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ヘル・オンライン  作者: 遠
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プロローグ

 フルダイブ型のオンラインゲームが普及し始めても発売されるジャンルは単なるアクションゲームだったり仮想空間で好きな動物とじゃれ合うようなのんびりとしたゲームが発売されるばかりで

ユーザーたちは一刻も早い大作RPGの発売を心待ちしていた。

そんな中、ついに発売されたVRMMORPG『ヘル・オンライン』

発売日には長蛇の列が全国各地で発生しニュースになったり

ツイッターなどのコミュニティを利用した

「どこそこの店にまだ在庫があるらしい」とか「どこそこの店に追加で少しばかり入荷するらしい」

などデマを流す輩まで現れる始末だった。

そして正式サービス開始の日運良く手に入れた2万人のプレイヤーたちが嬉々としてダイブして

チュートリアルをそれぞれ消化し各々で仮想空間を堪能した。

だがしばらく時間が経ち、現実世界の用事のためログアウトしようと

プレイヤーたちがメニュー画面を開いてもどこにもログアウトの表示を見つける事が

出来ずにその事がプレイヤー間で広まっていき騒ぎが大きくなり始めた頃、

各地に散らばっていたプレイヤーは最初の街、スタトの広場に集められ

このゲームの仕様を電子音声の無機質な声で聞かされる事となった。

その仕様とはログアウト不可能、ゲーム内でのHPが0になれば現実世界での死。

ログアウトする方法はただ一つ、あるダンジョンにある扉をボスモンスターのドロップアイテム

の鍵で解錠する事、それが達成された時、このゲームは終了するというものだった。

そんなアナウンスが流れてスタトの街は大パニックに陥ったサービス初日。

その瞬間からこのヘル・オンラインはまさに地獄と言う名に相応しい世界になった。


 


 それから時は流れてゲーム開始から一年半が過ぎていた。

クリアを目指し様々なエリア、ダンジョンを探索し時には命を落としつつもプレイヤーたちはクリアの

条件である扉があるボス部屋を発見し入念に装備を整え決戦の時を迎えた。

 ボスの部屋は薄暗い廃墟と化した城の一番最奥にある、おそらく王が謁見をする玉座のようだった。

かつては豪華絢爛だったことが伺える調度品らしきものが転がっており

壁には誰かの肖像画がそのまま掛けられたままになっていたりしている。

壁のあちこちが欠けていたりあからさまに壁や天井の一部が崩れていて陽光が差し込んでいる有様だった。

玉座の後ろには一年半前のアナウンスが告げていたように扉が確認され、すぐさまそのニュースは

全プレイヤーの耳に入る事となりそれを知った非戦闘プレイヤーたちは

期待に胸を膨らませ開放の日を待ち望んでいた。

 


 そして今、絶望の淵に落ちる事もなくゲームクリアを目指し邁進するプレイヤーたちの集団

がこのデスゲームを終わらせるべくボスとの死闘を繰り広げていた。

「みんな、あと少しよっ!気を抜かないで!」

長く艶やかな黒髪を翻し体の要所をこれもまた闇に溶け込むような黒々としたプロテクターに身を包み

両手で構えた少女には不釣合いな無骨な両手剣でボスの巨大な手を受け止めつつ

凛とした声を周りにいるギルドメンバーに掛ける少女。

「わかってますって団長!俺たちがこのデスゲームを終わらせるんです!」

「そうだっ!街で待ってる奴らのためにも早くこいつを倒してこの世界からオサラバするんだっ!」

その声に応えるように同じギルドメンバーも血気盛んに野太い声を張り上げながらボスにそれぞれの

剣や槍を使った攻撃スキルを叩き込んでいく。

ボスの名はヘル。

姿は真っ白な人型の骸骨にボロボロになった穴だらけの赤いマントを申し訳程度に身に纏っている程度。

ただし大きさが常人のそれではない。全長が7~8メートルに達する巨人のような体躯なのだ。

 だが、このモンスターさえ倒せば辛かった一年半の仮想空間に囚われた生活から開放される。

ここで戦っているメンバー全員が想いを一つにして目の前の敵に渾身の一撃を一人一人が

骸骨巨人に叩き込んでいく。

HP表示が最初は横棒で三本あったのが今では最後の一本の半分まで減ってきていた。

そして今、怒涛の連続攻撃でHPは半分を切り緑から黄色へと変わる。

「最後のHPバーが黄色になった、みんな気をつけて!」

骸骨巨人は右手を左肩にもっていき何を思ったのか自分の左肩を引っこ抜くと棍棒代わりにするつもり

のようでそのまま右手に構えて大上段から振り落とした。

即座に攻撃を避けるが、床を叩きわって飛び散った破片と土煙で視界が遮られる。

「盾、前へ!」

盾を装備したフルプレートに身を包んだ重戦士たちが少女たちの前に横一列に並んだ途端

土煙を割って骨棍棒が横凪ぎに振るわれた。

重い衝撃音が響き渡り骨棍棒を受けた盾役たちが押し出されそうになるをなんとか耐えていた。

「今よ!」

盾役の決死の踏ん張りに応えんとするがごとく獣のような声を上げて骸骨巨人に飛び掛る

剣士や槍使いなどの前衛部隊。

骸骨巨人は再び骨棍棒を振り上げて床に打ち付けようと構える。

その隙に少女と同じギルドメンバーが骸骨巨人の後ろに回ると全員で骸骨巨人の

左足を攻撃して、注意を少女たちに向けさせる。

「今のうちに盾役は回復!前衛は隙を見つけたらとにかく攻撃!」

残りHPは黄色からオレンジに変わり、前衛たちの善戦により徐々にだが減り続けている。

骸骨巨人は最後の悪あがきと言わんばかりにがむしゃらに骨棍棒を振り回し始め

盾で先ほどの骨棍棒を受けて回復しようとしていたプレイヤー数人が無防備な体制で

攻撃をくらい、吹き飛ばされる。

吹き飛ばされたプレイヤーの半分まで減っていたHPが右から左へ移動していき

左端まで到達し、その途端プレイヤーは赤色のポリゴンの粒となって霧散した。

それを見た少女は歯を食いしばり手にした両手剣を右後方に持った構えにして

「今までの動きでもう一度行くわよ!」

少女は声を張り上げつつ構えた剣を青白く光らせ両手剣スキルを発動させ斬りかかる。

それに続くように前衛のプレイヤーが死んだ戦友の弔い合戦と言わんばかりに

雄叫びを上げ特攻する。

それを嘲笑うかのように骸骨巨人は骨棍棒で迎撃しようとする。

だが、後衛のプレイヤーがギリギリ回復を間に合わせ骨棍棒を耐えしのぎ前衛の攻撃のチャンスを

作る。

次々にヒットしていく前衛たちの決死の攻撃。

徐々に減少していく骸骨巨人のHPバーはついにオレンジからレッドとなり、もうあと僅かまでになった。

スキル発動後は連続では使用できないため僅かな待ち時間を後衛がカバーし再び距離を取る前衛たち。

だが、少女だけは攻撃をヒットさせ待ち時間を着地と同時に、体の向きを変え距離を開けず剣を構えて留まる。

待ち時間が終わり先ほどの構えから放った両手剣スキルをもう一度叩き込んだ。

「これでっ!」

少女の言葉が響き渡ると同時に骸骨巨人は紫色の炎に包まれ粒子になって消え去った。

途端、沸き起こる歓喜の声。

「やった、やったよトモ。これで帰れるよ!」

少女はボス部屋から差し込む陽光に目を細めながらその先に見える青空を見つめて呟く。


 そして少女の視界にメニュー画面が現れ、ボスが落とすレアドロップアイテム獲得を告げる。

アイテム名は『世界の鍵』

「あのアナウンスの通りだ、この鍵をあの扉に使えばこの世界から出られる!」

少女は一緒に戦った戦友たち一人一人と今までの苦労を分かち合うように

目線を交わしながら扉のある方へ向き直ると

ボス部屋の大広間から伸びる階段を上っていき扉の前に立った。

すると少女の前に選択を選ぶメニュー画面が現れる。

少女はゆっくりと緊張から震えている手でYESを選択する。


 その瞬間、目の前の扉が消え去った。

かと思えばすぐに視界は回復したのだが、そこは元いた大広間を見渡せる扉ではなく

上も下も真っ白だった。まるで一年半前にダイブする時に見たシステムチェック画面のような場所に

少女は立っていた。

これで帰ることが出来るのかと少女は期待に胸を躍らせていると。

もう聞くことは無いと思っていたあの無機質なアナウンスが流れ出した。


『鍵の使用を確認しました。

 これよりヘル・オンラインはアップデートを開始します。

 プレイヤーの皆様は引き続きゲームクリアを目指し二つ目の鍵を手に入れて下さい。

 なお、一つ目の鍵は既に新しいヘル・オンラインのどこかにあるダンジョンの扉の鍵穴の片方に

 挿さっている状態になっておりますのでご安心ください。

 二つ目の鍵を手に入れ扉に挿した時、プレイヤーの皆様はログアウトが可能となります。

 

 アップデートに伴い、いくつかの注意事項を

 スキル、アビリティ、熟練度、装備、所持金、アイテム等のあらゆる要素が

 初期状態になりますのでご注意ください。

 

 それではプレイヤーの皆様に真なる自由が訪れる事を願っております』


 アナウンスが終わると同時に少女は先ほどの真っ白な世界から

一年半前にデスゲームの開始を告げられた全ての始まりの街スタトの広場沢山のプレイヤーが立っていた。おそらく今生存している全プレイヤーがあの時と同じように集められたのだろう。

服装も先ほどまで身に着けていた漆黒のプロテクターや無骨な両手剣は消えていて

白のシャツに黒のスカート、ソックスにブーツという初期装備の格好になっていた。

「こんな、こんなことって・・・・・・」

少女はショックで立っていられなくなったのか、へたり込んでしまう。

周りを見れば同じような虚脱状態の人々が天を仰ぎ喚いたり、ただひたすら蹲って泣きじゃくるなど

そこかしこで絶望に沈んでいた。


「また一からやり直し・・・・・・なんて・・・・・・こんなのってないよぉ・・・・・・」

少女は周囲を気にせず大声で泣きだした。

いや、少女だけではない。

この広場にいるほぼ全てのプレイヤーが様々な形で絶望に打ちのめされていた。



プレイヤーの阿鼻叫喚が響く中ヘル・オンラインは新たなデスゲームとして

新生し地獄の日々を再開したのだった。

勢いとノリで書いたので拙い文章、オンラインゲームド素人。

こんな自分が書いたデスゲーム。

「クリアかと思えばアップデートでデスゲーム続行とか楽しいかな」という事だけ考えて書きました。

意見感想待ってます。

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