23話 ドラゴンパピー
肉や皮の焼けた匂いは、風によって流されており、坑道がほんのりと余熱を持っている程度である。
残っているのは魔物の残した焼けた防具や武器、ほぼ使い物にならない素材、そして多くの魔石。
「おかしいですね?これだけの魔物を迷宮以外で殺せば魔素が残って魔物を再構築するぐらいはありそうなのですけど」
ウィンドがそう言って辺りを見まわし、魔物が倒れ伏したであろう場所を調べたりしている。
「…………」
くすりとティアが微笑む。感情の感じられない普段のティアを知っている者が見れば本物かと疑うほどの微笑み。天使が浮かべる悪魔の微笑。
「(ヒトを奴隷や道具としてしか見ない魔物、悪魔、魔神。全部駆除しないとね……)」
ティアの微笑みを見た、見てしまった3人が呼吸を忘れ、魅入られたように固まっている。
(なん……だ?俺が怖いのか?こんな子供が?)
(ティアちゃん、そんな顔もできてしまうんだね……)
(怖いようじょかわいい)
上からレッド、ウィンド、ブラウンである。エメルはというと、何も考えていなかった。
「さて、残存する魔物に注意しつつ目標まで進むよ?」
よいしょっとと言いながらティアが立ち上がり、何事もなかったかのように坑道を進んでいく。
「俺が前にでるぜ?」
レッドが慌ててティアの前へと立つ、部下や軍人としての務めではなく、男の意地であった。
「そっか、ありがと」
にこりと微笑んでレッドを見上げる。こうかはばつぐんだ。
「ぉ、おう」
(歳相応にしかみえねぇよなぁ、可愛らしい笑顔なんだが……さっきのは錯覚だったんだよな?)
レッドが足で乱暴に焼けた残骸を横へ蹴り飛ばしながら進んでいく。動くものは1つもない。
少し蒸し暑い程度の坑道内。魔物に会うこともなく目的地の空洞の前までたどり着く。
魔物は全て焼かれ、生き残った者も肺まで灼熱の空気で焼かれたのだ、生物はこの坑道内に残っていない。
坑道最奥の空洞、小さな体育館ほどの空間の中央にソレは置かれていた。
見ただけでは影とも見えるような漆黒の卵。
「魔素を吸っている???」
ウィンドが小さく声を漏らす、坑道の下。霧のように漂う黒いモヤが卵に凄まじい勢いで吸収されているのだ。
そして2,3度瞬きすると、そこに黒いモヤはなかった。
「あれだけの魔素を全て吸収したというのですかね?」
ウィンドが手をかざして風の波を広げていくのが感じられる、空間を把握して状況を調査しているのだろう。
かなり高度というか、特殊な魔法の使い方だ。
「ティアちゃ……隊長。魔素の検知できません。恐らくはアレが吸収しつくしたものだと」
じっと、ウィンドを見上げるティア。本人はバレていないと思っているようだが、声も変えていなければ覆面をしているだけで正体などバレバレなのであるが……。
「そっか、ありがとう」
警戒も何もなく、普通に卵へと近づいていくティア。
んー?卵?けど、これから竜が生まれるの?魔竜っていうぐらいだから黒なのかな?
手を伸ばして殻に触れる、ピシリと小さな音が聞こえる。
「ん?」
「離れてっっ」
ウィンドが叫ぶが、びしりっと大きな亀裂が殻に入り、黒い影が飛び出してくる。
「ひゃぅっ!?」
黒い小さなトカゲのような竜が割れた殻をその身体に貼りつけながらティアに跳びかかる。飛びかかれた拍子に尻餅をついたティアの上に載っかかる子竜。
「むっっ!?」
駆け寄ろうとしたレッドが見えない壁に弾かれて、後ろで転がっていく。
「ちょっ、やめ、くすぐったいよ?!」
口をあけた小さな竜が舌を伸ばして、ティアの顔を舐めまわし、唾液で汚す。
(………インプリンティング?いやいや、鳥だけって話だよねぇ)
ウィンドがその状況を見ながら考える、まさか竜に刷り込みがあるはずがないのだ。
「やっっ、そこはだめだってばっっ!痛いっって!でない、でないから!」
ティアの顔を舐める竜、生まれたばかりでお腹が空いているのか、ティアの胸を服の上から啄き、はぐはぐと甘く噛んでいる。
(●REC)(●REC)
ウィンドとブラウンが同時に記憶水晶を構える………いや、助けろよ、お前ら!
なんとか文章になったかなぁ、大絶賛スランプ中です。
ティアの恋人役って居ないほうがいいのかな?どうしようか。
1,無し 2,エミリオ◎ 3,カーター◎
4,大佐 ● 5,紳士● 6,リュカ ×
7,黒帝(ねぇよ!




