Chapter 14 : 隠された才能
夜の訓練場。
鋼鉄の空気に、乾いた銃声が響き渡る。
「こいつ……ただ者じゃない。」
そう呟いたのは、伝説の男・リオだった。
新人──レン。
過去を語らず、感情も見せず。
だが、その指先から放たれた弾丸は、
誰よりも静かに、誰よりも正確に──標的を撃ち抜いた。
一体、彼は何者なのか?
その才能の裏に隠された真実とは……
いま、一つの「異常」が静かに目覚め始める──。
数分間の沈黙の後、訓練場にジェイソンの静かだが厳しい声が響いた。
「今日は射撃訓練を行う。化学兵器を正確に扱えることは、お前たちの最低条件だ。」
彼は小型で光沢のある銃を手にしながら、淡々と説明を続ける。
「これは初級用の武器だ。ランクが上がれば、より強力な武器が使えるようになる。……では、前方の的に向かって撃て。」
訓練が始まると、参加者たちは次々と標的に向かって発射し始めた。 中には優れた腕前を見せる者もいたが、的を外しまくる者もいた。
レンは無表情のまま、静かに銃を構えた。そして——
(まだ……忘れてはいないな)
レンはかつて化学兵器工場で働いていた。 その仕事の中には、新製品の試射も含まれており、彼は日常的に武器の性能を確認していたのだ。 それは戦場のような緊張感はないものの、事故を避けるための集中力が求められる作業だった。
その経験が、今ここで生きていた。
他の訓練生たちが焦る中、レンは淡々と、正確に標的を撃ち抜いていく。
訓練の終わり、ジェイソンが彼の元に歩み寄ってきた。 その顔には、わずかに笑みが浮かんでいる。
「よくやったな。お前には化学兵器の扱いに才能があるようだ。だが、過信するな。まだまだ成長の余地はある。」
レンは黙って頷いた。 その表情に変化はなかったが、胸の奥にはわずかな満足感が灯っていた。
(第一歩は……うまくいった)
訓練施設から出ようとしたその時だった。 レンの視界に、出口の前で立つ一人の人物が映る。
リオ──ファイターズ1の伝説的存在、その鋼の瞳がこちらを見据えていた。
すれ違おうとした瞬間、リオが手を挙げて彼を止めた。
「待て。」
レンは足を止め、ゆっくりと振り返った。
リオは真剣な表情で彼の目をまっすぐ見つめながら、静かに告げた。
「お前に……話しておきたいことがある。」
訓練は終わった。しかし、これはほんの始まりに過ぎない。
レンの中に眠る「何か」が、ゆっくりと目を覚ましつつあった。
──次の任務、それは偶然か、それとも運命か。
彼の一歩が、世界の均衡を揺るがす日が来るのかもしれない。
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