絶対的支配者
このクラスには学級委員長より権力を誇る男子がいた。
ミヤキ「にい・・・やま・・君?新山 シンくーん。」
まだみんなの名前を覚えきっていない先生は危ない口取りである男子の名前を呼ぶ。
シン「ぅあーい・・・。」
今は健康観察。
だるい感じで手を上げる男子。
髪はサラサラヘアーだが、眼光が強い男子だった。
彼はこのクラスのボス、言わば《支配者》である。
ミヤキ「えーっと次は~・・・。」
ミヤキ先生は名簿を見る。
シン「ミヤキっ。」
すでに呼び捨て・・・。
シンは立ち上がった。
シン「やっぱり係を作ったほうがいいと思うぜ。先生はゆっくり覚えれば良いんだから。」
みんなは何も言わない。
尊敬の念さえ表している者さえもいる。
シンの言葉にはそれほど説得力があった。
ミヤキ「そうね・・・。じゃあ、お願いしようかしら?」
ミヤキ先生は戸惑いながらも周りを見渡す。
ミヤキ「じゃあカコさん、頼める?」
カコ「・・・!わ、私ですか?」
ミヤキ「ええ。」
カコ「あ、はい・・・良いですよ。」
カコは天使の微笑で先生へ視線を返す。
ミヤキ「じゃあ一日だけお願いね。」
ミヤキ先生はホッと胸をなでおろした。
~休み時間~
アリス「よくがんばったぁね~。」
アリスはニコニコ笑顔を崩さないままカコに語りかける。
一方カコはご機嫌ナナメである。
ブスッとしながらカコは言う。
カコ「あの先生も先生だわ。クラスの名簿くらい覚えたらいいのに。もう1週間以上経ったわよ?」
アリス「信頼されてるねー??」
アリスはからかうようにカコの顔を覗いた。
カコ「あのさ・・・、わざと??」
~放課後~
シン「なぁ。」
カコ「・・・?」
シンはカコに話しかける。
カコ「何?」
シン「あの・・・その・・・・・・すまなかった。」
カコ「はぁ?」
カコは次の瞬間に全部理解した。
シンは健康観察でカコに振られてしまったことを謝ろうとしている。
シン「あの時は先生を助けようとしたつもりだったんだけど、カコに迷惑かけたな・・・。」
シンの顔はどこか寂しげである。
シン「すまん・・・。」
カコ「・・・・。」
カコはニッコリ笑った。
カコ「いいよっ!気にしてない!」
シン「・・・そうか。」
シンはそれだけ言うと帰っていった。
カコ「・・・まぁ謝ったから許す。」
我らがクラスの絶対的な支配者は、
表向きはみんなの先頭に立つボスだが、
みんなに迷惑をかけると・・・・
優しくなる。
ほんの時々だが・・・・・・・・・。
カコは思った。
彼にはプライドがあると。
迷惑をかけられないというボスの意地があると・・・・・・。
我がクラスの絶対的支配者は
クラスで一番正義感が強い男子である。