第二十話
ユウコのメールを読んだ後、俺はひとまずノースガーデンで待っているマキシさんたちと合流して馬鹿騒ぎをして勝利を祝った。
そして日付が変わる頃、まだまだ騒ぎ足りてないマキシさんたちを置いて俺はサオリに報酬で貰った片手剣を手渡し使わないかもしれないけど持ってて損は無いと思うと言って受け取ろうとしないサオリに半ば強引に押し付けるようにして帰路についた。
「イベント終了したからとりあえずは泊まってた宿も元通りになってるしなによりだな」
俺はマキシさんと一緒に飛び降りた窓を見上げながら呟く。
「とりあえず、今日はちゃっちゃと寝て朝一でユウコの所へ向かいますかね」
気持ちは既に決まっている、だけど少しだけ不安もある。あれほどの大人数でのボス戦などでは一歩間違えばすぐ死に繋がりかねない。現にさきほどの戦闘でどれほどの人たちが死んでしまったか途中で数える事で恐怖心が強まる気がしてやめたが大勢死んでしまったのは確かだ。
不安というのは当たり前だが死という終わりを迎える事が、俺はそれが怖い。さっきの戦闘もどうにかこうにか生き延びる事が出来た。
だけど・・・・・・明日街から出てまたエリドみたいな連中に出くわしたら? 強いモンスターに遭遇してしまったら? と色々と考えてしまうのだった。
「それでも、騎乗スキルのイベントなんて前回そんなに無かったはずなのに今回は序盤から登場してくれているなんてこれはチャンスかもしれないし・・・・・・うん、やるしかないなやっぱり。死ぬのは怖いけどそれでもやってみたいものはやってみたいしな」
最後の迷いを断ち切るように俺は両手で頬を叩くと宿の中に入り自分の部屋へと向かって歩き出した。
朝を迎え昨日のように目を開けたらゾンビが居たとか突然の悲鳴が聞こえてきたとかそんな事もなく、なんの変哲もない安全圏の街の朝が始まっているのを窓から見える人の行きかう様子を見てしばし達成感を噛み締めていると視界にメール受信の表示
「サオリからか」
内容はユウコから俺がテブルの街を出てユウコの居る街へ今日出発することを聞いたこと。渡したい物があるから出る前にノースガーデンに寄って欲しいとの事だった。
「渡したいものかぁ・・・・・・なんだろう? もしかしてノースガーデン特製の弁当とかだったりして・・・・・・美味そうだな」
俺は期待に胸を膨らませ宿の代金を払うとライバックに飛び乗りノースガーデンへ向かう。
数分後、呼ばれた通りノースガーデンに着くと店の前で呼び込みをしていたウェイトレス衣装のサオリが駆け寄って来るのだが、なんだか俺の顔を見た途端に眉間に皺が寄ったのを見て身構えた。
「トモ! ユウコから聞いたけどこの街から出発するってなんで昨日言ってくれなかったの? 一応はアタシたちって仲間っていうか友達たと思ってるのに相談も無いって酷くない?」
腰に手を当てこちらを見上げながら睨みつけてくるサオリにタジタジになりつつ俺はライバックから降りる。
「いや、それはその・・・・・・夜も遅かったしテンションのままにいきなり明日出発するから!っていうのも悪いかなぁとか思ってさ・・・・・・ごめん」
俺は手を合わせて平謝りすると頭上からため息が聞こえた。
「まぁちゃんと謝ってくれたから許すけどさ、また黙って一人で決めちゃうような事をしたら・・・・・分かってるよね?」
辺りの気温が少し下がったような気がしてきたが気のせい気のせい、サオリの顔は笑っているけど額に青筋が立って見えるのも気のせい・・・・・・。
「はいっ! 今度から気を付けますです!」
「よろしい・・・・・・じゃ、ちょっと待ってて」
サオリはそういうと店の中へ入っていき数秒待っていると店からノースガーデンのメンバー全員が出てきて俺の前に整列した。
「やぁ、トモくん! 君のおかげで店も元通りだよ。ありがとう」
「ありがとうございます」
「助かった」
「ありがとうな!」
それぞれが笑顔で感謝を告げて来る、なんだか照れ臭くて俺は頭を掻きながら手を横に振る。
「いやいやいや、俺だけでこの街救ったわけじゃないですよ。みんなが必死になって戦って勝ち取ったのがこの結果なんです! それにウダイさんたちだって立派に戦ったり俺たちの装備を作ったりしてくれたじゃないですか。だからこれは誰のおかげとかじゃなくてみんなのおかげなんですよ」
俺の照れ笑いを微笑みながら見つめるウダイさんは
「確かにそうだ、けどね? 最初にこの街のクエストを受けようとしたのはトモくんなんだろ? マキシさんが何度も何度もみんなに『トモが決意しなけりゃ俺たちは諦めてここ放棄してたと思う、けどあいつはしなかった、あいつはすげえやつだ』ってね。トモくんが帰ってからもずっと言ってて思わず笑ってしまったよ」
「マキシさんがそんな事を」
「だから、俺たちはここの街を代表するつもりで君に礼をしたいんだ。これはそのささやかな気持ちだよ」
ウダイさんはそう言うとメニューを操作した。
すると、俺の視界に『UDAIからのアイテム譲渡申請を受けますか?』というメッセージが表示されたのでイエスを押す。
「これって・・・・・・昨日の蛇の」
受け取った物は昨日のイベントボスであるヴァイオレットスネークの素材で作られたブレストプレートとブーツだった。
「サオリさんから聞いてね、少しでも何か助けになれるものはないかと思って作ってみたんだが・・・・・・もしかして既に新しい防具は揃えてしまっていたかい?」
ウダイさんが心配そうに聞いてくるので少々大袈裟に
「いや全く、全然用意してませんでしたよ。というか昨日の装備のままでアイテムだけ補充していくつもりでしたしとても助かります!」
ほっと胸を撫で下ろした様子のウダイさんを見てフォレストさん達が笑っているのを見てこちらも頬が緩んで笑ってしまう。こんな風に仲間同士で笑いあっている光景はやはり良いものだ、たとえそれがデスゲームというデジタルな地獄の中の事だとしてもだ。
「トモ、アタシさノースガーデンに正式に加入して生産系スキルを鍛える事にしたの。でもそれだけじゃなくてレックスさんとフィールドの外にも出て戦闘スキルも鍛えるんだ。いつかユウコとトモと三人で一緒に肩を並べて戦えるように、二人の力になれるように」
サオリは胸の前で手を祈るように合わせながら話を続ける
「だからそれまで待っててくれる? アタシがもっともっと強くなるまで」
まっすぐに見つめる瞳を逸らす事など出来るわけもなく俺も見つめ返し
「ああ、待ってるよ。でもサオリ一つ忘れてるぞ?」
「え?」
サオリがさっきまでの真剣な顔からいつもの優しげな表情に戻り首を傾げる。
「騎乗スキル」
俺がそう告げると「あっ!?」という反応を示し手を合わせる。
「ごめん、すっかり忘れてた。そうだった騎乗スキル仲間を増やすためにももっと鍛えなきゃね」
「うん」
俺は満足気に頷くとメニューを操作しプレゼントされたばかりのおニューの装備を身に着け
「それじゃ、そろそろ出発します。みなさんまた会いましょう!」
ライバックに跨ると手綱を引きゆっくりと歩き出す。
「気を付けて! たまにはうちに食べに帰っておいで!」
手を振り返し角を曲がりウダイさん達が見えなくなると一気にライバックの速度を上げようとした時だった人混みの中からライバックと併走するように近づいてくる人物がいた。
「マキシさん!?」
いつものボサボサ頭にグレーのパーカーというあった時のままの装備とはとても言えない軽装な双剣使いマキシさんだ。
「よぉ、丁度見かけたから声をかけたんだが・・・・・・その装備を見るにどっか行くのか?」
「ユウコに誘われて遠出することにしたんです、おそらくそこの街にしばらく滞在すると思います」
俺が手短に説明するとマキシさんは
「そうか、ユウコと一緒になるなら死にはしないだろうが用心だけはしておけよ? 俺は当分ここに腰を落ち着ける事にするよ。達者でな」
マキシさんはそういうと速度を落として立ち止まり手を軽く振ると再び人混みに紛れて見えなくなった。
「マキシさんも!」
俺も一旦ライバックを止め声を出すが周囲の様々な音で聞こえているかどうか怪しいものだったが聞こえていると信じ再び駆け出す。目指すはユウコの待つさらに北のエリア。その前に再びフィールドを駆け抜けることになる、どんな危険が待っているかわかったもんじゃないが決めた事だ。立ち止まらずまっすぐ進む。
「さあて、いくぞライバック!」
俺は手綱を握り直し声を張り上げた。
ノリと勢いの第二十話。戦闘ナシのただの日常回・・・・・だめだこりゃ。戦闘書かねば! 意見感想待ってます。




