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Chapter 10 : 闇の中の声

誰にも聞こえない声。

誰にも届かない叫び。


真夜中、すべてが静寂に包まれたその瞬間——

「それ」は再び鳴り始めた。


絶望の淵に立たされた少年に、届いたのは……懐かしき声、それとも新たなる地獄の合図か?


止まっていた運命の歯車が、ゆっくりと……だが確実に、音を立てて動き出す——。



大邸宅を出た後、月は夜空の頂点に達していた。

時計はちょうど深夜0時を示している。


街は静まり返り、その静寂がかえって不気味なほどだった。

その時——

レンが持つあの奇妙な端末が突然鳴り始めた。


……一回だけ、着信音が鳴った。


それだけで、レンの足が止まる。

胸の奥が冷たくなるのを感じながら、彼は端末を両手で握りしめた。


「……ルナ、か?」


希望と恐怖が混ざった声で、通話ボタンを押す。

そして次の瞬間——


聞こえてきたのは、震えるような、泣き声に近い声だった。

でも、間違いなく知っている声。


「お兄ちゃん……レン……本当に? 本当に話せてるの? もう、二度と声を聞けないかと思ってた……」


レンの目が大きく開き、気づけば目尻に涙が浮かんでいた。

だが、それを乱暴に拭い取り、彼は叫ぶ。


「ルナ! 本当にお前なのか!? 頼む、どこにいるのか教えてくれ! 必ず助ける……命をかけてもいい! 誰に攫われたんだ!? 教えてくれ!!」


しかしルナの声は、弱々しく、壊れそうだった。


「わからないの……。学校の帰りに、急に意識がなくなって……気づいたら真っ暗な部屋にいたの。

何も見えない……ただの闇……」


「声がするの……誰かが話してる……でも姿は見えないの。気配だけがある。怖いよ、お兄ちゃん……」


ルナは必死に平静を装っていたが、その声からは不安と恐怖が滲み出ていた。

レンの胸が締めつけられる。


——そのときだった。


ルナの小さな悲鳴が聞こえ、通話の向こうに別の人物の声が割り込んだ。


あの不快な、嘲るような男の声。


「——っと、忘れるところだった。通話時間はたったの五分だ。……ちょうど終わったな。」


レンの身体がこわばる。

怒りで心臓が爆発しそうなのに、返事をする暇すら与えられなかった。


「それじゃ、バイバイ。」


……ツー、ツー、ツー。


通信が切れた。


「クソッ……!!」


叫ぶレン。だが、誰もそれを聞く者はいない。


拳を握りしめすぎて、手のひらから血が滲んだ。

けれど、その痛みは心の痛みには到底及ばなかった。


——そのとき。


遠くの建物の窓から、レンの姿を静かに見つめる男がいた。


リオ。

彼は、いつもの冷たい笑みを浮かべていなかった。


その眼差しは、まるで哀れみと後悔を滲ませたような……。

いや、それはもしかすると——


「かつての自分を、レンに重ねてしまった」

そんな表情だったのかもしれない。





通信機の音は消えたが、心に残る余韻はまだ消えない。

あの夜、月だけが見ていたわけじゃなかった――

闇の中で、誰かが静かに全てを見ていた。


それは警告だったのか?

それとも、深い闇へと落ちていく序章なのか――


――

この不穏な夜を読んで、どんなことを感じましたか?

ぜひ感想をコメントで教えてください。

皆さんの声が、物語をさらに燃え上がらせてくれます。お待ちしています!

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