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ヘル・オンライン  作者: 遠
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第五話

 なんとかエリドを退けた俺とサオリは貸し出し中の馬ライバックに乗って再び北上している所だった。アップデート開始からまだ二日であれだけ斧スキルを使えるなんてあのアナウンスを聞いても全く落ち込まずすぐさまスキルを習得し直して反復練習で熟練度を上げないとああはならないはずだよなぁ。なんか納得してしまう自分がいるのに笑ってしまう。

「ハハ、あいつが落ち込んでるところなんて想像出来ないな」

俺の笑い声に反応して後ろから問いかけてくる。

「何笑ってんの?」

「さっき俺と戦ったエリドってやつの事なんだけど、まだアップデート開始から二日目だって言うのにもうあれだけ斧スキルを使いこなした上に既にギルドっぽい組織を作りつつあるからさ、他のプレイヤーみたいに落ち込んだりしないで新しくこのデスゲームが始まった途端にスキルを覚えなおして鍛え始めたんだろうなぁって思い浮かべたワケ」

それを聞いたサオリも苦笑いを浮かべて同意を示す。

「確かにね、あれが落ち込んでる所なんて想像出来ないわね」

「だろ?それこそ『なんだ、まだ続くのか。じゃあ鍛え直すか』みたいな軽いノリでこの状況を受け入れてしまってる気がするんだよ」

 なんだかさっきの一戦から俺は、あのエリドとは戦いたくはない代わりに会ってゆっくり話がしてみたい気持ちが自分の中に出来始めているのを感じる。どうもただの悪人には思えない。本当にただ一度だけ戦っただけの相手なのにそう思えてしまう。

「そうね、ワタシもそんな気がする。変ね、命を取られかけた相手なのに憎めないなんて」

「それだけ、あいつが変なんだと思うよ。さて、もっと飛ばすからちゃんと掴まっててね」

サオリにそう声をかけると返事の代わりに腹に回されたサオリの両手に今までより力が入るのを感じながらライバックをさらに加速させようとした時、視界の左上にメール着信を知らせる音が鳴ったのでライバックの勢いはそのままに左手でメールを開くと相手は勿論幼馴染のユウコからだった。

「よくこの状態でメールなんて読めるね」

他人には見えないようになっているメニュー画面だけど手の動きとかで大まかに何を操作しているかわかったのだろうサオリが話した。

「それはまぁ、サオリと違って騎乗スキル上げてるからかな」

「いやぁこの揺れは関係無いと思うんだけど・・・・・・」

「それは置いといて・・・・・・、ユウコも北のエリアを目指してるのか、丁度良い次の街で合流しようって言ってるからその時サオリに紹介するよ」

「彼女を?」

からかう調子の声でサオリが問い返す。

「だから違うって!」

ここで俺はちょっとしたイジワルをする事を決意し、ここから更にライバックの速度を上げるのだった。ライバックはチラっと目線を俺に向けると

『もっと速く出来るぜ?』

とドヤ顔で言ってきてる気がしたが、ひとまずもう一段階上げるに留める事にした。

「ちょ、ちょっとまだスピード上げるの!?」

「だってほら!早く次の街に着かないと暗くなって夜行性のモンスターに襲われるかもしれないしさ!」

「それにしたって飛ばしすぎーーー!!」

締め付けをさらに強くしつつサオリが声を張り上げる。

スピードを上げた本人が言う事ではないけど、確かにこれは俺でもやりすぎかな?と思わないでもない、しかしあまりにも俺がユウコの名を出すイコール彼女の話の流れにウンザリだったのでユウコと対面させてこの疑いを晴らすためにも早く次の街に着きたいという気持ちが勝っていた。

 しばらく走り続けていると、遠くに街らしき物が見えてきた。ユウコのメールに書いてあった街のはず、名前は確かテブル。どんな街なんだろうか、食べ物が美味いと良いんだけどなぁ。あとは新しい暴れ馬情報とかも仕入れなくては!ある種の使命感に燃えていると

「あそこにアンタの彼女が待ってるのわけね」

「だから、彼女じゃないって!幼馴染だって・・・・・・もう何回目だよこのやり取り」

「さぁ?アンタはそう思っていても相手がそうは思ってないってパターンもあると思うんだけどね」

「あるわけねぇだろ、実際にあいつを見たら自分の考えの間違いを思い知らされるからな」

全くいい加減にして欲しいもんだ、俺とユウコは幼馴染以外の何者でもないのだ。俺はそう思っててもあいつがそうは思ってないパターンだって?笑わせるな、断言しようあいつが俺を好きなはずがない。これは絶対だ。信じてないけど神様に誓ったって良いね。

 と心の中でどうでもいいこと考えているとどんどん街が近づいてくる。さてさてサオリはユウコを見てどんなリアクションをするのか楽しみですなぁ。

「この街の大通りにあるオープンカフェで待ってるってさ」

「分かったわ、早く行きましょ」

ゲートを通ってメンバー募集をしている集団に奇異の目で見られつつもそれをさらっと受け流しライバックに乗ったまま街の大通りを目指す。通りに出たら出たでゲート付近とは比べ物にならないくらい無遠慮な目線が俺に向けられるが全く気にしない。もう一年半近くこの視線に晒されてきたんだ、どうって事はない。気になるのは後ろに乗ってるサオリだったが

「気にしなくていいんだから、アンタはアンタのやりたい様にやってきたんだ。それを他の人たちにどうこう言われる筋合いはないんだから」

自分の事など考えておらず俺の事を心配してしまっていた。全くどうしてこうも俺の周りはお人よしが多いんだろう。

「うん、分かってるよ。それより、オープンカフェって・・・・・・あ、居た居たあそこだ」

大通りに面したお洒落なオープンカフェ、『リア充御用達』とでも看板が立っていそうなその場所に我が幼馴染様が両手をブンブン振って「こっちだよートモー!」と子供っぽさ全開で俺をお呼びになっておられたのであった。


遅すぎるけど、あけましておめでとうございます。本当は去年の年末前くらいに上げるつもりだったんだけどなんだかんだで年を越してしまい今になりました。数少ないお気に入り登録されている方本当に申し訳ない。意見感想待ってます。

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