Chapter 15 : 素直には言えないこと
信じたい。けれど、信じきれない。
レンの胸に渦巻くのは、希望か、それとも絶望か。
差し伸べられた言葉の裏にある“何か”に、彼の心は揺れる。
リオが語る真実。
それは、知りすぎていた“優しさ”か、それとも…計算された“偽り”か。
だが――
その場にいたのは二人だけではなかった。
静かに、鋭く、遠くから見つめる第三の視線。
すべてを見ていた“あの男”の存在が、やがて運命を変える。
心を試す章が、今始まる。
しばしの沈黙の後――
リオが静かだが鋭い口調でその場の空気を断ち切った。
「聞けよ。正直に言う。…あの奇妙な装置からの会話、たまたま聞いちまったんだ。
お前の妹が誘拐されていて、犯人は二ヶ月以内に莫大な金を要求してるんだろ。
だからファイターズに入りたいって?金が必要だから、俺を利用するんだろ?」
レンの表情には驚きと戸惑いが浮かんだ。
そして、少し間を置いてから、おそるおそる口を開いた。
「待って…どうしてそこまで知ってるんだ?
そんな詳細、通話じゃ言ってないはずだ。
やっぱり…“天才”って噂は本当なんだな…」
その瞬間、リオの表情にわずかな動揺が走る。
まばたきを一つしてから、無理に自信ありげな声を作った。
「…当たり前だろ。俺は天才だからな。」
レンはその一瞬の変化に気づいたが、あえて追及せず、
いつものように冷静な表情を崩さなかった。
やがて、リオはふぅとため息をつき、
どこか諦めたような声音でつぶやく。
「…こんなこと言いたくなかったけどさ。
俺、お前が可哀想だと思ったんだよ。」
すると、レンの目が一瞬で輝きを帯び、希望に満ちた声で叫ぶ。
「じゃあ…やっとだな!
もう“ファイターズ1”まで昇格するなんてアホみたいな旅、しなくて済むってことか!」
だが、リオはニヤリと皮肉げに笑って、こう返した。
「いや、そんなことは一言も言ってねぇ。
“ファイターズ5”で任務を受け始めて、訓練が終わってから…
その時に、俺が直接鍛えてやるって話だ。」
その言葉に、レンの顔は一変し、イライラした表情になった。
「…はぁ?意味ないじゃん、それ。
結局、何も変わってない。
…マジで、お前のこと…嫌いだ。」
そのまま、レンは背を向け、怒りのままにその場を立ち去った。
だが、レンは気づいていなかった――
彼とリオの会話を、遠くから静かに見つめる視線の存在に。
鋭い眼光と、濃紺の髪を持つ男――
その名は、「カイ」。
“ファイターズ5”の一員であり、彼の目には、何かを見抜くような光が宿っていた。
「…見ていた者がいる。」
リオとレンのやり取りの裏で、
一対の目が、静かに、鋭く全てを見つめていた。
彼の名は「カイ」。
ファイターズ5の影に潜むその存在が、今、何を思い、何を狙うのか――
友情か、裏切りか。
救いか、罠か。
すべてが揺らぎはじめる次回、
新たな火種が、静かに灯る。