番外編短編・祈りと願い
N子は大学生。最近は闇バイトも流行り、校内でも注意喚起がたくさん出ていた。普通の求人票にも闇バイトがあるらしく、バイトするのにも恐怖心がある今日このごろ。
ふと、本屋に行くと、引き寄せの法則の本があるのに気づいた。綺麗なビジネス書っぽいし、い一冊買ってみる事に。ポジティブ思考になれば願いが叶うらしい。良いバイトに巡り合えますようにっていう願いでもいい?
しかし、想像以上にポジティブ思考になるのは難しい。良い気分でいてもテレビのニュースは暗い。また闇バイトのニュース。
「なんなん? 引き寄せの法則って意味がわからない」
◇◇◇
悪魔はそんなN子を見ながら大笑い。
『ねえ、世の中は闇バイト多いね? 酷い世の中だね?』
N子の近くにより、そんな思考を吹き込んでいく。
人間の目には悪魔は見えないが、特定の条件下ではコンタクトが取れる。呪文、生贄、儀式なのだが、ネガティブな思考、思い煩いをしている時も、悪魔と周波数が合いやすい。
テレビ、ネットのニュースなどはわざとネガティブな要素も入れている。視聴者を不安がらせた方が物が売れるからだ。そんなニュースやネットを見ていると悪魔と波動があう。
『大きな声じゃ言えないけど、偶像崇拝や悪魔崇拝、反キリスト的になるとより我々と繋がりやすいがね。幻聴系の精神疾患も我々は背後にいる可能性がとても高いね』
悪魔はそう言うと、N子の心の希望を掠めてとっていく。これがポジティブ思考が上手くいきにくいのが真相だった。
だったらどうすれば?
◇◇◇
N子の姉はクリスチャン。そのせいか知らないが、ごくたまに悪魔(悪霊)も見えたりする。困ったものだ。
妹が最近引き寄せの法則にハマっているらしい。妹の背後には悪魔が見える事も多く、仕方ない。妹は宗教なんて嫌いだと常々言っていたが、ポジティブ思考になる為には、祈りが一番良いと説明した。
「はあ? 祈り? そんな宗教じゃん」
「まあまあ、N子。姉ちゃんと一緒に祈ろう。知ってる? 病院の入院患者は祈っていた方が治る確率が高かったそうよ。プラシーボ効果は確実にある」
「本当?」
半信半疑だった妹も一緒に祈っていたら、表情がだんだんと落ち着いてきた。
『はあ? 何、イエスの御名で祈ってるんだよ! わああああ、その名前を出すなよ!』
N子の背後にいた悪魔は、祈りの言葉にビビり散らかし、泣きながら去っていった。
引き寄せの法則は聖書と似ている部分が多いが、決定的に違うのは祈りの有無。本当は人間の力だけでポジティブ思考なんて絶対無理なのだが。
「お姉ちゃんは自分より誰かの幸せを一番願ってるからね。N子もそうだよ」
「う、うん……」
自分の欲望ではなく、他人の幸せを考える事が一番いい。自分の願いなど本当はどうでも良いのだ。