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18 光る闇の啓示


 夜半。昨日と同じ夢を見て、朔良はうなされて目を覚ました。


 ひどく汗をかいていて気持ちが悪いのでシャワーを浴びた。

 頭からお湯を浴びながら夢の中の映像を反芻した。


 あれは志騎だった。

 志騎が闘っていた。

 左手に日本刀を携え、たくさんの人を斬り崩していた。

 刀が人を斬るたび爆発が起こり、赤い魔法陣が闇に広がった。

 それは恐ろしくも美しい地獄絵図。


 あれはいったいなんなのだろう。

 どうして志騎が闘っているのだろう。


 知らないうちに涙ぐんでいて、シャワーを顔面で受け止めた。

 わかっているのだ、本当は何もかも……。

 全部知っているのに、知らないふりをしろと心の底の意識が命じる。


 だけど彼とシンクロするたび少しずつ心の扉が開いていく。

 多分、もう止められない。


 それは、ずっと昔から視てきた映像だった。

 恐ろしい映像を視るたびに無意識に彼を呼び、助けてと叫んだ。

 そして彼はいつも血と硝煙の中にその身を投じていった。


 彼を戦いに駆り立てているのはわたし……。


 パジャマを着てバスルームを出た。

 類は廊下側のベッドでよく眠っている。

 窓側の自分のベッドに腰掛けた。

 肩にかけたタオルで濡れた髪を拭く。


「光……」


 ぽつんと朔良はつぶやいた。


 そう。

 あのあと小さな男の子が光る闇を連れてくる。

 全てをおしまいにしてしまう、光る闇。


 急に胸の底から不安がわき上がった。

 何かに突き動かされるようにテラスドアを開けてバルコニーに出る。

 ぺたんと、膝をついた。

 遠い空に向かって、祈るように指を組んだ。


 これが彼を更なる地獄に突き落とすのだとしても、伝えなければならない……。


 急に、遠くに意識が引っ張られるような気がした。

 まるで意識だけが肉体を抜けてどこかへ運ばれていくようだ。


 ――シキ!


 遠くなる意識の中で、朔良はその名前を叫んだ。



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