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黒の指揮官  作者: 冬城 一夜
異世界での生活
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6話 初めての露店

「しっかし、意外な特技よねぇ?」


真剣な目付きで、僕の造った指輪なんかをリュカさんが眺めている。


「剣も使えて、これだけの加工品を作れるなら冒険者にならなかったの?」


「命の危険が大きいですし・・・どっちかというと中距離や後方で指揮するほうが・・ぁ、なんでもないです」


あいつが前線はいつも引き受けてくれていたしなぁ・・と考えてるとリュカさんがこちらを見ている。


しまった、指揮とか年齢的におかしいかな?


「ちょっとまって、ティアちゃん。もしかしてエルフの指揮官とかだったりしたの?!」


ガシっと肩を捕まえられて、揺さぶられる。ちょっ、まっ、くるしっっ


「ぇっ・・ぁ、いえ・・・その・・・・ないしょです」


あははと苦笑すると、不意に手を離してもらえる。あぶない、つっこんで聞かれたらどうしようかとおもった。


「そっか、まぁいいわ。人に聞かれたくない事ぐらいあるものよね」


「剣も使えて指揮経験者か・・・・常識を知らなさ過ぎるとこもあるけど・・・・凄い人材じゃ?」


ぶつぶつと最後のほうは小声で何をいっているのか、よくわからなかったけれど納得はしてくれたっぽいかな?


ゲームの中で指揮を執ってましたとか説明できないもんね。


「ぁ、そうそう。これ商業ギルドのカードよ。身分証にもなるから、無くさないようにね?心臓の位置にカードを持っていけば出し入れできるわよ」


「ありがとうございます」


クレジットカードほどの銅色のカードを渡される。へぇ、ぁ、名前とこの都市の名前がのってる。


商業ギルド所属かぁ・・・・。商売たのしみだなぁ、MMOとかでも生産と露店好きだったし・・・・さっそくいくかな!!


「迷子にならないように、知らない人にはついて行っちゃだめだからね?!」


いやいや、リュカさん僕一応年上なんですけども・・・・・


「じゃ、私は仕事行ってくるからね?困ったことがあれば私の名前だすのよ?いいわね?」


ぐっとリュカさんの顔が近づいてくる、恥ずかしいってば!


「ふふふ、真っ赤になってティアちゃんはやっぱりかわいいわねぇ。じゃ、行ってきます」


部屋をでていくリュカさんに小さく行ってらっしゃいというと、いいわぁいいわぁと悶えていた。大丈夫だろうかあのひと。


さて、露店へ出す商品の準備っと・・・・上手く行って店かどこかに商品を卸せればいいんだけど。


良心的な店なんてそうそう、見つからないだろうし。とりあえずはしばらく露店かな?



中央広場から東の大通りを進んだ場所にある露店街。大勢の人で賑わっている。うわぁ、人ごみすごすぎて視界が・・・・・


たしか、この辺なら空いていればどこでもいいって事だったよね?


広場のようになっている隅のほうに、風呂敷代わりに商品を包んできた布を広げて商品を並べていく。


露店台もなにもないので地面に布をひいて商品を並べるだけだ。向こうの世界でも銀細工の指輪とかうってる外人さんいたなぁ。


お客さんこない。まぁ隅っこのほうだから、しょうがないんだよねぇ。さっきからチラチラと視線だけは感じるんだけど。


「お嬢さん、ちょっと見せてもらってもいいかな?」


「ぁ、はい。どうぞー?」


高そうな服に身を包んだ老紳士・・・って、こんなところに貴族かな?普通下賎な者と一緒になどーってイメージしかないので、すごく驚いた。


「おや?私のような者が珍しいかね?」


見上げている視線に気づいた老紳士にそう言われる。


「あ、ご、ごめんなさい・・・貴族の方ですよね?どうしてもイメージが、市井の者の作ったものなぞーって感じで・・・」


えへへと可愛らしく笑ってみせる。


「はっはっは、正直なお嬢さんだ。そんな絵本の中のような貴族などこの帝国におりはせんよ?皇帝陛下がお許しになられはせんからな」


老紳士が笑顔で笑って教えてくれる。うん、我ながらこの笑顔のこうかはばつぐんだ!


「それでは、この指輪をもらおうかな?良いデザインだ」


「はい、ありがとうございます。えーっと銀貨6枚です」


銀貨2枚を使って加工した物だから、これぐらいでいいかな??


「ふむ・・・・、これで銀貨6枚とは・・・・・」


驚いたような表情でこちらを見つめられる、や、恥ずかしいのであんま見つめないでください。


「・・・・お嬢ちゃん、これを作ったのはお嬢ちゃんだね?」


「ふぇ?え?そうですけど???」


普通露店ってそういうものじゃないのか?なんだろう?商品は褒められたからまずいことはないよな?


「ふむ、値段を言ったときの様子からそうであろうとは思ったが・・・・製作者は別にいると言うほうがよいぞ?色々と危険なこともあるでな?」


そうか、なるほど。子供が作った商品なら買い叩いて転売もできる。そして極論すれば僕を攫って商品を作らせればぼろ儲けできる。


子供の外見をしているから、純粋に心配してくれているのだろう。良い人のようだ。


「・・・・わかりました、ありがとうございます」


にっこりと笑って返事をする。


「・・・・今の言葉だけでわかるか、なるほど、お嬢ちゃん名前を聞いてもよいかな?」


「はい、ティアといいます。」


「そうか、では失礼するよ。良い買い物をした」


そう言って優雅に礼をすると老紳士は雑踏にきえていった。うーーん、そうかそこまで考えてなかったなぁ。






先ほどの老紳士がきっかけになって注目されたのか、商品を見に来るお客さんが増えて持ってきた商品が先ほどまでの客入りが嘘のようにほとんど売れていった。


うーん、ちょっとぐらい買い食いできるかなー?これで材料買えばもっと色々つくれるよね・・・・ぅーん、なにをつくろうかな?


「おぃ!お前!!」


「ぁ、はい?なんでしょう?」


見ると目の前に子供が立っていた。金髪でソコソコ整った身なりをしているようだ。


「これ、お前が作ったのか!?」


怒っているのだろうか?そもそも、礼儀を知らない子供だなぁ・・・・


「そうだけど?」


「そ・・そうか・・・・」


どうしたのだろうか?一気に大人しくなって、心なしか顔が赤いような??


「なんでそんな値段で売っているんだ?」


「え?・・・・・高すぎたかな???」


商品の出来に比べて高すぎることを怒っているんだろうか?


「ちがう!逆だ!」


「へ?逆・・いや?・・・逆って?」


安すぎる!と目の前の子供に怒られた。けど相場なんてわかんないんだよね。


「って言われても相場なんてよくわからないし・・・・・」


「ちょっとこい!!」


腕を掴まれる、簡単に振りほどいて組み伏せるぐらいはできるけど・・うーーん、悪い子じゃなさそうな気がするし。






あの後、強引に引きずっていこうとする少年を説得して、とりあえず荷物をまとめさせてもらった。


どこいくの?と聞いても答えてもらえずに、ズンズンと進む少年。


そして中央広場に近い「ファーリア雑貨店」と書かれた立派な石造りの店に連れてこられた。なにがなんなんだ?


訳の分からないうちに、応接室と書かれたところに通されて、座らされている。うん、紅茶がおいしいナー。


(だから、あいつの細工の腕はすごいんだよ!それを相場がわからずに売ってたんだ!!)


(しかしな、確認もしないで無理やりつれてきたのだろう?)


(危ない目にあったら、どうするんだよ!それにきちんと相場で売ればちゃんと儲けもでるし、うちにだって損にはならないし!)


(あらあら、貴方。とりあえずその子としゃべってみたらどうかしら?この子の初恋よ?)


なんか、扉の向こうから話し声が聞こえてくるんだけど・・・・・相場とか安いとか、実は品質がよくて安く売りすぎて他の店が商売にならなくなる!


って感じで傷めつけられるんだろうか?に、逃げたほうがいいかな・・・・・・?


「お待たせしました。この店の主人のファーラルと申します、こちらは家内のリアです。そして息子のアーランです」


おおぅ、遅かった。親子3人揃って目の前でお辞儀されてしまう。


「ぁ、ティアです。よろしくお願いします」


ちょこんっとお辞儀をかえす。


「まぁまぁ、可愛らしい子ねぇ・・・・・・・」


「ごほんっっ、息子に聞いたのだが、商品を1つ見せてもらえないかな?」


どうぞっとポケットの中から指輪を2,3こファーラルさんに渡す。奥さんと旦那さんが指輪を見つめ、ひっくり返し鑑定されてるのかな?


下手じゃないだろうか?・・・・ん???ふっと気づくとアーラン君がこっちを見つめている。目が合うと真っ赤になって横を向かれてしまった。


なんなんだ?嫌われるような事をした覚えはないはずなんだけど。


「ふむ、確かに良い出来だ。細工も細かく丁寧だ。ちなみにこれで幾らになるんだい?」


「銀貨6枚で売ってますけど・・・?」


ビシっと空気が固まった気がする、ぇ?なに?なんかおかしい?僕おかしいの?!


「まぁまぁ、安いわねぇこれなら金貨3枚は取れるわよぉ?」


は?金貨3枚?いやいや、元は銀貨2枚・・・・・


ポカーンとしてしまう。そこまでするものなの?!


「うむ、そうだな。それぐらいにはなる・・・露店というのも色々と危険があるものだ。よければうちの店に卸してくれないだろうか?」


・・・・・・・じっっとファーラルさんの顔を見つめる。人はよさそうだ、目が合う。少し照れてるのかな?


「貴方!?」


ゾワっとするような殺気!?奥さんが低い声でファーラルさんを呼ぶ。


「ぁ、いや、すまん。そんなんじゃないんだ・・・、で、どうだろうか?手数料は一割、代わりに君の正体などは買い手には伝えないし、

必要なら素材も私がある程度なら揃えることができる。これでもギルドには顔がきくからね」


ぅーん、悪い人ではなさそうだ。一割というのも良心的。嘘をいってる感じもしないかな?


「うーん、いいですよ?」


「そうか、やはりだめか・・・って、良いのかね?!」


そう言ってるんだけども、再度うなづく。


「そうかそうか、いや、断られるかとおもってどきどきしたよ。他には何か作れるかね?」


「ぅーん、武器でも防具でも何でも作れますけど、ただ、あまり武器や防具は作ると面倒になりますので・・・・・作る気はないです」


「あらあら、多彩な才能ねぇ・・・すごいわねぇ」


「ふむ、ではティアさんが作りたい物を作り、私が店でそれを売る。手数料などは先程のとおり。そして正体は隠す。客からの要望はどうするかね?」


上機嫌でまとめにかかるファーランさん。


「装飾品などはオーダーメイドの相場と頻度はおまかせします。武器や防具は全部断ってください。作りたい時だけつくってもらってきます」


「わかった。一応商業カードだけ見せてもらえるかね?」


はいっと手渡す。


「ふむ・・・ハーフエルフなのは、良いとして・・・13・・・13でコレほどの物を作れるとは・・・・」


「ぁ・・・いぇ、その・・・それ手違いで27なんですけど・・・?」


・・・・・沈黙が痛い。


奥さん、ティーカップ落とすほどショックなのかよ。








それから条件をまとめた契約書を交わし、2,3日に一度は納品にくるという約束をした。


タングステンやら合金をつくるためにいくつかの鉱物を頼み、他にも素材を頼んでみたら、二週間かからずに用意してもらえるらしい。すごいな。


「ぉい、ちゃんと顔見せに来いよ!?」


「うん?大丈夫だよ、ありがと」


「べ、別にお前が心配じゃなくて、ちゃんと商品もってこいって事だからな!?」


真っ赤になって店に戻って行くアーラン君。なんというツンデレ・・・


27でも関係ないからなって言われたときは驚いたが、少年よ、その初恋は実らないんだ。中身は男なんだぜ?


それにしても商売始めた瞬間に卸先の商店が見つかるとか、運がよすぎる気がするけど、いいのか?これ??


出来過ぎてるような気がする。

幸運の効果はすごいんです。

運の良さって最強ですよね、ある意味!

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