Chapter 8 : 「一億円の取引」
「金が欲しいんだろ?じゃあ、それなりの代償を払ってもらおうか。」
絶望の淵に立たされた少年が選んだのは――
誇りを捨て、金に手を伸ばすことだった。
深夜、満月の下。
豪奢な門の前で叫ぶ声と、冷たい目をした黒服たち。
扉の先に待っていたのは、かつて敵視していた男・リオ。
その笑みの裏には、どんな罠が潜んでいるのか…?
これは、ただの取引ではない。
覚悟なき者は、ここから先へは進めない。
少年の「決意」が試される章、始まる――。
その夜、レンは一人で部屋に座りながら、不気味な脅迫装置をじっと見つめていた。どこから手をつければいいのか分からなかったが、ふと一つの考えが頭をよぎった。
「リオ……。あいつも似たような金額を提示してきたっけ。今回のはもっと高いが……構わない。やるしかない。」
ーーー
翌晩。満月が静かに空に浮かんでいた。
レンは豪華な門の前に立っていた。門は黒服の大男たちによって厳重に守られていた。
「リオに会わせてくれ、今すぐに。」
レンの声は揺るぎなかった。
一人の警備員が眉をひそめ、嘲笑気味に言った。
「お前みたいな奴が“リオ”だと?失礼だな。‘リオ様’と呼べ。あんた、自分が誰に会おうとしてるのか分かってるのか?」
それでもレンは一歩も引かなかった。
「どうでもいい。ただ、俺がここにいると伝えろ。重要な話がある。」
警備員は少し黙り込んだ後、無線で連絡を取った。
リオは名前を聞くなり、クスッと笑った。
「すぐに通せ。金の匂いに釣られたようだな。」
ーーー
レンが邸宅の中へと足を踏み入れると、リオは高級な革張りの椅子に腰掛け、微笑を浮かべていた。
「ほう……心変わりか?」
レンは目を逸らさずに答えた。
「そうだ。ただし、一つ条件がある。一億円だ。」
一瞬、リオの表情が止まった。
だが次の瞬間、大声で笑い出した。
「ハハッ!まさかお前が金に目がくらむとはな!」
レンは無表情なまま答えた。
「お前には払えるだろ?」
リオは首を軽く傾けながら言った。
「まあな、払えなくはない。だが……手に入れるには、少しばかり“努力”が必要だぞ?」
レンは何も言わなかったが、その目は静かに、そして鋭くリオを見つめていた。
リオの目の奥に潜む何かが、これから待ち受ける試練の厳しさを告げていた——
沈黙の中で交わされた取引――
だがその裏にあるのは、見えない“条件”と、“試練”の匂い。
リオの本当の狙いは何か?
レンは、本当に金のために誇りを捨てたのか?
そして…
“努力”という言葉の裏に隠されたものが、
次なる地獄の扉を静かに開こうとしていた――。
次回、「試される覚悟と、冷たい契約」
運命の歯車が、音を立てて動き出す。