Chapter 5 : 苦い真実（にがいしんじつ）
ご閲覧ありがとうございます！
前回に引き続き、レンとリオの緊迫したやり取りが描かれます。
彼の身体に何が起きているのか……少しずつ真実が明らかになります。
ぜひ最後までお楽しみください！
レンはゆっくりとリオの方へ顔を向けた。
半分閉じた瞳に、感情の色はほとんど見えない。
その声は冷たく、静かで、まるで他人事を語るようだった。
「……なあ、自分がなぜ生きてるのか分からない。それが、一番の問題だ。」
静かに息を吸い、レンは続けた。
「もし人々が、俺があの薬品を飲んで生き延びたと知れば――きっと真似するだろう。そして、たぶん……死ぬ。
他人の命に興味はないけど、面倒事に巻き込まれるのはごめんだ。」
短く沈黙が流れた。
リオは反応を見せず、そして突然――笑った。
信じられないほど軽く、そして静かな笑いだった。
“伝説”と呼ばれる男には似つかわしくないほどに。
「……自分だけが特別だと思っているのか？」
レンの眉がわずかに動いたが、その表情は依然として冷静だった。
驚きが確かにあったが、それすらも冷たさで覆い隠されていた。
「実はな……ファイターズ1と2のメンバーも、薬品を飲んでいる。」
リオの声が少しだけ低く、真剣味を帯びた。
「だが、大きな違いがある。
あれは内臓を破壊する。俺たち上位ランクですら、生き延びたのは奇跡だった。」
リオはレンの目をまっすぐ見据えた。
「だが、お前は――
訓練も経験もないただの作業員。
薬を飲んだのに、生きていて、しかも臓器に何の損傷もない……ありえない。」
言葉が空気を切るように止まり、部屋は静寂に包まれた。
機械の音だけが響く中、レンは何も言わずに黙っていた。
だがその胸の奥で、心臓の鼓動が――静かに、しかし確実に、乱れ始めていた。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました！
いかがでしたか？リオの語る「真実」は、物語の核心に近づく大きなヒントです。
次回は、レンの決意と、彼の運命を左右する新たな出会いが描かれます。
次のエピソードも、ぜひお楽しみに！
