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ヘル・オンライン  作者: 遠
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第三話

 サオリと別れてから俺は街外れの馬車貸し出しの店に向かっていた。クエストをクリアして無料で貸し出し出来る様になった暴れ馬のライバックを貸し出してもらうためだ。

「まだ、時間あるし来る途中に買っておいた装備とかの整頓でもしておくか」

メニュー画面を開き、装備欄から格安で手に入れてきたレザーグローブと薄手のローブをクリックすると俺の体が白い光のエフェクトに包まれて、光が消えると今選択した装備が俺の身を包んでいた。フィールドに出る事自体は前の時でも何回か経験したことはあるが慣れるものでは無かった。いつモンスターやらプレイヤーキラーを楽しむ違反プレイヤーが現れるのかと怯えながら移動しなければならないのだ。

「騎乗スキルと調教テイムスキルを手に入れる前はホントユウコ様々だったなぁ」

言葉通り騎乗スキルやら移動に特化したスキルを手に入れる前はユウコに同行してもらってなんとか街を移動していたのだ、その辺の様子も他のプレイヤーから見られていたのでネタにされたのは言うまでもない。

 だが、スキルを手に入れてからは馬やら虎などの現実の動物たちだけでなくリザードマンなどのファンタジー物のRPGなどで御馴染みのモンスターにまで騎乗というより肩車の状態だったが、ありとあらゆる生き物と戯れてつつフィールドを駆け抜けてほとんど遭遇しないで移動出来る様になった時は心底ほっとした物だった。今回の移動でもライバックがどの程度の速度で走ってくれるかは分からないがほぼ間違いなく馬車よりは格段に速い速度なのは確実だろう。

 そんな事をライバックを眺めながらダラダラと考えていると足音が近づいてきたのでそちらに向き直ると予想通りサオリだった。彼女も準備をしてきたようでさきほどの服装の上にマント、腰には片手剣を装備していた。

「お、準備大丈夫そうだね」

俺が声をかけるとサオリは

「あまりフィールドに出たことって無かったけど出来る範囲で揃えて来たわ。で、これがアンタが手懐けたっていう馬ね?」

視線をライバックに向けたまま答えた。

「そうだよ、名前はライバック。でさ、こいつに乗ってなら大抵の序盤の街に行けると思うけどどっち方向に行こうか?」

そこでやっと俺の方を向いて一瞬表情を曇らせたがすぐに笑顔になり口を開く。

「えっとね、今いるこのリモコが北側の最初の街だしこのまま北に行こうかなって思ってるんだけどいいかな?」

なぜ北を選んだのかという理由はおそらく有名ギルドのソルが向かっているからなんだと思われる。サオリが行動を共にしていたあの男たちはギルドが手をつけていない方向を目指して名を挙げるつもりだったようだし、既にソルが攻略を開始し始めている場所にわざわざ向かう理由は無いだろうからなぁ。しかし北かぁ、北に行けば行くほど寒くなりその逆もまた然り。攻略を目指すプレイヤー以外は東か西の気候が一定のエリアの街を目指すのが通常のパターンだけど今回は事情が事情なので止むを得ないだろう。

「分かった、北だね」

俺はそう答えるとメニュー画面を開き、ユウコにメールを送信しておくことにした。

「事情によりリモコを出る事になった、例のスキルで一気に突っ切るから心配するなっと送信」

その様子を見ていたサオリはニヤニヤと顔を緩ませながら

「へぇ、彼女にメール?」

「違うよ、幼馴染みだよ」

「へえ、幼馴染みねえ・・・・・・」

なんだか嫌な感じがしてきたので話題を変えるべくライバックに飛び乗るとサオリに乗るように促す。「ほら、早く行こうぜ。日が暮れる前に新しい街に着いておきたいし」

「はぁい」

なんだか残念そうな顔でライバックに近づいて来たので手を差し出してやる。

「よっと、おお、高いねやっぱ!」

「ちゃんと掴まってね落ちるから」

そういった後すぐに腰に回されるてわずかに感じる体温、デジタルデータのはずなのにこんなに緊張するとは!いかんいかん平常心平常心。

「さ、さてそれじゃ北目指して出発だ!」

「はいよーシルバー!」

「ライバックだって言ったろ!」

俺はライバックの手綱を握り合図すると一気に小屋を飛び出しすぐさま街中に続く道とは違うそのまま真っ直ぐフィールドに続く道へと誘導する。

「ちょ、ちょっと待って速いーーー!」

こんなんで根を上げるなんてまだ早いよ、ここは一つお決まりの台詞を言っておこう。

「え、なんだって?聞こえないよぁ!?」

これでばっちりだ。さらに手綱で合図を出すとライバックは更に速度を上げ、そのままの勢いでフィールドに飛び出した。メニューを開いて方角を確認、よしこのまま真っ直ぐだな。特に変わった様子は無い始まりの街からリモコの街に移動する際もフィールドを歩いたがアップデート前の後でフィールドの変化は今のところ目立った所は無かった、今ライバックと人馬一体となって駆け抜けているこの殺風景な草原も前回もほとんど同じものだし。遠くに居る徘徊モンスターもデザインは同じだった、たぶん行動パターンも一緒なんじゃないかななどと考えているとサオリが喚いている事を今更思い出した。

「ねえってばぁ!!!スピード落としてよぉ!」

「あまり速度落とすといざって時モンスターとか違反プレイヤーを振り切れないからそれは勘弁してくれないか?」

背中越しに絶望に打ちひしがれるサオリの声が聞こえてくるが、ここは心を鬼にして一刻も早く次の街へ向かいたかった情報屋ギルドの住所不定無職が復活してくれ居ればどのくらいで次の街なのかが分かるのだろうが今はまだ復活したという知らせは無いしとにかく時間を無駄にしたくはない。

 と、その時前方およそ50メートル先の岩陰から数人の男たちが現れたが、いざこざに巻き込まれるのは御免なのでそのままライバックの速度を生かして轢いてしまう事をコンマ5秒くらいで判断し実践に移す。当然湧き上がる悲鳴、罵声、そんなものを聞き流しながらひたすら北を目指す。あまりの動じなさに驚いているのかサオリが無言だった、

「い、いまのって盗賊か何かだったんじゃ」

「んーそうみたいだな、けど俺には関係ないぜ」

「そりゃそうだけど、文字通りの強行突破で感心したらいいのか呆れたらいいのか分かんないや」

まだ二日目とかいって油断してた、既にああいう連中がそこかしこで網を張って待ってるのか。これは面倒だ。さっさと街に向かおう。そう思って手綱を握る手に力を入れようとしたところで真下を何かが通過していくような振動を感じたと思った途端、前方の地面が噴火でも起こしたように捲れ上がり大量の土煙を巻き上げてつつそれに紛れて巨大なモグラのようなモンスターが現れた。そいつは飛び出した勢いをそのままに俺たちに飛び掛ってきた。

「ちっ!」

俺は腰に回されたサオリの右手を左手で握り力任せに引っ張り目の前にサオリを持ってくるとそのまま右手を膝の下に持っていき抱きかかえると倒れこむようにして迫り来る巨大モグラの爪をスレスレでよ避けるとそのまま地面にサオリを抱えたまま倒れこんだ。

「ふぅ、危なかったぁ」

「・・・・・・」

突然の出来事で思考停止しているサオリを後ろに隠すように前に立つと改めて巨大モグラと対峙する。

「こんなやつ、序盤のフィールドに居なかったな。新種か」

正直恐くて仕方が無いが俺が死んだらサオリまで死んでしまうそれだけは嫌だしなにより何もしないでやられるつもりは無かった。モンスター相手ではないけどユウコの練習台になって色々戦い方を教わっていたので戦えない事はない・・・・・・と思う。とにかくやるだけやるしかない、俺は構えを取ると先手必勝とばかりに巨大モグラの懐に飛び込む。俺の戦闘用スキルは今のところない。だがスキルが無いとダメージが与えられないなんて事はないので現実世界で良く見ていたアクション映画の格闘シーンを思い描きながらパンチやキックを繰り出していく。現実での俺の痩せ細った体格から繰り出されるひょろひょろパンチなんぞ1ドットたりとも減らせはしないだろうが幸いここは仮想世界、限りなく自分の体格に近いながらも筋力や体力といったものはシステムアシスト機能もあってオリンピック選手並みの動きが可能になるのだ。そしてその肉体から繰り出されるパンチはおそらくボクサーのそれに近い鋭さや威力を与えられていることだろう、現に今、俺が当てている攻撃は確実に巨大モグラの体力を減らしていってる。

「スキル無くても結構いけるな。よしこのまま押し切る」

俺は攻撃のペースを上げ巨大モグラにひたすら拳を叩き込み、蹴りを繰り出しダメージを与えていく。だが、巨大モグラもただでは死ぬつもりはないようで巨大な爪をガムシャラに振り回し始めた。

「苦し紛れってか、あたってやるもんか!死にたくないからな」

巨大モグラのHPがオレンジからレッドに変わりとどめのボディーブローを叩き込むとHPは0になり紫のエフェクトを撒き散らしながら巨大モグラは消え去った。

「サオリ、怪我無いか?」

戦闘が終わってすぐ傍でしゃがみ込んでいたサオリの方へ駆け寄ると視線をこちらに向けず一点に集中しているようだった。

「おい、どうしんたんだ?サオリ」

「さっきの・・・・・・人たちだよ、あれ」

サオリは震える手で指差したその先には確かにさきほどライバックで轢いてきた盗賊プレイヤーの数人が近づいてきていた。

「やばいよ、絶対殺される!逃げようトモ」

「いや、このまま逃げたって次の街でまたいざこざが起きるかもしれない。ここでケリをつけよう。大丈夫、誰だって死ぬのは恐い。奴らだって同じさ、話せば分かるって」

努めて明るく振舞うがサオリは聞く耳を持たないようだった。

「絶対無理だよそんなの!私達こんな初期装備なんだよ?トモがさっきのモグラに勝てたのはたまたまだよ、あいつら盗んだお金で良い装備揃えるみたいだったし間違いなく殺されるよ!」

「まぁ、その辺はなんとかするさ」

サオリの頭をそっと撫でてやると俺は立ち上がって盗賊たちの方へ歩き出した。

お待たせしました。ノリと勢いの第三話、戦闘はあるけれどほとんど日常パートやんけ!本当にすいません。戦闘パートは次に・・・・・・。意見感想待ってます。

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