Chapter 9 : 容赦なき条件
> 容赦のないこの世界では、チャンスは与えられない——奪い取るものだ。
もし、すべての望みが叶う代わりに、代償を払わなければならないとしたら?
今、レンの前にあるのは二つの選択肢。
素手で不可能の階段を登るか、
それとも、大切な人を闇に沈めるか。
こうして本当のゲームが始まる。
条件はただ一つ——容赦なし。
レンはリオの前に立ち尽くしていた。
二人の間には、まるで月のない夜のように重たい沈黙が流れていた。
その沈黙を破るのは、部屋の時計の針が刻む音だけ。
ソファに腰掛けたリオは、片足を組み、冷たい笑みを浮かべながら言った。
「一億円が欲しいなら……ゼロから始めてもらう。」
レンの目が細くなる。
「……ゼロから?」
リオはまるで子供の遊びのルールでも語るように、静かに頷いた。
「ファイターズの試験を受けろ。合格したら、ファイターズ5からスタートだ。
そこから自力で、ファイターズ1にたどり着くんだ。
そのとき初めて……金が手に入る。」
レンの目が見開かれる。
「……そんなの、ほぼ不可能だ。何年かかると思ってるんだ……! 金が必要なのは“今”なんだ……ルナは……」
リオはその言葉を遮るように、冷笑を浮かべながら続けた。
「ふん……大事なルールを言い忘れていたな。
第一に、あの化学薬品を飲んで生き延びたこと――
それを誰にも知られてはいけない。
たとえ一人でも……知られた瞬間、金は消える。」
冷や汗がレンの首を伝い、心臓が緊張で高鳴る。
「第二に……お前の新たな力を使うことは許されない。
力に頼るな。見せるな。危険な真似をするな。
自分本来の力だけで登りつめろ。……理解したか?」
レンは黙ったまま床を見つめた。
ルナの顔が、声が、怯えた姿が頭に浮かぶ。
手を握りしめ、爪が手のひらに食い込む。
「……金が必要なんだ……何年も待ってられない……」
そう呟いた声はかすれていたが、彼は視線を上げなかった。
世界が一気に重くのしかかるような感覚。
リオは小さく笑い、窓の方へと歩き出した。
その先には、無数の光が広がる冷たい都市の夜景。
「……フッ、面白い話だと思わないか?
断る自由もあるぞ、レン。
でも金は、空からは降ってこないからな。」
沈黙。
息が詰まりそうなほどの沈黙の中で、レンはただ一人、想いを抱きしめる。
ルナの涙、寂しさ、孤独……すべてが彼を支えていた。
ゆっくりと顔を上げ、揺るがぬ声で言った。
「……わかった。選択肢はないみたいだ。やるよ。」
リオが振り返る。
その顔には、得体の知れない笑みが浮かんでいた。
「……いい返事だ。
ここからが、本当のゲームの始まりだ、レン。
そして俺は……お前の一番近くで見届けてやる。」
> 「選ばされた」だけか、それとも…自ら「選んだ」のか。
レンが踏み出した一歩は、やがて誰かを救う光となるのか、
それとも、自らを飲み込む闇となるのか。
次の章で、すべてが少しずつ動き始める——
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