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姉妹石

 仕立屋という仕事は、広義では裁縫を生業とする人たちのことを指します。布地から衣装に仕上げていく人から、衣装の修繕をこなす人まで幅広く。けれども仕立屋といえば、一般的に衣装を仕立てる人のこと――デザイン、採寸、裁断、縫製――衣装を作るうえで必要不可欠な工程をすべてこなす人を指していました。

 衣服業界でもとりわけ技術が必要で、花形の職業でした。

 仕立屋の数は衣服業界全体からいえば一握りです。仕立屋ごとに特色があり、完成品を見ただけで誰の作品かわかるような衣装もあれば、わたしのように顧客に合わせて工夫を凝らす職人もいました。

 著名な仕立屋に作らせたものだと一目でわかり、ブランドを自慢するように見せびらかすために。対して、わたしのように特色のない衣装は、本来なら誰が仕立てたものかなどわかりません。特色が前面に出ていないにも関わらず誰の作品がわかるような仕立屋は、一握りの仕立屋のなかでも一流といわれていました。

 一流の仕立屋として、メアリッサの名は広まり始めていました。

 人を美しく仕立てることに、わたしは特別な意味を感じていました。意味を見出した原因は、起動された日にビオラ様と交わした会話でした。

 美しいものには、心と魂が宿ると。

 なにかひとつでも、心を動かす美しさがあるなら、そのものに心が有る証拠と。

 美しい衣装を作ることで心を理解しようとしていました。美しい衣装を着せることで、心を感じようとしていました。

 目に見えない、手で触れられない。いくら探しても見つけられない。

 心は心でしか動かせない。心は心でしか感じられない。

 心が無ければ、心を感じることは出来ません。もしも美しく仕立てることで相手の心へ触れられたなら、わたし自身にも心が有ると確信できると思いました。絡繰人形のわたしも、人とおなじように喜んだり悲しんだり、そういう感情を抱けるかもしれないと。

 僅かなスチームライトの明かりを頼りに、深い霧のなかを歩くように、あるかどうかもわからない不確かなものを――わたし自身の心を探していました。

 起動されたばかりの頃のわたしは、心も感情もない絡繰人形と自負していました。

 無いものを探すよりも、人らしく振舞うために、人の心を理解できればよいと考えていました。絡繰人形に心は無いのだから探すだけ無駄と、そういう結論を出していたはずなのに、人と触れ合ううちにわたしに心が有ればと思うようになりました。

 喜んでいる人と一緒に喜べて、悲しんでいる人の涙に寄り添うことができたなら。

 無いことを証明するのは困難で、ゆえに悪魔の証明と呼ばれています。けれども、有ることを証明するのは簡単でした。存在を証明できればよいのですから。

 無いと思い込んでいた不確かなものを探すこと。心を探すことは、絡繰人形らしくない非効率で無駄なこと。それでも探していたのは、心が欲しいという心の働きによるものだと今ならわかります。

 仕立てた衣装を喜んでくれて、わたしの心も少なからず動かされていました。だからこそ、心が欲しいと求めていたのでしょう。

 求めていたものはすぐ近くにありながら、わたしは見当違いのところばかり探していました。心は探すものではなく、ありのまま自然にそこへ存在するとも知らずに。


     *  *  *


 ドロッセルのドレスを仕立ててから六日がすぎていました。

 仕立屋の仕事も一二日目。これまで仕立てた人はビオラ様の使用人を一一名、オ・グラン・モゴルの店員を六名、ドロッセルを含めて合計で一八名になります。まだまだ新米の仕立屋ですが、仕事にも慣れて裁縫の効率もよくなりました。

 決められた日々をなぞるように朝一番に石炭の補充をして、リコの連れてきた使用人と一時間ほど雑談しながらどのように仕立てようかと思案します。代わり映えのしない日々ですが、とても充足していました。

 おなじような日々をすごしても、僅かな変化はあります。

 食事の時刻はおなじでもメニューは毎回違うように、まるでおなじ一日などありません。わたしの食事はいつもおなじ石炭化度の瀝青炭ですけれど。

 話を戻しますが、代わり映えのしない日々に思えても取るに足らない変化は常に起きています。小さな出来事が未来に多大な影響を与えることもありました。専門用語を用いれば、初期値鋭敏性と呼ばれるものです。

 わたしの身に起きた小さな変化――リコと一緒にオ・グラン・モゴルへ買い出しへいかないことで、わたしの運命は大きく変わりました。

 いいえ、運命というほど偶然の出来事ではありません。

 だからといえ、必然というほど確定的なものでもありませんでした。

 わたしの正体が誰にも知られずにすごせると思うのは、楽観的すぎますから。わたしの正体が誰かに知られてしまうこと。もしも知られるなら身近な人、リコの可能性が高いこと。

 運命というほど偶然ではなく、必然というほど確定的でもない――蓋然的な確率で、わたしの正体をリコに知られてしまう事件が起きました。


 事の始まりは、仕立てる手筈の使用人と雑談したあと、寝室から送りだして入れ替わりにククリ様が入室したことです。ククリ様の要件は、ビオラ城の絡繰の点検が一段落ついたというものでした。

 わたしと一緒にすごす権利を、リコは半日だけククリ様に譲ろうと考えたのでしょう。

「でしたら、今からククリ様の部屋の清掃をしてきますね。今日はメアリ姉さまと一緒に買い出しにいけません。ククリ様、お願いします」

 一礼したあと、わたしが引き止める暇もなく逃げるように寝室から出ていきました。

 報告も兼ねて、ククリ様と一緒に買い出しへいきました。仕立屋の仕事をするのは報告していましたが、わたしの仕事振りはククリ様の耳にも届いていたようです。

 リコにプレゼントしたイヤリング代を払うために始めた仕事ですが、未だにアス銅貨一枚すら手もとにありません。アウレウス金貨一枚で予算を組むので、わたしの手もとには、なにも残りません。

 無意識のうちに理由を求めて、わたしの望みを叶えようとしていました。

 今の生活を――リコがいて、クロンがいて、たくさんの使用人に囲まれて。ククリ様がいて、ビオラ様がいて、わたし自身も誰かから必要とされて。ビオラ城での生活は充実感に満ちて、これからもビオラ城で暮らしたい。そのような望みを抱いていました。

 払い終えてしまえば、ビオラ城に居るための理由もなくなるような気がしました。

 クロンを仕立てたときに、アウレウス金貨は相談に乗るための料金ではなく、衣装を仕立てるために必要な予算も含まれていると敢えて曲解しました。

 ドロッセルは、わたしの仕立てたドレスにアウレウス金貨二〇枚払いたい、わたしの仕事にそれだけの価値があると評価してくださいました。アウレウス金貨二〇枚が妥当な価格だとしても、頂くつもりはありませんでした。

 ビオラ城に居るための理由を失くしてしまうから。

 仕立てるのに必要なものを買い揃えたあとに、ククリ様の運転でビオラ城へ戻りました。


 エントランスホールへ入ると、わたしの帰りを心待ちにしていたリコがいました。

 今日は盛装していないため、リンネル生地の給仕服を着ています。エントランスホール奥の女性の彫刻の真上、上段ホールの手すりから身を乗りだして「お帰りなさい、メアリ姉さま」と、大きく手を振りながら満面の笑みを湛えて迎えてくれました。

 リコ、あぶないですよ。

 咎めようとした言葉が口から発せられることはありませんでした。

 バランスを崩したリコは吹き抜けのホールから転落して、さかさまにエントランスへ落ちてきました。ホールからエントランスまでは人の背丈の三倍ほど高さがあり床は大理石でした。このまま床に落ちれば大怪我。打ちどころが悪ければ死んでしまう可能性さえありました。

 最優先事項にリコを助けるとプログラムが走ります。

 駆け出すのと同時に、衝撃で足もとの大理石が砕けました。

 一歩、二歩、三歩――銃弾で穿つように足もとの大理石を砕きながら加速して、リコへ向けて跳躍しました。

 吹き抜けの上段ホールが高いことも、今となれば幸いです。

 床へ落ちるまでに時間も掛かるから。

 圧倒的なスピードで近づいているはずなのに、時間の流れが緩やかに感じました。すべての感覚器官を最高の精度まで上げた影響でした。リコを助けるために些細な情報も見逃さず、洪水のように膨大なデータを的確に処理していきます。

 伸ばした左手がリコの給仕服を掴み、抱きしめるように引き寄せました。

 けれども、まだ、安心はできません。このままの速度でリコを壁に押しつけてしまえば、どのみち助からない。リコを衝撃から守るためのクッションが必要でした。わたしの身体をクッションに使えればよいのですが、空中では身体を入れ替えるのも困難でした。

 膨大なデータから、身体を入れ替えるのに使えそうなものを探しました。

 横目に通りすぎていく女性の彫刻が見えました。わたしは左腕でリコを強く抱きしめて、右手を彫刻へ向けて突き出しました。彫刻の肩へ手が触れた瞬間、彫刻は砕けて、わたしの右手からも金属が弾け飛ぶような音がしました。彫刻に弾かれた身体は目論見どおり半回転して、わたしの身体がクッションになるように背中から壁に衝突しました。

 衝撃に耐えきれず石壁に大きな亀裂が入り、ぱらぱらと砕けた小石の雨がふり注ぎます。あたり一面が粉塵でけぶり、わたしの口からも火花が散りました。白い排気煙を吐くたびに、小気味よく爆ぜます。

 リコを助けられた。

 安堵した瞬間に、思考はすべて、違うものに塗り替えられました。

 今の出来事を、リコに、どのように説明したらよいのでしょう。どういう言い訳をしたら、騙されてくれるのでしょう。人では説明のつかない身体機能、口から爆ぜた火花の理由――どのような説明しても騙せるとは思いません。

 もしも、わたしの正体を含めて正直に話したら、わたしたちの関係はどのように変わるのでしょう。騙していたことを嫌悪されてしまう。大きな溝ができてしまう。メアリ姉さまと慕われることは二度とない。

 なにも変えたくない。

 今のまま、なにも変わらないでほしい。

 言い訳も思いつかないまま、左腕に抱えたリコを見つめました。リコはわたしの腕のなかで気絶していました。わたしの身体で衝撃を吸収しきれなくて、リコは気絶したようです。

 ああ、今のを見られていない。

 リコは気絶してなにも見ていないから、わたしの願い通り、なにも変わらない。

 ――わたしは、リコが気絶して安心していました。都合がよいと感じていました。リコを守りきれなくて気絶させたことを、よいことだと。リコが気絶したことを、願い通りだと。

「……わたし、今、なにを考えていたの」

 自然とこぼれた声は戸惑いに震えていました。

 胸のうちを黒いものが這うような感覚がありました。黒いものの正体は、嫌悪感というべきものかもしれません。他人のことを考えない利己的な黒く汚れたもの。もしかしたらリコに完治しない怪我をさせたかもしれないのに。そのような可能性さえあるのに、リコが気絶していることを都合がよいと――。

「ちがう、わたしはそんなこと、考えていない」

 汚いところから目を背けて、わたしはそんなに汚れていないと正当化するための言葉を吐いていました。

 本心からリコの無事を願うなら、気絶させてしまうほど衝撃を与えたことに安堵などしません。リコの無事よりも、わたしの正体を知られないことのほうが重要だと。そのような醜く浅ましいことを考えていたこと。正当化しようと言い訳したこと。

「ごめんなさい。ごめんなさい、リコ」

 リコの髪を梳くと、ぱらぱらと石壁の残骸が落ちて、耳もとではシャトヤンシーのイヤリングが弱々しく輝いていました。

 ビオラ様の仰るように、もしも美しいものに心が宿るなら、絡繰人形に心などありません。いいえ、わたしという絡繰人形に心はありません。わたしに心が有るなら、黒く汚れているのでしょう。そのような心なら無くてもよい。黒く汚れた心なら、空の絡繰人形のままでよい。

 ごめんなさい、ごめんなさい、と幾度もリコに謝りました。

 もしも本当の姉妹なら――わたしとリコのあいだに、本当の姉妹とおなじだけの絆があるなら、秘密を知られるよりも無事を願うはずです。秘密を知られて関係が壊れようと、たとえ嫌悪されようと、なによりも妹の無事を願うはずです。所詮は偽りの姉妹。血の繋がらない姉妹。

 わたしの足もとには、女性の彫刻の右肩から先が転がっていました。

 砕けた彫刻は、わたしとリコの未来を暗示しているようでした。

「リコさんは」

 ふいにククリ様の声がしました。

「おそらく脳震盪を起こしています。他に問題ないと思いますけれど」

 目立つような怪我はなく、臓器にダメージを与えるほどの衝撃を受けたわけでもありません。ただ脳震盪を起こしているので、軽度の頸椎捻挫などの可能性はありました。しばらく時間を置いてから症状が現れることも多いため、異常がなくても数日間は経過観察が必要になります。

「なら、医務室へ運んで。大きな音がしたから、すぐに使用人が集まるとおもう。上手く誤魔化しておくよ」

 わたしは両腕でリコを抱え直そうとして、右腕の違和感に気づきました。彫刻を利用して身体を入れ替えたときに、右腕のシャフトを破損したようです。人でいうところの、橈骨と尺骨を兼ねたシャフトが中央から折れていました。

 歯車が空転して、折れた蒸気管から白煙が上がりました。

 ククリ様も気づくと「メアリも修理が必要だね」と苦笑しながら仰いました。

 わたしは折れた右腕をかばうようにリコを抱え直して(もちろんリコのからだを動かさないように注意しました)医務室へ運びました。運んでいる途中にリコは意識を取り戻して、わたしに抱えられているのを不思議そうに見上げていました。

 リコを医務室のベッドへ寝かせたあとに、わたしに関することは伏せてあらましを医師に伝えました。医師の所見もおおよそわたしとおなじで、衝撃による脳震盪、あるいは失神とのことでした。医師と話したあとにリコのもとへ向かいます。

「わたし、エントランスに落ちたはずなのに、気づいたらメアリ姉さまに抱えられて。……姉さまが助けてくれたの?」

「いいえ、助けようと思いました。でも、間に合いませんでした。幸いにも絨毯に落ちたので、脳震盪で済んだようです」

 はじめて嘘を吐きました。

 わたしの正体を知られたくない、すこしでも繋がるような情報は与えたくない。利己的な考えから、わたしが助けたことは偽りました。

 リコは眩しそうに目を細めて、わたしを見上げていました。

 疑うことを知らない無垢な瞳。わたしの汚らわしい本性まで見透かされてしまいそうで、自然と目をそらしていました。リコは静かに目を閉じました。三呼吸ほど時間を置いて、リコは瞼をひらくとぼんやり天井を眺めながら夢心地な声で言いました。

「夢を見ていました。落ちるところまでは覚えているんです。エントランスに落ちていくわたしを、メアリ姉さまは風よりも早く走り、守るように抱きしめてくれました。夢のなかのメアリ姉さま、素敵でした。……ああ、もちろん今も素敵ですよ。いつでも姉さまは素敵だから」

「夢ですよ」

 わたしは話を合わせて、リコのひたいへ左手を置きました。

「リコ、元気なのはよいけれど、元気すぎるのも問題ですよ。これに懲りたら、淑やかになりなさい。今日から五日は仕事を休んで安静にすること。また元気なすがたを見せてください。……あ、くれぐれも、元気すぎないように」

「はあい。メアリ姉さまのように、淑やかになります。……すぐには無理だけど、姉さまのように素敵な大人になりたいから。明日から頑張りまーす」

 おどけるようにリコは舌を出しました。心配させないように、元気なところをアピールしたようです。

 ひたいに置いていた左手でリコのあたまを撫でました。

 リコの髪を梳くたびに、嘘を吐いたことを思い返していました。リコは一途にわたしの言葉を信じてくれて、わたしに都合のよい嘘に騙されました。

 こんなにも簡単に騙されてくれるのは、心から信じてくれているから。今日まで築いてきた信頼があるから。けれども、いつまでも騙し通せるとは思いません。童話では、嘘を見抜かれないまま結末を迎えたストーリはありませんでした。嘘を吐いた者は、辻褄を合わせるための嘘を吐いて、嘘に嘘を重ねて、いずれすべての嘘を見抜かれます。

 わたしの嘘が見抜かれたときに、知られたくない汚いところも暴かれるのでしょう。これまで築いてきた信頼は崩れて、わたしとリコの関係も終わるのだと思います。

「ククリ様も心配していたので、目を覚ましたと伝えてきますね」

 立ち去ろうと背を向けると、

「メアリ姉さま、腕!」

 わたしの折れた右腕に気づいて、リコは悲鳴を上げました。

 わたしは安心させるように微笑んで「大丈夫ですよ、すぐに直りますから」と、そのまま医務室をあとにしました。


 わたしは愚かでした。

 折れたシャフトは交換すれば直りますが、折れた骨を交換できるはずもなく治療しなければいけません。骨折の治療は時間も必要でした。嘘まで吐いて絡繰人形と知られないように注意していましたが、そういう考えは綺麗に抜けていました。

 わたしは医務室を出た足で、ククリ様のもとへ向かいました。

 リコの無事を報告するのと、折れたシャフトを交換して頂かないと仕立屋の仕事ができません。夜までに仕上げると約束していたので、すぐにでも直して頂かないと間に合わなくなります。

 骨折はすぐに治らないという考えは抜けていましたが、どちらにしても、ククリ様に修理を頼んでいたと思います。今の最優先事項は、衣装を夜までに仕上げること。わたしの正体を知られる結果になろうと、約束を反故にしてよい理由にはなりません。

 わたしの本性が利己主義にまみれた汚らわしいものだとしても。

 いいえ、汚れているからこそ、約束は守るべきだと思いました。わたしの正体を知られることよりも、わたしの汚らわしい本性を知られたくないから。


 右腕を修理して、背中のシリコーンも破損していたので肌よりも柔らかい軟膏のような修理剤を塗りました。しばらく経つと、程よく硬化してシリコーンの肌と馴染むようです。折れたシャフトの交換、蒸気管の交換、欠けたパーツの交換、右腕全域の洗浄、背中のシリコーンの修理――わたしの修理は一時間ほどで終わりました。

 修理してほしいと申し出たときに「本当にいいの」と、ククリ様に尋ねられました。

「お願いします」

 わたしは深く考えずに答えました。

 すぐに修理することで、わたしの正体を知られるかもしれない。ククリ様が尋ねたのは、そのような可能性を考慮していたからでした。

 修理を終えてすぐに衣装の作製に取り掛かりましたが、完成したのは約束の時刻ぎりぎりでした。スタンドに掛けるまえに使用人がたずねてきて、いつものように試着して不具合がないかなどの確認をしました。

「ありがとうございました」

 使用人は丁寧に一礼して、弾むような足取りで寝室から出ていきました。

 普段となにも変わらない一日……というには、様々なことがありましたが、ようやく一日が終わろうとしていました。五日ほどリコに休むように言い含めたので、しばらくリコと一緒の時間は減りそうです。リコが退屈しないように、暇を見つけては会いにいくつもりでした。

 でも、他のところは変わらない。

 朝一番に石炭を補充して、たずねてきた使用人と雑談しながらどう仕立てようかと考えて、オ・グラン・モゴルへ買い出しへ出掛けて、仕立てるのに必要なものを買いながら店員と雑談して――しばらくしたらリコも元気になり、いつものように側に居てくれて、今までと変わらない未来がおとずれると信じていました。

 使用人が退室してから二時間ほど経ち、ふいに足音が近づいてきました。

 ビオラ城で最も慣れ親しんだリコの足音は、寝室の扉のまえで止まりました。三度ほど控え目なノックの音が響いたあとに、

「メアリ姉さま、起きていますか。お時間よろしいですか」

 どことなく緊張しているような声でリコが言いました。

 普段のリコであればノックもそこそこに仕事の最中であろうと構うことなく入り、元気よく挨拶するのですが、今は別人のように淑やかでした。

 まだ本来の元気がないのかもしれません。あるいは淑やかになりなさい、と約束したことを守ろうとしているのかもしれません。今日一日くらい、一緒に眠るのもよいと思いました。わたしなら体調の急変に対処できるので、リコの安全のためにも一緒に居るのが最適でした。わたしから誘えば、リコも頷いてくれると思います。

 リコと一緒の時間をどうすごそうかと考えるばかりで、真夜中にリコがおとずれた理由を深く考えていませんでした。例えば、先程仕立てた使用人がリコに報告して、右腕が折れているのに仕事なんて出来ない、と不思議に思い真相を確かめるためにたずねてきたなど一瞬たりと考えませんでした。

「はい、起きていますよ」

「お邪魔しても構いませんか」

「リコならいつでも歓迎しますよ、遠慮なく入りなさい」

 わたしの返答に呼応するように、静かに扉がひらきました。

 おずおずと部屋へ入りながら「メアリ姉さま、折れた腕は治りますか」と、躊躇うような声で尋ねてきました。

「ええ、心配してくれてありがとう。もう直りましたよ」

 リコへ近づきながら、修理した右腕をこれ見よがしに動かしました。

 とたんリコは青ざめて「ひい」と息を吸うように短い悲鳴を上げると尻餅をつきました。

 どうして悲鳴を上げたのかもわからず「どうしたの、リコ。体調が優れないの」と呑気に語りかけながらリコへ近づきました。リコは尻餅をついたまま、足を懸命に動かして逃げようと足掻いていました。

「立ち上がれますか」

 手を差し伸べると、リコは「こないで、バケモノ!」と叫んで、わたしの手を払いのけました。リコは恐怖に歯を鳴らしながら目に涙をためて、わたしから距離を取ろうとしていました。払いのけられた手のひらを見つめて、わたしは静かに悟りました。

 ああ、日常はこうして終わるんだ。

 嘘を吐いたから、リコを怖がらせた。覚悟の出来ていないリコに、不意に真実を叩きつけたから。誰にも知られることなくすごせると慢心して、嘘に嘘を重ねていた。知られたときに相手の心を痛めると考えることもなく。

 秘密を知られたわたしに出来るのは、リコを今よりも苦しめずに遠く離れていくこと。

 リコは立ち上がり、わたしから逃げるように足を縺れさせながらも走り去りました。夜の闇のなかへ消えていくリコの背中を見つめて、わたしは思いました。

 もう、ここに――ビオラ城に居てはいけない。

 身体中に冷たいものが流れていくようでした。悲しいという感情が冷気となり、全身を駆け巡るように、凍えるほどに冷たく包んでいきます。もしも絡繰人形に感情があろうと、絶対に悲しんではいけないと思いました。嘘を吐いた報いだから、この痛みも苦しみも当然の罰なのだと。


     *  *  *


 次の日の朝、予約の順番がきた使用人をクロンが連れてきました。

 いつものように雑談をしながら衣装の指針を決めて「夜ですね、待ち遠しいわ」と使用人が出ていくと、クロンは気遣うような視線をこちらへ向けてきました。

「メアリ姉さまと話したいことがあるのですけれど」

 クロンの深刻な雰囲気から、昨日のリコの件がなにかしらの形で伝わり、わたしを心配しているのだとわかりました。

「リコのことですよね」

 尋ねると、こくり、とクロンは首肯しました。

 クロンの話は次のようなものでした。

 リコの体調の確認と、これからのことを話すために、ここへ来るまえにビオラ様と一緒に医務室へ寄られたようです。リコと会い、数日間は安静にすること。仕事に戻るにしても無理しないこと。仕事はククリ様とわたしの世話係を引き続きしてほしいこと。それらをビオラ様は伝えたようでした。

「リコの返答は、メアリ姉さまに会うのが怖い、と」

 わたしを気遣うような声音で告げました。

「理由を尋ねても、今は会えない、の一点張りで通されてしまいました。ビオラ様は一言も追及しなくて、わたしだけがリコを虐めているみたいで……。ビオラ様は原因に心当たりがあるようなので、わたしも引きましたけれど」

 クロンは不満を訴えるように唇と尖らせて突き出しました。

 溜め込んでいた話を吐き出し終えたのか、クロンは立ち上がり「仕事に戻りますね」と一礼して背を向けます。扉のまえで一度足を止めて振り返り、

「メアリ姉さまは、わたしの慕う姉。リコは、わたしの可愛い妹。ふたりのためなら、いくらでもちからを貸しますからね」

 頼りにしてください、と声がきこえそうな気強い笑顔を湛えて、もう一度礼をしてからクロンは立ち去りました。

 オ・グラン・モゴルへ向かうまえに、ククリ様のもとへリコの一件を報告にいきました。

 リコに正体を知られたかもしれない、と。


「まあ、そうなるよね」

 報告をきいたククリ様の反応は、このような事態を想定していたようでした。

「なぜです」

「考えてもみてよ、メアリは骨折してたんだ。半日もしないうちに治るんだから、腰を抜かすくらい驚くよ。メアリの身体がスチームエンジンで動く絡繰人形とまでは見抜けないけど。ううん、見抜けないからこそ、バケモノと叫んだんだろうね」

 ククリ様の説明をきいて、ようやく合点がいきました。

 そういう考えが抜け落ちていたこと自体、ありえないくらいの失敗でした。ククリ様も、自らの手で作り出した絡繰人形が、ここまで屑鉄とは思いもしないでしょう。考えなしに修理を頼んで、リコを安心させようと骨折していたはずの右腕をこれ見よがしに動かしたのだから、安心どころではなく恐怖しかありません。

「迂闊でした」

「迂闊だね」

 ククリ様も呆れているのか苦笑をうかべて、わたしの言葉を繰り返しました。

 もしも人に生まれていれば、きちんと折れた腕を手当てして、治るまでは仕事もできないので治療に専念していました。けれども、絡繰人形に生まれたことを誇りたい気持ちもありました。絡繰人形でなければ、あの状況でリコを助けられませんでした。

 脳震盪では済まず、命を落としていたかもしれません。

 リコに嫌われるだけなら、それでもよい。あの瞬間に居合わせて、リコを助けられたのだから。

「それで、メアリはどうするの」

「わたしの正体を、リコに打ち明けようと思います」

 人は違うこと。

 スチームエンジンで動く絡繰人形であること。

 秘密にしていたことに腹を立て、二度と口を利いてもらえないと思います。人の振りをしていたわたしを気味悪がり、シャトヤンシーのイヤリングを捨て、髪型も昔に戻すかもしれません。わたしとすごした時間は、嫌な記憶として残るのでしょう。わたしのせいで、人を信じることに臆病になるかもしれません。

「うん、それがいいと思うよ」

 わたしは秘密にしていた。騙していた。人と違うくせに人とおなじように振舞えることに自信を持ち、欺いていた。人を真似て完璧に振舞えることをよいことだと、そのように考えていました。

 人を騙すことがよいことなど、決してありません。

 わたしの正体が見抜かれないように振舞うのは、騙しているのとおなじです。

 はじめてビオラ城に来た日から、絡繰人形と見抜かれたり不気味に思われないか、人を利用してテストしていました。はじめから道具のように他人を見て、利己的に嘘を吐いていました。わたしの根本は、あの頃からなにも変わらない。

 これまでは、汚らわしい本性から目を背けていたにすぎない。

 わたしは、小さな住居から出るべきではありませんでした。あそこに居るかぎり、なにも偽らなくて済むのだから。

 リコだけでなく他の人たちも、わたしの正体を知れば、わたしの仕立てた衣装を気味悪がり捨てるはずです。わたしを嫌悪するのは仕様がなくても、アウレウス金貨一枚の大金を無駄にしてほしくありません。時間は戻せなくても……。リコが秘密を知るまえに戻れなくても、まだ他の人たちは知らないのなら――、

「……あの部屋へ、戻りたい」

 無意識のうちに呟いていました。

 ビオラ城での生活は、夢のように儚いものでした。

 儚くても宝石のように記憶のなかで色褪せることなく輝いて、失いたくないと思うほどに大事なもので、だからこそ今よりも汚したくないと思いました。

 わたしは、人とは違います。

 わたしの身体は、鉄と歯車で出来ています。

 人を模して作られた、心も感情もない絡繰人形にすぎません。

「わたしは、ここに居てはいけないから」

 リコ、クロン、ブローバ、たくさんの使用人。クリノリン、オ・グラン・モゴルの店員たち。小さな商人、ドロッセル。ここで多くの人と知り合えて、たくさんの友人ができたから。せめて、すこしでも綺麗なまま、友人たちの記憶のなかに残りたい。


     *  *  *



   リコ様へ


 わたしには、リコ様にも秘密にしていることがあります。

 お気づきかと思いますが、わたしは人ではありません。人を模して作られた、心も感情もない絡繰人形です。今更、このような手紙を書いたところで、許されるとは思いません。言い訳のように思われることも覚悟しています。

 リコ様のまえに二度と現れないと約束します。

 リコ様の心を騒がせないと誓います。

 だから、お願いします。手紙を破らずに読んでください。


 わたしが起動されたのは、リコ様と出会う一〇日前でした。

 起動したときに、わたしの側には製作者のククリ様、あとはビオラ様も一緒にいました。

 起動されたばかりのわたしは、どうして存在しているのかもわからない、なにも目的のない人形でした。ククリ様はビオラ様に、わたしのことを家族と紹介していたようです。わたしの作られた目的はククリ様の家族になること。そのために人の所作を覚えて、人の心を理解すべきだと考えました。

 本当の家族になるために、わたしは人を理解しようとしていました。

 リコ様と出会うまで、ビオラ様の真似をしてみたり、童話を読んで心や感情の勉強をしていました。

 起動されて一〇日目、わたしの正体を知らない人とはじめて会話をしました。相手はリコ様です。人として自然な振舞いが出来ているのか、リコ様の反応を窺いながらテストしていました。

 ビオラ様の舘ですごすようになり、最も会話をしたのもリコ様でした。

 気づかれないようにしていましたが、リコ様がわたしを見ていた時間よりも、わたしがリコ様を観察していた時間のほうが長いくらいでした。リコ様の言葉を、表情の僅かな変化を、その意味をいつも考えていました。

 慕われているのを好いことに、リコ様を利用していました。

 でも、本当は、気づいていました。いくら人の真似事をしてみても、わたしは心も感情もない絡繰人形です。ククリ様の家族になれるはずがなく、作品でしかありません。わたしは失敗作なのでしょう。不完全な絡繰人形だから、もう、存在している価値もありません。

 わたしは近いうちに、鋳潰されるかもしれない。

 リコ様に秘密を知られるまえに、立ち去るべきでした。

 仕立屋の仕事もあるので、予約を終えた頃に――あと五日したら、ビオラ様の舘から去ると約束します。ククリ様の命令がないかぎり、鋳潰されるまで、あるいは壊れるまで、ククリ様と暮らしていた住居から出ることもしません。

 約束する代わりに、ひとつだけ、お願いしたいことがあります。

 わたしの記憶装置は、人と違い、勝手に薄れたり消えることはありません。意図的に消すことも可能ですが、ビオラ様の舘ですごした記憶は消したくありません。リコ様と交わした言葉を、リコ様の向けてくれた表情を――あなたと生きた時間を、たとえ一秒たりと消したくありません。あなたとの思い出を、記憶の一番大事なところへ残しておきたい。わたしはもう、なにも記憶することがなくなるから。

 他の全てを消しても、壊れる瞬間まで……。

 いいえ、たとえ壊れても、鋳潰されても、歯車のひとつになろうと、あなたのことを覚えていたい。

 不愉快な望みだと思います。でも、どうか、覚えていることを許してください。

 お元気で、さようなら。


   メアリッサ



     *  *  *


 次の日、使用人を連れてきたクロンに、リコ様へ宛てた手紙を渡しました。

 これまで一日に仕立てるのは、使用人を一名、オ・グラン・モゴルの店員を一名――一日二名でしたが、今日から使用人を三名、店員を二名の計五名の衣装を仕立てることにしました。石炭の消費量も増えますが、絡繰人形は休まずに作業をしても問題ありません。一日中仕事をすれば最大で五名まで仕立てれました。

 仕事量を増やしたのは、手紙で約束した五日間のあいだに予約を終わらせるためでした。

 朝から昼までのあいだに三名の使用人と会い、雑談しながら衣装やアクセサリーの指針を決めて、昼から夜までに仕立てるのに必要なものを買い込んで、オ・グラン・モゴルの店員を二名仕立て、夜に戻ると朝までかけて三名の衣装を仕立てました。

 ひとりあたり、デナリウス銀貨一枚の利益が出るように調整して、期日までにデナリウス銀貨二〇枚、アス銅貨換算で三二〇枚――三〇〇アスを払えるようにしました。

 クロンも暇があれば、わたしの世話を焼いてくれました。

 言葉にしなくても、してほしいことを聡く感じとり先回りして用意してくださいます。鋏が必要なときは手もとへ置いてあり、布地を縫い合わせるときはソーイングマシンの準備を済ませて、簡単な裁縫であれば自ら率先して手伝いをしてくださいました。

 レディーズメイドの面目躍如ではありませんが、さりげない気遣いを頼もしく思いました。

 あまり雑談をしないクロンですが、終始無言というわけでもありません。

 わたしの身体を気遣うときだけ、いつも大人しいのが嘘のように饒舌になりました。

 クロンは、レディーズメイドの仕事のあと、深夜までわたしの手伝いをして「明日の仕事に差し支えるので、申し訳ありません」と、完成には程遠い衣装を残して退室するのですが、次の日の朝にはすべて完成させていました。

 朝の挨拶にきたクロンは、完成した衣装に驚くよりも、心配そうな眼差しをわたしへ向けてきました。「きちんと休まれていますか」「昨夜は眠りましたか」「無理しないでくださいね」と、繰り返して仰います。

 大丈夫ですよ。

 きちんと寝ていますから。

 無理なんてしていませんよ、顔色も悪くないでしょう。

 そういうふうに誤魔化しながら、約束の日に発てるように準備していました。

 クロンを経由してリコ様へ手紙を渡した日から四日目、約束の前日――目標の金額も貯まり、予約もすべて終わらせていました。今日一日、身支度の有余を設けていましたが、一時間もしないうちに準備は終わりました。わたし個人のものは少ないため、ソーイングマシンを片づけると、住み始めるまえと変わらないくらいに生活感が消えました。

 わたしの荷物は茶革のトランクひとつ。

 トランクの中身は、ドロッセルからの手紙など友人から頂いたものを入れていました。

 ビオラ城を発つと決めた日に、ビオラ様にも予定の日にちなどを伝えていました。前夜に改めて明日発つことを伝えて、あとは三〇〇アスの支払いも済ませました。

 ビオラ様へ報告を終えて寝室へ戻ると、クロンがベッドに腰かけていました。わたしを一瞥して、悲しそうに目を伏せます。

「メアリ姉さまは、明日、ここを発たれるのですね」

 尋ねたあとに悔しそうに唇を噛んで、右手の甲に左手の爪を立てていました。

 リコ様との仲違い、新規の予約を入れていないこと、生活感のない片づけられた部屋。そのような諸々からクロンは察したようでした。

「ごめんなさい、なにも話していませんでしたね」

 わたしは語りかけながら、クロンのとなりへ座りました。わたしたちの重みでベッドが僅かに沈み込みました。

「どこから話せばよいのか難しいのですが、そうですね。……わたしは、みんなに秘密にしていることがあります」

 秘密――絡繰人形であると打ち明けるつもりはありません。けれども、秘密があると告げることで、嫌悪されるかもしれないと思いました。クロンにも話せない秘密があるといえば、よい気はしませんから。

 クロンはわたしの横顔を一瞥して「……秘密ですか」と尋ねました。

「はい、秘密にしていたことをリコ様に知られて、怖がらせてしまいました。今回の一件で気づいたんです。秘密を抱えたまま、みんなを騙したまま、ここに居るべきではない。わたしの秘密をビオラ様は承知していますが、みんなを騙しているのは変わりません。もしも秘密を知られると、リコ様とおなじように怖がらせてしまうかもしれない。わたしを信じてくれた人たちに、そんな仕打ちはしたくない」

 クロンの肩が、わたしの肩に触れました。

 わたしを慰めるように、優しさを纏いながら肩を抱かれていました。

「わたしは、もう、嘘を吐きたくない」

 はじめの頃は、人のように振舞うために必要だと考えて、あえて正体を明かしていませんでした。人と接すること、人のように接してもらえること。完璧に人を演じられていると自負していましたが、人と絡繰人形の明確な違いにも気づいていました。

 いくら人を観察してみたところで、心の正体はわかりません。

 人を模して作られた、心も感情もない絡繰人形だと自覚させられるだけでした。

「メアリ姉さまは、だれよりも心が綺麗ですね」

 わたしの耳もとでクロンが呟きました。はじめてリコ様と会話したときの台詞を思い出していました。絡繰人形のわたしに無いはずの心。心を理解するために、ここへ来たこと。

「わたしに、心なんて有りませんよ。……もしも有るなら、綺麗ではなく汚れています」

 本当に心が綺麗なら、だれも騙したりしない。はじめから嘘を吐いたりしない。

「人に言えない秘密があるのは、みんな、おなじですよ。わたしにも人に知られたくない秘密はありますから。お互い様だから、メアリ姉さまに秘密があることを責めたりしません。他人に知られるのは我慢できても、身近な人、大事な人に知られるのは、考えるだけでも苦しい」

 クロンは「そうですよね」と同意を求めてきました。

 もしも見ず知らずの他人に絡繰人形だと知られたなら、ククリ様へ報告して終わりにしていたかもしれません。知られたのがリコ様だから、リコ様を怖がらせたから。ククリ様へ報告するのはおなじでも、わたしの意思でビオラ城を去ろうと決めました。

「近づけば近づくほどに、秘密を知られてしまう機会も増えるから。親しくなるほどに、秘密にしたい気持ちは大きくなるのに……。メアリ姉さまとリコは、わたしも羨ましくなるくらい仲良しだから。ままならないですよね」

 近づいたのとおなじだけ、秘密にしていたい気持ちも大きくなること。半面、近づいたのとおなじだけ、秘密を知られる可能性も高くなること。クロンの話は、わたしにも理解できました。

「でも、ひとつだけリコの姉として、断言しておきます。秘密がどんなものかなんて知りません。知らないけれど、リコがメアリ姉さまを嫌うはずありません。わたしも、どんな秘密をきかされても、あなたを嫌いになれないから」

 クロンの言葉が胸の奥底へ沁み込むような気がしました。

「秘密を抱えていることに、こんなにも苦しんでいるから。秘密があるのは、当りまえのこと。そんな一言で済ませられない。だれよりも心優しいメアリ姉さまだから、みんな、あなたのことを好きなんですよ」

 クロンの腕がわたしを抱き寄せていました。

「クロンはなにも知らないから……」

 優しい言葉ばかり掛けられていると、ビオラ城を発つという決意さえ揺らいでしまうような気がしました。悲壮な決意をしたというのに、今更、惑わせないでほしい。だからこそ卑怯な手段でクロンの反論を封じました。

 ――あなたは、なにも、知らないから、と。

「そうですね。メアリ姉さまの秘密を知りません」

 クロンは抱き寄せていた腕を離して、ベッドから立ち上がりました。名残惜しそうにしながらも扉まで歩いていくと、扉に左手をあて、ひとり言のように仰います。

「人の善意は、とても伝わり難くて。善意のつもりでしたことも、悪意と取られることさえあります。でも悪意は、とても伝わりやすくて、本人の意思より大きく人を苦しませてしまう。明日には忘れてしまうような些細な悪意でも、向けられた相手の心に一生涯残るかもしれない」

「わたしの秘密がリコ様を苦しめた。そう仰りたいのですか」

 クロンの言葉に、わたしは鋭い語調で返しました。

「そうかもしれません。……でも、本当に大事なのは、そこではないんです。悪意には鈍感なくらいが丁度よい。メアリ姉さまと出会うまでのわたしは些細な悪意を大きく考えすぎて怯えていました。悪意にばかり敏感だと、生きているのも嫌になるほど苦しい思いをするから。そういうわたしの悪いところをメアリ姉さまが変えてくれた。本当に大事なものに、メアリ姉さまが気づかせてくれたんです」

 クロンは一度言葉を止めて、大きく息を吸いました。

「本当に大事なのは、わたしたちが思うよりも世界は優しいということ。伝わり難くて気づき難いけれど、わたしたちのまわりは善意に溢れているということ。人の善意に気づけるようになれば、感謝の気持ちを忘れなくなるから。気づかせてくれたメアリ姉さまを、今度はわたしたちが助ける番だから」

 左手で扉を引くと、クロンは一度、こちらへ向き直りました。

「おやすみなさい、メアリ姉さま」


     *  *  *


 翌朝、わたしは久々に給仕服を着用しました。

 リンネル生地の給仕服はビオラ城の使用人が着ているものと変わりません。漆黒の髪をうしろで編み込んで、手首までの白のグローブに茶革のトランクという風采は、人目を引くことはありません。

 着飾るのが女性の楽しみなら。女性でいること、人のように振舞うこと、他人と一緒にすごすこと。そういう諸々を諦めたわたしには、機能性を重視した給仕服こそ相応しい衣装のように思いました。

 ククリ様とビオラ様、ふたりと並んで歩きながら主城のエントランスホールに着きました。わたしの砕いた床の大理石は差し替えるだけで済むらしく、今はもとの輝きを取り戻していました。壊した彫刻は取り払われて、今はなにも置かれていません。まるで刳り貫いたように不自然な空間は、新しい彫刻を置くことで自然と埋まるのでしょう。

 わたしの存在もおなじかもしれません。

 はじめの数日は不自然に感じても、いずれは居ないことが当りまえになり忘れられて消えていく。リコ様の記憶からも、クロンの記憶からも、みんなの記憶からも薄れて消えていく。忘れることを責めるつもりはありません。いつまでも忘れない絡繰人形と人は違うのだから。

 主城の門を抜けて外へ出ると、わたしは一度足を止めて振り返りました。

 はじめて見たときと変わらず圧倒されるほどの存在感があり、頂上は霞んでいました。外からは荘厳華麗に見えても、ここには確かに人々の営みがあり、今日まではわたしも営みの一員でした。多くの使用人と話して、友人になり、わたしを慕う人もいました。

「さようなら」

 両手でトランクを持ち、深く礼をしました。


 ククリ様は正門にスチームコーチを移動させるためアトリエの舘へ走り、ビオラ様とわたしはのんびり正門まで歩いていました。霧中から現れるように正門が見えて、一足先に着いたククリ様のスチームコーチも停車していました。

 いつもなら門扉のところにモーニングコートを着た使用人がいるのですが、今日は見当たりません。代わりにいたのは、これから社交界へいくようなドレスを着た人たちのシルエット。およそ四〇人のドレスには、すべて、見覚えがありました。

 一刻も早く確かめたくて、自然と早足になりました。

 今ほど霧を煩わしく感じたことはありません。

 近づいた距離だけ、人影も鮮明になりました。ドレスの形、彩り、着用した人たち。一番にわたしに気づいたのは、白の貴婦人、フィッシュテールドレスを着たクロンでした。洗練された動きでこちらへ向き直り、会釈しました。

 一見大人しいドレス、踊りだすまで本当の美しさをかくしたドレスを着て、相棒の縫いぐるみを腕に抱いたドロッセル。ブローバ、クリノリン。たくさんの使用人、オ・グラン・モゴルの店員たち。

 みんな、わたしの仕立てた衣装を着ていました。

 みんな、わたしの友人でした。

「みなさん、どうしたのですか」

 今日発つことは、ククリ様、ビオラ様、リコ様にしか話していません。ここに集合しているのを不思議に思いながら尋ねると「あんたこそ、どういうつもりよ」と、ドロッセルは不機嫌そうに眉根を寄せました。

「メアリッサと二度と会えなくなるかもしれない。そういう手紙がリコから届いたの。理由は知らない。寂しいけど、あなたの考えを尊重しようと思うわ。許せないのは、わたしに一言もなく去ろうとしたことよ。建前の友人なんていらないわ。わたしたち、友人でしょう」

 薄情者と言われたような気がしました。

 友人という言葉の重みを実感したときもありました。けれども、今は遠く感じます。わたしが絡繰人形だから、わかりあえない。ククリ様と家族になれないように、ドロッセルを友人とは思えない。わたしの秘密は、人々を遠ざけてしまうから。

「一緒に暮らしていながら、わたしも知りませんでした。ただの友人よりも妹が大事ということですよね、メアリッサ」

 ブローバが試すような目でこちらを見ていました。

「妹が大事なら、わたしも大事にされてよいはずなのですけれど」

 と、もうひとりの妹、クロンはオペラグローブに包まれた指先を口もとへあて、小首を傾げました。

「妹歴は、わたしのほうが長いから。一番の妹の地位は、クロン姉さまにも譲れません」

 と、人垣のうしろから声がしました。

 もう二度と会わないと約束した少女の声。ここに居ないはずのリコ様の声。

 四〇人の人垣が左右へわかれていきます。わかれた人垣の奥にリコ様がいました。

 お姫様のようなドレスを着たリコ様は、両手を胸のあたりで組んでこちらへ歩いてきました。きちんと髪を梳かして、耳もとでシャトヤンシーのイヤリングが輝いています。

 はじめて言葉を交わしたときに、リコ様の美しさを宝石に例えましたけれど、あの頃は原石でしかありませんでした。どのように輝くのか未知数の原石です。

 自信を持つことで、原石は磨かれて真価を発揮するのですから。

 今のリコ様は、もう汚れることのない、永久に輝く宝石のように美しく見えました。

 わたしのまえで足を止めたリコ様の目には、涙が輝いていました。胸のまえで組んでいた両手を差し出すように、わたしのほうへ伸ばして広げていきます。リコ様の手のひらにはアレキサンドライトのイヤリングがありました。

「この宝石、アレキサンドライトには秘密があるんです。日中はエメラルド、夜中はルビー。まるで違う宝石のように輝くんですよ」

 ――アレキサンドライトは色彩の変化が明確であるほど価値が高く、日中はエメラルド、夜中はルビー、と例えられます。クリソベリルのなかで最も高価なのは、このような性質からですよ――

 リコ様の美しさをシャトヤンシーに例えたときに、はじめにアレキサンドライトの話をしました。クリソベリルのなかで最も高価な宝石はアレキサンドライト、次いで高価な宝石はリコ様にプレゼントしたシャトヤンシーでした。

「似てますよね、メアリ姉さまと」

「わたし、と……?」

 リコ様はわたしを見つめて、輝くような笑顔で仰いました。リコ様の雀卵斑をシャトヤンシーに例えましたけれど、わたしとアレキサンドライトのどこが似ているというのでしょう。

「はい、似てます。アレキサンドライトの秘密と姉さまの秘密は」

 胸を掴まれたような痛みが走りました。痛覚なんて、絡繰人形にあるはずないのに。

 わたしの秘密をアレキサンドライトのように綺麗と思うなら、あのときに、逃げないでほしかった。バケモノと罵らないでほしかった。……いいえ、こんなの、ただの責任転嫁です。

「メアリ姉さまの秘密に驚いて、口汚く罵りました。でも、それも含めてメアリ姉さまだと気づいたから。みだりに他人に話すような秘密でもなくて。メアリ姉さまの秘密は、アレキサンドライトのように、わたしたちとは違うけど美しいと思うから。わたしの命を助けてくれたのに、ひどい言葉できずつけた。だから、あの夜のことは、ごめんなさい」

 あたまをさげた弾みでリコ様の頬を涙がすべりました。

「わたしこそ、申し訳ありません。秘密を知られたら関係が壊れるとかくしていました」

 リコ様は顔を上げて「お互い様ですね」と微笑みました。

「メアリ姉さまをアレキサンドライトに例えたのは、もうひとつ、理由がるんですよ」

 リコ様の耳もとでシャトヤンシーのイヤリングが存在を主張するように輝いていました。

「アレキサンドライトもシャトヤンシーもおなじ、クリソベリル。姉妹石だから。わたしがシャトヤンシーなら、メアリ姉さまはアレキサンドライト、わたしたちの姉妹の証になると思うから。これからも、メアリ姉さまの妹でいさせてください」

 おなじクリソベリルの宝石を身につけることで、血の繋がりは無くても宝石で繋がり、本当の姉妹のように思えるのかもしれません。もう一度、リコ様からリコへ、姉妹に戻るために。

「つけてくださいますか」

 イヤリングをつけやすいように膝を曲げて屈みました。

 リコは「はい」と元気に返事をして、イヤリングをつけてくださいました。リコのシャトヤンシーは右耳に、わたしのアレキサンドライトは左耳に。

 曲げていた膝を伸ばして「ありがとうございます」と一礼したあとに、記憶へ焼きつけるようにリコの顔を眺めました。姉妹に戻れても、リコに許されても、ビオラ城を去ることに変わりはありません。

 さようなら、と会釈をして、リコの横を通りすぎました。

 ククリ様のスチームコーチはひらいた門扉のまえに停めてあり、一〇ヤードほど距離がありました。ククリ様は愛車のスチームコーチへ寄り掛かり、退屈そうに欠伸していました。

「でも、いいの、メアリ」

 スチームコーチへ乗り込もうとしたときに、ククリ様が尋ねてきました。

「はい、リコに許されても、わたしの考えは変わりません」

 これからもビオラ城で暮らしていけば、なにかの弾みで他の人たちに知られてしまうかもしれない。そのたびに迷惑を掛けるのも申し訳なく、友人たちに秘密にしていることも嫌でした。

「メアリの考えはいいんだよ、問題はリコさんなんだ。ビオラに、アレキサンドライトのイヤリングを買いたいと話を持ちかけたみたいで、値段はアウレウス金貨一〇〇〇枚。妥当な金額ではあるんだけど、とても庶民に払えるような額ではないよね。ビオラは値引きを提案したけど、リコさんは、値引きするようなら他の商人から買いますと譲らなくて」

 アウレウス金貨一〇〇〇枚――庶民の一生涯の給金とおなじだけの金額でした。

 もしもビオラ様が商談に応じたなら、リコは生涯、わたしにプレゼントしてくれたイヤリング代を払わないといけません。いいえ、ビオラ様も商談に応じないという選択肢はありませんでした。他の商人から買うとして、ビオラ様のような紳商とはかぎらないからです。

 ビオラ様のほうを見ると、困り果てたように肩を竦めていました。

「一応、リコの言値で売買したけれど、条件を出したの。メアリッサがビオラ城から居なくなるなら、アウレウス金貨一〇〇〇枚で売るけれど、これからもビオラ城に居てくれるならアス銅貨三〇〇枚に値引きするとね。メアリッサがここに住んでくれて、これからも仕立屋の仕事をしてくれるなら、安いくらいだから。ククリが一緒に住んでくれるのも大きいわ」

 振り返り、リコのもとへ駆け出していました。

 このままビオラ城から去れば、リコは生涯の給金とおなじだけの借金を背負うことになります。このままでよい訳がありません。わたしの決断ひとつで、リコの人生さえ変えてしまう。でも、ビオラ様は条件を出したにすぎない。リコがなにを考えているのかわかりません。

 リコのまえで足を止めて、わたしは一言だけ尋ねました。

「……どうして」

「片時も忘れたくないから」

 リコは微笑みをうかべて答えました。

「なにを忘れたくないと言うのです」

 わたしは早口で責め立てるように尋ねました。

「メアリ姉さまは、わたしとの思い出を、記憶の一番大事なところへ残しておきたいと仰いました。わたしもおなじだから。姉さまとの思い出を、片時も忘れたくない。わたしには素敵な姉さまがいることを忘れないために、生涯の給金と同額で買いました」

 リコの目もとに涙がうかんでいました。

「……でも、本当は、一緒にいたい。まだまだ、姉さまと一緒にしたいことあるのに。いくら一緒にいても、時間が足りないのに……。二度と会えないなんて、そんなの嫌です」

 リコの涙が頬を伝いました。

 リコに願われたから。リコの借金を軽くするために。

 妹の為に――そういう贖宥状があれば、ビオラ城に居てもよいのでしょうか。

「ここにいても、よいのですか」

 だれにでもなく、わたし自身に問いかけていました。

 リコは泣きながら胸に飛び込んできました。わたしは受け止めて、抱きしめました。懐かしいリコの体温を感じながら、胸の奥底へはじめての感覚が芽生えるのに気づきました。温かくて優しい、不思議な感覚でした。

 言葉にするなら、嬉しい、という感情になるのでしょう。

 これまで散々、絡繰人形にないと否定してきた感情を自覚した瞬間でした。

 わたしたちの周りに友人たちが集まり、人垣にまじるようにククリ様とビオラ様もいました。わたしはリコを抱きしめたまま、ククリ様に尋ねました。

「感情というのは、クオリアなのでしょうか」

 青いものを見て青いと感じること、赤いものを見て赤いと感じること。温かいものに触れて温かいと感じること、冷たいものに触れて冷たいと感じること。五感での体験は、それだけの意味しかありません。クオリアは五感の刺激に意味を与えるものでした。

 花のような香り、人肌のような温もり、紅茶のような味。

 おなじものを見ているはずなのに、おなじものを食べたはずなのに、人の数だけ感じかたに違いがありました。クオリアは体験したものを、これまでの経験から置き換えて表すような概念でした。

 悲しいことを悲しいと感じること、嬉しいことを嬉しいと感じること。そういう喜怒哀楽も気持ちというクオリアの一種。わたしはいま、それを体験しているのかもしれません。

 わたしの疑問にククリ様は答えてくださいました。

「クオリアは心と身を繋ぐ概念だから。感情は身体の反対側、心の作用だね」

「……こころ」

 ククリ様の言葉を繰り返していました。

「うんそう、こころ。そもそも心身は硬貨の表裏みたいなもの。身体、つまり五感で体験しているのに、心が無いと考えるのは、硬貨に表しかないと言い張ることくらい馬鹿なことだよ。身体があるところに心もあり、逆もまた真なり。美しいものには心が有るというのは、よくわからないけどね」

 ククリ様はビオラ様を一瞥して仰いました。

 ククリ様はわからないと仰いますが、わたしはわかるような気がしました。

 心は、目に見えない、手で触れられない、いくら探しても見つけられない。美しさに心を動かされたときに、自身に心が有ると自覚できるような気がしました。

 わたしとの思い出を大事にしたいという、リコの一途で美しい心に触れられたから。わたしの心をリコの心が動かしたから、わたしにも心が有ると信じられました。

「わたしはビオラ様の仰ること、わかるような気がします。美しいものには心が有ると。美しいものに心が動かされると。あのときの言葉の意味がようやくわかりました」

「ククリは頭が固いのよ。メアリッサ、君が美しいものに心動かされたように、君の仕立てた衣装を着た人たちは、少なからず君に心動かされたと思うわ。ドロッセルは、君に会いたい一心で、遠くからきてくれた。クロンも他の人たちも、おなじくらい感謝しているわ。どんな秘密を抱えていても、君から離れたりしない。ここに居る人たちを信じて、秘密を打ち明けてみたらどうかな」

 わたしの秘密――絡繰人形であること。

 これからもビオラ城で暮らしていくなら、打ち明けるべきかもしれません。みだりに他人に話すようなことではなくても、友人になら。ククリ様の判断を仰ぐために視線を向けると、いいよ、というように頷きました。

 抱き着いていたリコが離れて、わたしのとなりへ並びました。

「驚くとは思うけど、受け入れてくれますよ。みんな、メアリ姉さまのこと大好きだから」

 リコは笑顔を向けて、確信しているように仰いました。

 わたしは改めて、四〇人の友人たちを見回しました。一人ひとり、どのような会話をしたのか、ただの一言さえ忘れていません。

「わたしは人間ではありません」

 言葉にした瞬間、数人が息を呑みました。戸惑い、驚くのを感じます。冗談なのか、本気なのか、どちらかわからないと困惑している人もいました。様々な視線を一身に浴びながら、わたしは深呼吸をしたあとに、もう一度、みんなの顔を見回しました。

 大切な人たちをこれからも大切にしたいから、わたしは秘密を打ち明けました。


   わたしの身体は、鉄と歯車で出来ています。

続きを書きたいとは思っていますが、他作品に時間を取られているので、仮完結とさせて頂きます。要望があれば、できるだけ早く書こうと思います。ここまでお付き合いありがとうございました!

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