第八話
なんとか無事に目的の食材を調達できた俺たちは雪山を下山してテブルに戻り店に届けると、夕食に丁度良い時間帯になっていたので届けたついでにそのまま三人で夕食を食べる事にしたのだった。
「いやぁ、なんか長い一日だったねぇ」
大きく伸びをしながらユウコが言う。
「そうだね、アタシなんか今までで一番移動したかも知れない」
サオリもユウコと同じように両手を伸ばしながら答える。
「いやほんと、申し訳ない。これっきりになるように努力するよ」
俺はサオリの方を向きながら手を合わせて頭を下げた。
それを見てサオリはあたふたと両手をぶんぶん振りながら
「あ、いや気にしないでよ。こうして無事に帰って来られたし。ユウコとトモがしっかり守ってくれたしさ。そんな風にトモが気に病む必要はないよ?」
それに合わせるようにユウコも伸びをしたまま
「そーそー、そうやっていつまでも気にし続けるの、トモの悪い癖だよ?」
全くもってその通りなのだがどうも直そうとしても直せないんだよな、などと考えているとそれぞれが注文したメニューをトレイに載せてこちらに歩いてくるウェイトレスが目に入った。
「そうだな、夕飯食べて気持ちを入れ替えよう」
ウェイトレスがそれぞれのメニューをテーブルに並べ終えて去っていくと同時に三人はそれぞれのメニューに手を付けた。
結構な量があった各々のメニューも山登りをして来た三人にとっては丁度良い位だったようで女性のサオリ、ユウコもあっという間に平らげてしまった。
「ふう、美味しかったぁ。ここ気に入ったかも!サオリはどう?」
話を振られたサオリも満足げな顔で
「うん、アタシも気に入った。この街に居座るつもりだしちょっと得した気分」
「良かったね!サオリ。でも残念だなぁ、サオリの片手剣捌き中々筋が良かったから私のギルド入ってくれたりしたら良いかなって思ってたんだけど」
寂しそうな表情で夜空を見上げるユウコ。それを見て申し訳無さそうにサオリが口を開く。
「ごめんね、ユウコ。アタシやっぱり死ぬのが怖くて今日は二人が守ってくれたから良かったけどもし攻略に参加するようになったりしたらきっと、一人でどうにかしなきゃならない時があると思うんだけどそんな時アタシはきっと怖くて足が震えて動けなくなってしまうと思うの、だからごめんなさい」
「ううん、気にしないでサオリ。私のわがままだから、でも時々こうやってご飯食べたりお茶したりしようね?」
その言葉を聞いてサオリは嬉しそうに微笑むと
「もちろん、この街の美味しい店を制覇しておくわ」
「あはは!それは楽しみね!」
女の子同士の会話に混ざる事などそんなトークスキルを持ってるわけもない俺はただただ視線をあっちこっちに流し街の風景やら店の中のプレイヤー達を眺めるしかなかった。ユウコという美少女は勿論、そこに十分に可愛いサオリと一つのテーブルを囲んでいるこの状況は他の男性プレイヤーの視線を一身に受ける事になり、この視線が例えばレーザーなどの飛び道具だとしたら俺の身体はきっと今頃蜂の巣になっているだろうなぁ等と他愛ない想像を続けていると
「あ、そうだサオリって今日泊まる宿ってまだ決めてないよね?」
「ええ、まだ決まってないわ。これから探しに行くところ」
「じゃあさ、私の宿に一緒に泊まらない?」
「良いの?他のギルドメンバーの人たちの邪魔にならない?」
申し訳無さそうにサオリは答えるがユウコは気にする様子は無く
「うん、大丈夫だよ。まだ前のギルメン全員と合流出来てないし新メンバーも二人くらいだし大体予定はサオリ達と合流する前に決めてあるからあとは宿に戻って寝るだけだから」
「そうなの?じゃあそうさせてもらおうかな」
サオリの返事を聞いた途端、ユウコがサオリの手を取ってぶんぶん振りながら
「やったぁ!それじゃさっそく宿に案内するよ。それじゃトモ、明日の朝8時に私たちのギルド出発するんだけどその時メールするから見送り来てね!」
「ああ、分かったよ。あんまり夜更かしするなよ?明日朝起こしに行くとか嫌だからな」
「分かってるって!じゃ明日!」
そう言ってサオリの手を取ってユウコは夜の街中を駆け出して行った。
「俺も宿探すか・・・・・・ん、待てよ会計・・・・・・」
こうして俺はバイトクエスト第二段を受注するのだった。
はい、また一ヶ月です。本当にすいません。そしてまた日常パートです。勢いとノリの第八話。意見感想待ってます。