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ヘル・オンライン  作者: 遠
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第二十八話

 レックスさん達と以前戦った岩蜘蛛を調教テイムして移動型店舗の牽引役を任せるために目的の場所へたどり着いた俺たちはサオリと二人だけで時間はかかったものの無事に倒せた経験もあってか殆ど無傷と言っていいくらいの状態で無事にサオリが調教テイムに成功して街に戻るとさっそくNPCを呼んで岩蜘蛛の背中の岩を加工してもらい店の形に整えてもらうと材料などを運び込み、ひとまずテブルの街から最初に全員が集められたスタトの街の間の区間を試しに巡回してみることになったのでレックスさんが接客、サオリが調理、俺とマキシさんが護衛として岩蜘蛛の頭と後方の岩がそのままになっているところから違反プレイヤーの襲撃などの非常事態に備えて見張りに立つと分担になりライバックはひとまずノースガーデンで招き猫ならぬ招き馬として預かってもらうことになった。ちなみに岩蜘蛛の名前は『イワ』というド直球な名前に決まった。


 移動していると物珍しさからかそれなりの人数が立ち寄っては休憩に使ったり先の出現モンスターの対処法などを聞きにきたりしつつノースガーデンの自慢の料理の数々を味わって皆顔を笑顔にして旅立っていく。

「サオリの料理評判良いみたいだな、料理スキルも結構上げたんじゃないか?」

俺は休憩に一度イワの頭から移動して店内に戻りサオリから冷えたジュースを受け取りながら尋ねる。

「うん、相当上げたよ? なにしろアタシが知らなかっただけで超が付くほどの有名なお店の看板背負って営業するんだもん、ウダイさんたちから徹底的に鍛えて貰ったし時間を見つけてはひたすらスキル上げしたからね。ウダイさんたちには敵わないかもしれないけど結構自信あるよ」

といいながら笑顔で答えるサオリ。

「そうそう、ウダイたちもサオリさんがあまりに上達するのが早いから負けてらんねえってサオリさんが上がって店閉めたあとアイツら隠れてスキル上げしてたからな、たぶんあくまで自分たちが先輩だって所を見せて置きたいんだろうよ」

そう言いながらレックスさんがやれやれと顔を横に振る。

「レックスはそういや料理スキルとか上げないのか?」

マキシさんも休憩するために戻ってきて椅子に腰かけるとレックスさんに話し掛ける。

「いや、まったく。あいつらからは『おめえはさっさと材料集めてこい!』って調理場から追い出されるし俺自身も料理より戦闘の方が性に合ってんだよ」

そういって店員の恰好はしているけどもしものために差しているナイフをポンポンと叩きながらレックスさんは言う。

「んじゃ、そろそろ出発しますかね」

マキシさんが腰を上げるのきっかけに皆それぞれ持ち場に戻って再びノースガーデン移動型店舗はスタトの街を目指して動き出した。


 時間が過ぎてまばらにお客さんがやって来てはその対応をしつつ俺たちは久しぶりに全ての始まりの場所、スタトへと辿り着いた。

「ひとまず、外周の広場にこいつをまず連れて行って休ませてやろうぜ。ずっと歩きっぱなしだったしな。ついでに俺たちも交代で休憩と消費した材料の補充だ、トモとサオリさんの二人で先に言ってきてくれ」

そう言いながらマキシさんは店内から野菜ジュースを手に取ってイワの背中から飛び降りコップからジュースを器用に溢さず着地、歩き出してベンチに腰掛け手をヒラヒラさせた。

「ん、そうだな俺とマキシはあとからでいいや。二人で先に休憩してくるといいよ」

レックスさんはメニューを開いて何やらメールを作成し出した、おそらく無事に着いた報告をウダイさん達に送るつもりなんだろう。そしてウルは安全圏ということもありサオリが待つように指示を出したのでイワの背中で日向ぼっこするようだ。

「わかりました、そんじゃ先に俺らで休憩と材料調達行ってきます」

 俺とサオリは一先ず材料調達に市場へと向かって歩き出した。


 久しぶりのスタトの街にいる人々の表情はあのアップデートの日に比べたら十分に生き生きとしているのだがそれでも街のあちこちで蹲って居る人や上の空で虚空を眺めて放浪している人が目につく。

 あの日、待ちわびていた解放の時を先延ばしにされ希望が絶望に変わってから打ちのめされた人は数えきれない。

ユウコだってすぐに立ち上がったけれど、その決意に至るにどれだけの想いを胸に抱いたのか俺には計り知れない。

「・・・・・・早く用事済ませよっか」

サオリは俺の視線の先にいる打ちのめされた人を一度見るとすぐに目を反らしぎこちない笑みを浮かべて口を開いた。

「うん、そうだね」

俺は出来るだけ何でもないように明るい調子で返事を返すと買い出しを済ませるため歩く速度を少し上げた。


 買い出しが終わりレックスさんたちと交代して近くのベンチに腰掛けて見上げると雲一つ無い晴天が広がっているのを眺めながら先ほどの見かけた非戦闘プレイヤーの無気力な姿を思い返す。

「この世界を早く終わらせなきゃ行けない・・・・・・か。 実際俺みたいに別にこのままでも構わないって人もいるんだろうけど大半はやっぱり帰りたいんだろうな。ユウコたちのような攻略プレイヤーに丸投げしてしまっている俺がどうこう考えても仕方がないけど・・・・・・」

「そう・・・・・・だね。 はいこれ」

サオリの声に視線を空から戻すとジュースが注がれたグラスを手渡たされる。自分も片手に同じジュース入りのグラスを持ちながら空いた手で隣に座っていいのかとジェスチャーをしてくるので無言で座っている位置をずらす。

「アタシたちがやっていることは今こうしている間にも命懸けで戦っている攻略プレイヤーにとっても、このスタトの街から一歩も出ないでクリアされるのを待っている人たちにとっても好ましくないことなのかも知れないっていうのはああいう光景を見ちゃうとやっぱり考えちゃうよねぇ・・・・・・」

サオリはグラスの中にあるジュースに視線を落としながら小さい声で話す。

「うん。でもただ何もしないでじっとしてる事なんて俺には出来そうにないし、かと言ってフィールドを突き進んだりダンジョンを探検したりしてクリアを目指すっていうのも向いてない、そんな半端なやつでもこうして美味しい物を振る舞ってちょっとだけでも辛い気持ちを忘れてもらおうとかそういう自分たちなりの生き方でこの世界で生きていくっていうのもアリだと俺は思うようにする事にしたよ」

再び晴天を見上げながら俺は胸の内をサオリに語る。こんな風に何が正しいとか間違っているのかとか語るのって自分の柄じゃない気がして妙に気恥ずかしいな。

「アタシもトモをずっと前に見かけた時からそういう気持ちが芽生えたの、だけどそれを行動に出せる程の勇気もなくてグダグダして過ごしてたらこうしてトモと直にあって話したりノースガーデンの皆やマキシさんたちと一緒に料理したり時には最前線ってわけじゃないけど何かのために戦ったりしてるうちに確かな物になった。だからアタシもこの世界で自分なりの生き方で生きて行こうと決めたの、その最初の一歩がこのイワと一緒に色んな所に美味しいご飯を振る舞って笑顔になってもらうこと。 そしてもう一つはまだ練習中だけど武具製作スキルを上げて攻略プレイヤーを裏方から支える事・・・・・・なんだけど、どうかな?」

グラスからこちらに顔を向けて微笑むサオリ、その目にはハッキリとした決意が感じられた。

「ああ、凄く良いと思う。俺はやっぱりこの世界をもっともっと探検したいんだ、攻略プレイヤーたちの前でこんな事言ったら袋叩きになりそうだけどクリアとかは抜きにしてさ。 一人で回るのはさすがに危険だからサオリのこのノースガーデン二号店に当分の間は同行させてもらうけどね。ま、そんな感じなんで改めてよろしくサオリ」

 俺もサオリへ向き直り手を差し出す。

「こちらこそ、トモが同行してくれるならアタシも嬉しい。 あ、でも一緒に来るからにはジャンジャン店の手伝い頼むからそのつもりでね?」

 そういってサオリは俺と握手を交わした。

 それからしばらくのんびりと空を眺めたりして二人でぼけーっとしているとレックスさんとマキシさんが帰ってきた。

「よーし買うもんかったし予定通りひとまずテブルの街に戻るか、ウダイにもメール打っとくか」

レックスさんがメニューを操作しウダイさんへメールを送信。

再び俺たちはテブルの街へと出発した。


 だが、テブルの街へと向かう途中ユウコからのメールを受信し内容を見た俺はサオリたちへ俺の話に耳を傾けて聞き終えて数秒、みんなは口を揃えて

「よし予定変更、東に向かうぞ!」

ユウコからのメールの内容にはこう書かれていた。

『違反プレイヤーたちのおかげで東エリアの攻略が遅れていて、他のエリアで攻略を続けて行けばいくほど石碑とかに四方の邪な獣~だのなんだのようは東西南北の端に居るボスモンスター倒さないと鍵のある部屋にたどり着けないみたいなの、そこでひとまず北、西、南の攻略を中断して違反プレイヤーをどうにかして置かないと後々面倒になるって話を各攻略ギルドに情報屋を通じて伝えてもらってね、それが明日なんだけどさ、新しいお店の事で忙しいとは思うんだけどノースガーデン二号店の力も借りたいんだけど・・・・・・どうかな?』

 という内容で違反プレイヤーの攻撃手段が遠距離武器という情報がついさっき入ったばかりでいくら『エンカウント』や『ソル』そして『円卓騎士団』やら有名所全部で討伐に踏み切るのだとしても不安は拭えない。

「さっきの掲示板の話だとあいつらがどんなに強くても今回はいつも以上に用心しておいた方がいいですよね」

俺はふと不安を口に出す。

「ああ、だけどこのまま何もしないでただ待ってるだけじゃ奴らは他のエリアにいる違反プレイヤーにも色々厄介な事を広めていずれは全フィールドが危険地帯になりかえない、いい機会だと俺は思う」

 マキシさんは流れる景色を見ながら答えた。

 不安を拭えないままイワに頑張ってもらい時間的には大分早くユウコの返信に書いてあった合流予定の街『アカツキ』に到着。イワを出口付近で待機させるとひとまずユウコにメール、すぐに返事が返ってきた。

「あと二時間ほどで着くらしいです」

俺はメール画面からを顔を上げ皆に声をかけると一同が目を開いてある建物を凝視していた。つられて俺もそちらを見れば

「・・・・・・温泉・・・・・・だと!?」

書き溜めてから一気に纏めてやってみようと思っていたのですがさすがに間が空きすぎるのもなぁと思い投稿しました。待っていてくれている方、申し訳ありません。ノリと勢いの第二十八話、意見感想待ってます。

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