夢桜
回想中のような感じのハナシです。
ちなみに、サブタイトルの読み方はそのまま<ユメザクラ>です!!
不思議だけど…ここは夢の中なんだって、気付いてた。
目が覚めたらこの世界は消えて無くなっているんだ。って
でも私はこの[夢]を[本当]にしたかった。
今だけでいいから…
忘れたかった。
ずっと眠っていたかった。
あたりには、雪が舞っている。
いや、よく見るとそれは雪ではなく桜の花びらだった。
儚げだがはっとするほど美しく、見る者のココロを奪う桜。
必要とされ、多くの人を虜にする、でも儚い、寂しい花。
そんな桜は幸せなのだろうか?
けれど私は、そんな桜になりたい。寂しくても辛くても、春以外、誰にも相手にされなくていいから、必要とされたい。
…私には、居場所がない気がしていた。
朝比奈くんは、優しくしてくれる。
看護師さんは、たくさんのコトを教えてくれる。
七海ちゃんは、私を笑わしてくれる。
これで居場所がない、幸せじゃないって言える私はすっごく幸せなのかな??
でも過去がほしい。
思い出に浸ることも、過去に逃げることもできないのは辛いの、苦しいの。
過去のいろいろなコトが今を創ってきたはず…だから過去がない私は、今をどう過ごしたらいいか分からない。
朝比奈くんが優しくしてくれても、どうしたらいいか分からない。
看護師さんがいろいろと教えてくれても、私からは何も伝えられない。
七海ちゃんが面白いことを言っても、それを聞いてただ笑うことしかできない。
何にもできないんだ。それがもどかしくて、辛いからかな?
頬に、冷たいようで温かい涙が流れていく。
桜の樹が、おいでと言っているかのように揺れている。
花びらが舞う―
そっと樹の下に近づくと、彼がいた。
彼が誰なのか、私は知っている。
でも今は、分からない、思い出せない。
彼は優しく微笑んだ。それを見ているだけで、私のココロのわだかまりが、溶けていく―
あぁ…
逢いたい、抱きしめてほしい。
夢じゃない、本物の貴方に。
今は、名前を呼ぶこともできない。辛くて、思い出せない。
真実なんか、知りたくない。でも、やっぱり思い出したい。
矛盾するキモチで頭がおかしくなりそうで―
そんな私は我が儘なのかな?
自分から、忘れておいて、でも、思い出したくて、でも、知りたくなくて……
私も現実の世界も、全部全部壊れてしまえばいいのに―
カレなんか知らない。私が逢いたいのは彼なんだ。
でも、もぅ…
誰がダレかなんてどうでもいい。
温もりをくれるなら、誰でも…
そう思っていたいけど、ココロの底で求めているのは、やっぱり貴方だけなのかな―?
でも今、ココロの底からの温もりをくれるのは、カレなんだ。
…夢の中の私は、何かを思い出したのかもしれない。
でも、真実はいつも残酷で―
だから私は、それから逃げてばかりだったのかな?
目を背けて、なかったことにしようとばかりしていたんだ―
今はまだ、夢にすがっていたい。貴方の面影を、追いかけていたい。目覚めるまでは、どこまでも、どこまでも、堕ちていきたい……
ねぇ、いいでしょ??