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20 嗤うエピキュリアン 


 カムイコタンの上空を一機の哨戒機が飛んでいた。


 THー12。テレーマ。

 爆煙を避け、少し離れた風上方面へ大きく旋回している。


 コクピットの窓から、一人の男が眼下のパノラマを見ていた。

 鶴喰一哉(つるばみ いちや)だった。

 感情の欠片もない、冷たい目をして燃え盛るカムイコタンを眺望している。


 後部座席で計測機器を睨んでいた白衣の男が報告した。


「Fe05プロトタイプ、消滅しました」

「ふうん。気づいた、か……。相変わらず、こざかしい。それとも朔良の仕業かな?」


 鶴喰はさほど興味もなさそうにつぶやく。


「まさか、分解、したのでしょうか?」


 白衣の研究員の声は震えている。


「そのようだね。データは取れているかい?」

「はい」


 鶴喰は何事か思案するように目を細めた。


「この映像はマスコミにサービスしてあげるといい。とても美しい、悪魔の魔法陣だ。あれはもう人間などではないのだと、気づくころには星がなくなってしまうかもしれないけどね」


「これは……。この一帯の全ての爆薬を同時に爆破したのでしょうか……」


 白衣の研究員は、ゴクリと生唾を飲み込んだ。


「怒らせたかな……。こうなると、手が着けられないね」


「参謀本部への通信を傍受しました」


 通信士が報告した。


「陸軍星形戦略作戦師団副司令官常丸優馬(つねまる ゆうま)大佐が戦死したようです」

「なるほど。それで、この花火か……」


 鶴喰は窓に頬杖をついて足を組んだ。

 噴火したように燃え上がるカムイコタンの惨状を見つめている。


「青いな……。たかが副官ごときでこれでは、子供の八つ当たりだ。君には少し、人生はぬるいようだね……。のんびりと英雄をやらせておくわけにはいかないよ、嵯城志騎」


 窓から射し込む赤い炎が鶴喰の白髪に反射して怪しく赤く染まった。

 前髪をかき上げ喉の奥で笑う。


 その窃笑(せっしょう)は愉しんでいるようでもあり、ひどくつまらなそうでもあった。



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