
その笑顔が痛々しくて、思わず三影を抱き締めた。
「莉亜ちゃん?」
その声は、ほんの少しだけ震えていた。
「なんで泣かないんですか……?言うのも辛い筈なのに……なんで、そうやって笑顔で強がるんですか…?」
貼り付けた笑顔の裏に隠れた、触れただけでも壊れてしまいそうなくらい弱々しい本心。
辛ければ泣けばいい。
無理して笑う必要なんて無い。
なのに何故この人は……?
私の目から、涙が溢れた。
「強がりなんかじゃないよ、莉亜ちゃん。何か勘違いして……」
三影は否定する。強がりではないと。
「強がってるじゃないですか!!私には分か」
「分かる訳ないっ!!」
初めて声を荒げた。
三影さんを抱き締めた私の肩に、雫が落ちる。
「三影、泣いてる」
ずっと黙っていたハルさんが指摘する。
「もう、泣かないって決めたのに……絶対泣かないって……」
抱き締めた腕を解き、真っ直ぐに瞳を見つめる。
「泣いていいんですよ。辛かったら、いつでも。私がまた、抱き締めてあげます」
半分くらい冗談のつもりで、私は言う。
「莉亜ちゃんの能力、本心も見抜けるのぉ?」
声の震えが少し収まっている。
私は笑って否定した。
「流石にそこまでは無理ですよ。でも……よく、言われるんです。莉亜は何で知られたくない本心を見透かすんだ、って」
そのせいで、友達は少なかった。
秘めた本心を暴かれるから、と。
「にゃは、じゃあ特技?」
「かもしれませんね」
三影は、優しい笑顔を作った。
「……あー、ん、その……あ、ありがと」
俯き気味に告げられる、お礼の言葉。
耳まで真っ赤になってる。
照れてるのかな?ちょっと可愛いかも。
「何がですか?」
悪戯に訊く。
「本心、見抜いてくれて。抱き締めてくれて。泣いていいって言ってくれて。…ありがと」
ぎゅっと、今度は私が抱き締められる。
「え、ちょっ……み、三影さん!?」
私は一瞬で赤くなる。
「悪戯のお返しぃー」
気付いてたのかー!
「ハルの奴、過去に囚われてるんだ。無口なのはそのせい。君の特技で過去から解放してやって?」
三影さんは、私の耳元で囁いた。
私はそっと頷いた。
盗み見たハルさんの顔は、強張っているように見えた。




