真面目な話 2
少しだけ沈黙が流れる。
「あー…あんまり深刻に捉えなくても…ほら、まあ…あれだよ、その…って熱っ!?コーヒー、コーヒーのカップの底が手の甲にって熱い熱いってばぁぁあ!?」
「恐がらせない」
セオフィラスさんは、赤くなった手の甲をおしぼりで冷やしている。
若干涙目だ。
「本当の緊急事態にしか使わないでってだけよ。まあ、できれば何があっても使わないに越したことは無いけれど。一番ラッキーな結末は記憶を取り戻し、能力を手放すこと。アンラッキーなのはガス欠で死ぬこと。それだけ頭に入れておいて」
私はこくりと頷いた。
「このこと、三影とハルに教えなくていいんですか?」
「一応、余り使うなとは言ってるよ。ただ、二人には嫌われてるから耳を貸しているのかどうかは分からないけど」
疑問に思う。何故嫌われているのか。
「どうして嫌われてるんですか?」
「最初に会ったときに、ちょっとね」
セオフィラスさんは笑って誤魔化した。
誤魔化しきれてはいないが。
「多分…多分、ある程度忠告は聞いてると思いますよ。そんなに使ってるとこ、見たことないですし」
「ある程度、か。不安は残るけど、しばらくは大丈夫かな」
セオフィラスさんは安堵したように笑った。
「なるべく口外しないように!これはまだ国家機密レベルの未完成な研究だしねーって痛い痛いぃぃぃ!?足、足ぃぃぃい!今の何処に怒る要素がってあ痛ぁあぁ!?」
テーブルの下を盗み見ると、シャルロットさんが器用に足をつかって、セオフィラスさんの足を曲がらない筈の方向へ曲げていた。
どうなってるんだろうアレ。
「大声で言わない」
無表情にセオフィラスさんを痛めつけるのはすごい。
「っと。あんまり莉亜を借りてたら怖ーい飼い主さんに怒られそうだ。そろそろお開きにしよっか」
飼い主さん、とは十中八九あの二人だろう。
なんだか私がペットみたいで納得がいかないが、不満を堪えた。
「そうね。道、わかる?」
「あ、はい。大丈夫です、シャルロットさん」
シャルロットさんは微笑した。
「シャルロットさん、じゃなくてシャルでいいわよ。セオもセオでいいから」
シャルロットさん……じゃなくてシャル…さんは、優しい。
セオさん以外には。
席を立ち、ふと気づく。
「あ、お金…」
「最初にシャルが言ってたでしよ?奢るよ」
お言葉に甘えることにした。第一今はお金持ってないわけだし。
二人と店の前で別れ、家までの道を歩んだ。




