ココアラテ
買い食いって贅沢なことだと思う。
帰宅途中に寄ったコンビニやスーパーで買ったものを歩きながら食べる。
どちらかというと歩きながら食いかもしれない。
とにかく美味しいものを若干粗雑に食べることは背徳感もこみで余計においしく感じさせる。
佐和子も働きながらのゼリー食は遠慮したいが、帰り道の買い食いは好きだった。
今日もコンビニで目についたものを片手に住宅街を歩いていた。
それはココアラテ。キャップ付きの紙パックにはいった割高なものだ。有名なチェーン店が出しているもので、チョコソースが入っているらしい。粉を練るココアと違って苦味がなくて柔らかい甘みがある。さっぱりとしたところも歩きながら飲むのに丁度よかった。
喫茶店で頂くココアも、家でつくる粉からいれるココアも好きだ。
コーヒーと違った苦味とあの特別感がいい。
ココアラテは特別さとカジュアルさがほどよくて日常的なのに不思議な感じがする。
例えば、道端に咲く赤い紫陽花。
濃いピンクで目立つのに初めて気づいた。
一昨年みた江ノ島の紫陽花にも負けない鮮やかさだ。
だというのに、ゴミ捨て場の側の植え込みだったからだろうか。佐和子は今日まで気づかなかった。
最近は雨が多い。
梅雨入りしたのだろう。
6月と言えば紫陽花を連想する。
それは佐和子も同じ。
でも、紫陽花をじっくり見たのは久しぶりだった。近くで見ると小さな花のようなものが集まって毬みたいだと思った。どこかで読んだ雑誌にこの赤い花びらのようなものが実は葉だと書かれていたことも思い出した。
ココアラテは家に着く前に飲み切った。
鍵を開けながら片手に鞄と紙パックを持つのはなんだか学生のころのようで懐かしかった。
たまにはこういうのもいいかもしれない。
佐和子はまた日常の楽しみを見つけた。