表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/20

番外編短編・願いが叶わない唯一の原因

 W子は引き寄せの法則を実践していた。現状は冴えない事務OLだが、イケメンと結婚して億万長者になる想像をしていた。そうすれば波動があがり、願いが叶うと信じて疑っていない。


 ところが何度もイメージングをしても、何の成果がでない。スピリチュアルリーダーに金を貢いでいるのに何故だろうか。


 結果がないのにスピリチュアルリーダーの元へ通ってしまう。もう何十万と貢いだので今更後に引けない。損切り出来なくなっていた。


 そんなある日の事。部屋で一人、良い気分でイメージングしている時だった。


 目の前に天使が現れた。おとなしい顔立ちだったが、目は吊り上がり、表情は怖い。羽根もプルプルと振るわせているではないか。


『引き寄せの法則は巧妙な詐欺よ! そうやって良い気分にさせたまま、人を現実的に行動させなくしているんだから』


 天使はかなり怒っていた。


 天使が見えるなんて我ながら頭がおかしいと思ったらが、これでもスピリチュアル沼の住人だ。とりあえず天使の主張を聞く。


 引き寄せの法則はキリスト教異端グループが作ったモノで、基本的に聖書をパクって、薄めて、人間の欲望に適応したご利益宗教だという。


「はあ? キリスト教?」


 確かに引き寄せは外国から入って来たものだったが、まさか宗教と関係していたとは。


『元々宗教なんてお金に換算できないものなのよ。それが今はパクった方が一大産業と化し、利益を貪っているってどういう事!? 本当に腹が立つわ』

「いやいや、私に言われても」

『本当に人々の救いになる教えだったら、タダでカウンセリングして救いの道へ導けよ! 盲人が盲人の道案内すんなー!』


 天使は本当にお怒りだ。引き寄せで一番腹が立つのも、「神様」を意図的に抜いている事だそう。


『願いを叶えるのは、全知全能の神様だから! 宇宙でも高次元存在でも、潜在意識でもないから!』


 怒っている天使に疑問を感じつつも、これは何か知ってるかもしれない。自分の願いが叶わない理由を聞いてみた。


『それは、あなたが欲望を動機にして願っているからよ。聖書にも自分の欲望の願いは届かないって書いてあるから。動機は神様か隣人への愛じゃないと願いを叶えるのは無理ね。例え自分の欲望が叶っても虚しさだけが残るから、結果的に前より悪くなる』

「そ、そんな」


 スピリチュアルリーダーはむしろ欲望全開に行けと言っていたが。


『スピリチュアルリーダーがそう言うのは、耳に優しい言葉を言わないとお客さん来ないからよ。つまりビジネス、商売ってやつよ』

「そ、そんなー!」

『しかもあの人達、イエス様や聖母マリアのメッセージとか勝手に商売してるでしょ? キリスト教に何のリスペクトも知識もないのに。聖書では占いや魔術は禁止されているのよ。そんなスピリチュアルリーダーにイエス様やマリアが何かコンタクトを取る事はない。そもそもマリアは天国にいるから地上の人間とコンタクト取るなんて無理』

「そんな、夢壊れた! 昨日、聖母マリア様のヒーリングメッセージっていうセッション受けてきたのに!」

『百パーセント詐欺だったね。イエス様の声が聞けるスピリチュアルリーダーとか、完全なる偽預言だから、気をつけて』


 天使は憐れみ、今後は欲望を肯定せず、金銭欲もほどほどにしろという。これが悪の根で、悪い人達から騙されて、結局は無一文になるという。


『部屋も掃除しなさい! 身体も風呂に入って清めなさい! スピリチュアルで願う前に、リアルな事もしようね』


 天使の言葉は耳が痛いが、スピリチュアルリーダーは決して言わない事だった。


 その通りのような気がしてきた。願いが叶わないのは、自分の考え方やあり方が悪かったのだろう。欲に囚われていたと言われても全く否定できない。


 とりあえず、スピリチュアルリーダーのセッションはキャンセル。


 天使の言うように、部屋を掃除し、風呂に入る事にした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ