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第五話 グリンタフ帝国の滅亡

登場人物:


クラウス: セリスタン共和国の将軍


エレナ: セリスタン共和国の将軍夫人


デュボワ: グリンタフ帝国の新皇帝


レイカ: グリンタフ帝国の新しい森聖女

 グリンタフ帝国は、かつての覇権と繁栄を完全に失い、国全体が荒廃していた。

 大魔道機関の崩壊による不作は続き、国民は飢え、貴族たちは反乱を恐れて城に閉じこもるばかりだった。


 そして、その混乱を見つめるセリスタン共和国の将軍クラウス は、ついに決断した。


「エレナ、長らく待たせたね。グリンタフ帝国は、もう、腐ったボロ家のようなものだ。暴政に苦しむ民衆を救うために、侵攻を始めるよ」

 

 クラウスは、冷ややかな笑みを浮かべながらエレナに告げた。


 エレナは 悲しげな顔を見せた。


「クラウス様。本当に、これでいいのでしょうか?」


「エレナ、あなたは甘すぎる」


クラウスは、低く冷たい声で返した。


「奴らがどれほどあなたを嘲笑い、どれほど踏みにじったかを忘れたのかい? あなたの尽くした国は、あなたを追放し、蔑み、必要がなくなればゴミのように捨てたんだよ?」


「……」


「そんな連中に、情をかける必要はないんだよ」


クラウスは 声を荒げた。


「あなたが捨てられた時、誰が助けました? 奴らか? いや、違う! セリスタン共和国だ! 我々があなたを救い、あなたが我々を救った! それが全てだ!」


エレナは 目を閉じ、深く息を吐いた。


そして、静かに瞳を開き、決意を込めた目でクラウスを見つめた。


「クラウス様の仰る通りです」


「ならば、行こう。グリンタフ帝国を完全に終わらせるために」


 セリスタン共和国軍は、圧倒的な士気でグリンタフ帝国の国境を突破した。

 疲弊したグリンタフ帝国軍は、戦意を失い、兵士たちは 次々と白旗を掲げた。


 数日のうちに、帝都は陥落した。


 捕らえられたのは、即位したばかりの新皇帝デュボワと、森聖女レイカ。


 二人は、帝都の広場で縄に縛られ、晒し者にされていた。


 民衆は歓声を上げていた。

 

「ざまあみろ、無能デュボワ!!」

「森聖女? どこがだよ、この詐欺女!!」

「お前らのせいで俺たちは飢えたんだ!!!」


 デュボワは、涙目になりながらエレナを見た。


「エレナ……なぜ、こんなことを⁉」


 エレナの瞳は冷たかった。


「デュボワ様……あなたは、私を追放しましたよね?」


「そ、それは……!」


「お前は不要だ、と言ったのは誰でしたか?」


「そ、それは…… でも、俺は……! 俺はただ!」


「ただ? ただ何ですか?」


 エレナの 口元には冷笑が浮かんだ。


「私を捨てたお前は、ただの無能だ! 森聖女の尊さを理解せず、権力を振りかざし、バカな女にそそのかされた。それが、お前だ!」


「ひぃっ…!!」


 デュボワは 青ざめた顔で震えた。


 その横で、レイカは必死に叫んだ。


「ま、待ってください、エレナ様! わたくし、悪くありませんわ! すべては、すべては……!」


「分かってますよ、レイカ。すべては、あなたの悪だくみだった。そうですよね?」


「ち、違います! わたくしは……!」


「違う? そうやって言い訳ばかりして、何も成し遂げられなかったのが、あなたです」


「くっ……!」


「大魔道機関もまともに管理できず、ただ 皇太子に媚びていただけの女。あなたが『新たな森聖女』になったせいで、国は滅びたんですよ?」


「……!」


 レイカは 絶句した。

  

 そして、クラウスが 一歩前に出た。


「もう話は充分だろう。処刑を開始しろ」


「や、やめろ! 俺を殺したら、グリンタフ帝室の血統が……!」


「そんなものを残したって、意味がない。むしろ、この国の未来にとって、邪魔なだけだ!」


 デュボワは、絶叫しながら処刑台へと引きずられた。

 レイカもまた、涙と小便を漏らしながら、引き立てられていった。


 そして二人の、断末魔の声が処刑場に響いた。


 処刑の翌日、エレナとクラウスは荒れ果てた王宮のバルコニーから、焦土と化したグリンタフ帝都を見下ろしていた。


 エレナは目を見開いた。


「こんなにも、荒廃していたなんて」


 かつて 美しかった街並みは、廃墟同然になっていた。

 貴族の邸宅は朽ち、民衆の家々は崩れ、道端には、餓死した者たちの遺体が放置されていた。


「これが……私が、かつて住んでいた国……?」


 エレナは 悲しげにつぶやいた。


 クラウスが 腕を組んで言った。


「この国を再建するのは、もう我々しかいない」


「はい」


「あなたはこれから、この国をどうする?」

 

 エレナは ゆっくりと息を吐き、目を閉じた。


 そして、確固たる決意を込めて言った。


「私は、もう二度と、この国を間違った道へ進ませません。必ず、緑豊かな国土を取り戻してみせます」


 クラウスは 満足げに頷いた。


「ならば、共にやろう。あなたの力が必要だ、エレナ」


「ええ。私にできることなら、何でもします」


 エレナはクラウスと抱き合い、熱いキスを交わした。


 セリスタンの新領土となったグリンタフの大地に緑を取り戻し、民衆を救うため、共に支え合うエレナとクラウス。


二人は困難な復興事業に取り組みながら、ますます夫婦の愛情と絆を深め、また、人々の尊敬を集めていくのであった。


 

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