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Chapter 7 : 誘拐された妹と闇からの声

妹が消えた——

レンに突きつけられたのは、あまりにも非現実的な現実だった。

家に残された謎の装置と、そこから聞こえる冷酷な声。

金か、命か。希望を繋ぐ手がかりは、ただ一つ。

今宵、すべてが動き出す。



レンが家に戻ると、そこには異様な静けさが漂っていた。

急いで靴を脱ぎながら、彼は家の中に声をかけた。


「ルナ? ただいま……部屋にいるのか?」


しかし、返事はなかった。

リビング、彼女の部屋、キッチン——どこを探しても彼女の姿はない。


まるで地面が開いて彼女を飲み込んだかのように、跡形もなかった。

レンは慌てて外に飛び出し、通りを走りながら彼女の名前を叫び続けた。


「ルナ! どこにいるんだ!」


それでも諦めなかった。必死に頭を働かせ、考えうる場所を探し回る。

そんな中、かすかな音が耳に届いた。

それは、電話の着信音のようだが、ルナのものとは違っていた。


その音をたどっていくと、家の玄関近くに小さな奇妙な装置が置かれていた。

まるで誰かが彼に見つけさせようと意図的に仕掛けたかのように、目立つ位置にあった。


レンはその装置の唯一のボタンを押した。


途端に、低く不気味な男の声が響いた——


「……よく聞け。お前が誰だろうと関係ない。今、お前の妹は俺の手の中にいる。」


レンの全身が凍りついた。

手にした装置を強く握りしめる。


「妹を無事に返してほしければ……一億円用意しろ。」


「一億……!?」

レンは震える声で呟いた。


男はお構いなしに続けた。


「額が額だ、だから猶予をやる。二ヶ月だ。

その間、妹には手を出さないと約束しよう。」


レンは歯を食いしばり、怒りと不安を滲ませた声で問い返した。


「どうしてお前の言葉を信じろっていうんだ!? そんなの……希望にすがれってことか!?」


男は冷たく笑い、こう続けた。


「安心しろ。お前に信じさせてやるよ。

これから毎日、深夜0時ちょうどに——

この装置からお前の妹の声を聞かせてやる。」


「じゃあな。」


そして、通信は一方的に切れた。


レンは必死に装置のボタンを何度も押すが、無駄だった。

その装置は受信専用で、発信することはできなかったのだ。


静まり返った空気の中、レンは震える手で装置を見つめながら、絞り出すように呟いた。


「ルナ……絶対に助け出す。

命を懸けてでも——必ず。」





レンに突きつけられた“試練”は、戦場よりも冷たく、残酷だった。

妹のため、彼は何を選び、どう動くのか。

次回、第八章——新たな選択と、迫る期限。

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