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死神の鎌、捕食者の剣  作者: 神奈
1/12

高校大量殺戮現場

私は今、全力疾走している。

理由は学校に遅刻したから。

孤児院を卒業してから一人暮らしなので、起こしてくれる人がいない。

なので、寝坊した。

高校の前にくると、塀を飛び越えて侵入。

そこで異変に気づく。

高校の全ての窓が、紅く染まっている。

ぞわりと、悪寒がした。

護身用に持っていたバタフライナイフを開き、そっと教室に向かう。

どこの教室の窓も紅い。

三階の自分の教室に近付くにつれ、にゃはははは、という笑い声が聞こえてきた。

しんとした廊下に響き渡る、不気味な声。

自分の教室から笑い声がする。

大きく深呼吸して、扉を開く。

途端、声が止んだ。

まず目に飛び込んできたのは、真っ赤になって横たわる私のクラスメイト。

死んでるの?

血の海と化した教室で、1人佇む少年。

紅く染まった白銀の髪、血を吸ったように紅い瞳。

彼には紅がよく似合う。

私よりも年上っぽい。

彼の手には死神のような大きい鎌が握られていた。

殺される。

「君、なぁんで笑ってるの?」

にんまりと笑いながら問われる。

私が笑っている?この死体の山を目にして?

私は自分の顔に触れる。

確かに彼の言うように、笑っていた。

「あ、れ?なん…で、笑って………」

途切れ途切れに口から漏れる疑問。

「僕が思うに君は狂っているんじゃあないかな?」

彼は疑問に答えた。

「狂ってるの、かな」

さっきよりはスムーズに言う。

「にゃはははは、きっとそうだよ。あと君、警察呼ばれてるかもだから逃げたら?ここにいたら犯人だと思われる」

もう、遅い。パトカーのサイレンの音が聞こえてきた。

「どうしよ?」

解決策が思いつかない。

「にゃは、僕が逃がしたげる」

少年は一歩ずつ、ゆっくりと向かってくる。

そして鎌を振り上げた。

逃げないと、と思うころには私は右肩から左脇腹にかけて、ざくりと斬られた。

鮮血が溢れ出す。

意識が朦朧とする。

少年が何か言ったが聞き取れなかった。

私は意識を手放した。

目が覚めると、病室にいた。

上半身を起こそうと試みるが、斬られた所に激痛が走り、断念する。

腕に刺さった点滴の針を、ぼんやりと眺めた。

私は、生きている。

少年は手加減したのだろう。

しかし、何故?

そして何故、みんな殺されていたんだ?

考えても疑問が増える一方なので、やめる。

スライドドアが開く。

そこから男の人が出てきた。

「目を覚ましたのか…よかった」

男はふっと微笑んだ。

男にしては少し長い髪を掻き上げる動作が私の胸を高鳴らせた。

顔立ちが、整っている。

「誰、ですか?」

目だけを向けて問う。

「神奈川県警の伊藤だ。空坂(からさか)莉亜(りあ)、だな?」

少し戸惑いながらもゆっくりと頷く。

犯人だと思われた?

「あの、私犯人じゃありません」

伊藤さんは大丈夫と言うように頷いた。

「知っている」

ほっと溜息をつく。

よかった。

でも気は抜けない。

「質問してもいいですか?」

疑問を解決しておこう。

伊藤さんは頷く。

「何が、あったんですか?」

「君の高校の生徒全員が殺された」

少し辛そうに答えてくれた。

生存者は私だけのようだ。

「何故?」

伊藤さんは首を横に振る。

わからないようだ。

「犯人は?捕まったんですか?」

「全力を挙げて調査している」

私は死神の鎌を持った少年を思い出す。

まだ捕まってないのか。

「空坂さん、犯人を見てないか?無理に思い出さないでいいが…」

正直に答えるべきか迷う。

言えば私は死神に殺されるのだろうか?

「覚えてません」

私は無意識にそう答えた。

理由はわからない。

「そうか、ならいい」

あの、もうひとついいですか?と私は切り出す。

伊藤さんが肯定したので質問する。

「しにが……犯人は私を殺しにきますか?」

死神と言いかけてしまったが、伊藤さんはさして気にしていない様子。

「わからない」

そうですか、と小さく呟いた。

しかし、おそらく答えはNOだ。

彼は私をわざと生かした。根拠はそれで十分。

問題はこれから彼がどうするかだ。

まあ、殺しにくる可能性が無いなら別に構わない。

「他に質問は?」

「………………ないです」

また疑問が出てきたら聞こう。

「俺から質問だ。何故、空坂さんは他の人より傷つけられた時刻が遅い?」

「……時刻が分かるんですか?」

死亡時刻が判明するのは納得できるが、私が怪我をした時刻が分かるのは何故?

「重症ながらも生きていたから。あと、斬られたにしてはまだ流れた血の量が少なかった」

伊藤さんは答えてくれた。

「さっきの質問に答えてくれ」

遅刻したから、と正直に答える。

暫く質問攻めにされたが、答えられないのが殆どだった。

伊藤さんが帰ると、もう空は暗くなっていた。

伊藤さんが行ったあと、すぐに医師が来て診察してくれた。

幸い身体に異常はなかった。

目が覚める。

いつのまに私は寝ていたらしい。

何かが手に触れている。

見ると、鶴の折り紙だった。

羽の部分に字が書いている。

『こんにちわ。傷が治ったら迎えにいくよ。』

短い文章。

迎えにくるのか、あの少年。

でも、楽しそうだ。

私は今までの日々に退屈し、非日常を求めていたから。

早く傷、治らないかな。

その日は実に暇だった。

見舞いにくるような人は無いし、伊藤さんは来ないし。

挙句、傷の痛みが酷く立ち上がれない。

ぼんやりと天井を眺めた。

にしても病院食は嫌だ。

味が薄い。ラーメン食べたい。

ぼぉっと過ごしている間に夜になったので眠る。

これがあと何週間続くんだろう。

暇。暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇。

朝、目覚めるとまた折り鶴が。

今度は羽に『開いて』と書いていた。

だから、開いてみる。

『気が変わった。君も暇でしょ?今日の夜9時、準備しといて』

気が変わりやすいのか、それとも私が暇なのを見越してか。

どちらでもいい。夜が楽しみだ。

ウキウキしながら病院食を口に運んだ。

目を開く。

ここは、どこだろう。

私は誰かに抱きかかえられている。

私を抱きかかえている人は家の屋根から屋根へ、飛び移りながら進んでいた。

抵抗しようとすると傷が痛むので、できない。

意識がはっきりしない。

まだ明るい。ということは彼ではない。

少し鮮明になった意識で状況を確認する。

病院食を一口食べてからの記憶がない。

睡眠薬でも盛られたか。

「ん、気付いた?」

男の子の声。

「誰?」

「俺は翡翠(ひすい)。君は空坂莉亜だよな?」

翡翠は私に危害を加える気はない。

そう判断して頷く。

「莉亜を斬ったのは殺し屋。通り名は死神だ。俺は折り鶴の手紙を全部見た」

いつのまに?私はずっといたのに。

「死神は莉亜を狙ってる。俺は死神から莉亜を助けに来た」

何故、何の関係もない私を?

揺れるたびに傷が痛み、聞けない。

少し呻くと翡翠は心配そうに私の顔を覗き込んだ。

それからは揺れが減る。

「どうして、見ず知らずの私を助けるの?」

「死神が大っ嫌いだから」

だから翡翠は死神の思い通りにさせたくない、ということだろう。

暫く黙って運ばれると、翡翠はマンション10階のベランダに着地した。

「今、何時?」

降ろされた私は口を開く。

少し陽が傾いている。

「5時くらいだと思う」

そう答えられた時、私はまた誰かに抱きかかえられる。

今度は一体なんだ。

「にゃははははははははははははっ!」

この笑い声。連想するのはあの日出会った紅い死神。

私は声の主に目を向ける。ビンゴだ。

だが今日はこの前のように紅くはない。

白銀の髪には血が一滴も着いていない。

「っ!死神!!!」

翡翠が大声で叫ぶ。

「にゃはは、ざぁんねぇん。この子は僕のもの☆」

いつそんなことを言っていただろうか。

死神は私と共にベランダから飛び降りる。

ここ、10階なんだけど。

そんなこともろともせず見事に着地。

どうなっているんだろう。

「にゃは、君、怪我大丈夫?僕が斬ったんだけどさ」

「大丈夫じゃありません」

大丈夫な訳ないだろう。

死神は罪悪感の欠片も無く謝った。

「えと、お名前は?私は莉亜です」

まさか死神という名前では無いよね?

三影(みかげ)だよ、りあちゃん」

早速馴れ馴れしくりあちゃんと呼ぶ三影。

車に乗り込んで、ようやく私を降ろした。

車を走らす三影にいう。

「何処行くんですか?」

今更何処に行こうと構わないが一応訪ねる。

「僕の家だよぉ」

「え、死神さんに家なんてあるんですか」

なんか自由な人だから、そこら辺のホテルとか適当に泊まってると思ってた。

「ひっどぉいなぁ。まあ、友達の家だけどねぇー。あと、死神じゃなくて名前教えたんだから三影ってよんでよ」

なにが僕の家、だ。

正しくは僕の友達の家、だろうが。

「あの、三影さん。翡翠とはどんな関係なんですか?」

相当翡翠に嫌われていたようだけど、三影はそうでもなさそうだ。

「獲物と狩人の関係☆」

…どんな関係だ?

翡翠が狩人の方かな。なんとなく。

後で詳しく聞こう。

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