番外編短編・黒歴史ノート
F子はスピリチュアル沼からクリスチャンになった女だった。実はF子のような女は珍しくない。
「引き寄せの法則で既にあると腑に落ちると叶う」って何? どうしても意味がわからず、引き寄せの起源などを執念深く調べていたら、聖書のパクリである事がわかった。また偶然、スピリチュアル沼からクリスチャンになった友人とも再開し、聖書や教会へと自然と導かれていったが。
「神様、どうか母の病気がよくなりますように。アーメン」
今日も願いを祈っていた。家族が色々と大変で、もう神様に祈るしかないと、かなりネガティブ思考になりながら祈っていたが。
そんな時、ふと思いたち、部屋の総掃除をはじめた。すると、スピリチュアル沼にいた時のノートを見つけた。正直、黒歴史すぎて怖い。宇宙や守護霊、スピリッツガイドに祈った記録もノートにあり、眉間に皺を寄せつつページを捲っていたが。引き寄せのメゾットをしっかり忠実にに守っていたのか、全部過去形で祈りの言葉が書いてあり、叶った前提で宇宙や守護霊、スピリッツガイドに感謝もしていた。
残念ながら、その祈りが答えられたものは一つもなかったが、ノートを見ていたら、また何かピンと閃いた。
「そうか。イエス様も死んだラザロを生き返らせた時、もう先に神様に感謝してたじゃないか。〜してください、〜を叶えてくださいっていう祈りは、ちょっと違う? 何か乞食というか物乞いみたいだね?」
それに気づいたF子は祈り方を変えてみた。もう既に母は癒された。もう既に家族の問題は解決した。神様、ありがとう、と。
そう祈っていると、驚いた。何の努力もしていないのに、勝手にポジティブ思考になり、良い情報も掴めるようになった。母の主治医も良い人が見つかり、状況は少しずつ改善していった。
「まさかあの黒歴史ノートにヒントがあったとは……。引き寄せは祈る対象が偶像だったから結果もアレだったんだな。いや、本当に神や信仰、罪を抜いて薄めている引き寄せって色々と盗み過ぎだけどね……」
呆れつつも、過去の黒歴史ノートも破いて捨てた。要は何を信じるかがとても大切だと分かった。祈る対象は偶像ではなく、必ず今も生きている神様。その他は全部的外れ。それに気づいたら、もうスピリチュアル沼にはもう一切の未練もなかった。