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5.毒ガス電車/収穫祭

俺はとある中企業の部長。最近の悩みは

健康診断に引っ掛かり、妻の手料理が病院食みたいになったことだ。


「タカハシ!ここの資料の文字ちょっと大きくしてくれ。」

「部長 老眼ですもんねー。」

「お前もすぐに分かるようになるぞ。」

怖い怖い、と言いながら席に戻る部下。


ふと、そいつの隣の空席に目が行く。

つい最近まで真面目にデスクに向かう女性がいた席。


きちんと整頓された荷物はそのまま置いてあるがもう

その持ち主が帰ってくることはない。

――――彼女は短すぎる生涯を終えたのだ。


「いい人でしたよね。」


ぼーっとしている俺にコーヒーを持った部下、サトウが声をかけてきた。

「たしかお前は同期だったよな。」

「はい。よく一緒に飲みに行きました。」


サトウがネクタイピンに目を落としたのを見ぬふりをする。

おまえ自慢してたもんな。好きな人にもらったんです、って。


なんとなく彼の背中をポンポン と叩くと俺もコーヒーを淹れに行った。

休憩所のテレビでは「毒ガス電車事件」の話題で持ち切りだ。

死者13人、負傷者2200人以上。


俺の部下、田中の命を奪った事件。


犯人はまだ逮捕されていないが全ての車両で毒ガス入りの2ℓペットボトルが

発見された。電車は途中で緊急停車したがすでに。

運悪くそのペットボトルは田中のすぐそばにあったんだとか。


誰だか知らないが本当に惜しい奴の命を奪いやがったな。

真面目で、いい奴で、とにかく優秀だった。


国内で二番目に難しい大学を卒業、仕事は爆速で終わらせて

外国語、料理、絵、骨董品、ゴルフ…計り知れない知識で

営業もほぼすべて成功させて帰ってきた。

なんでこんな中途半端な企業に来てくれたのか。


安らかに眠って、たまに仕事手伝いに帰って来いよ。



∽◆◆◆∽




私はご飯の匂いに釣られて目が覚めた。


いつの間にかベッドの中にいて窓の外はすっかり明るい。

どうやら本を読みながら寝こけたらしい。


リビングに行くとクレアが朝食を食べていた。

「あ、ソフィア。おはよう!」

「おはよ…あれ?クレア狩り行かないの?」



「ひひっ。今日はお祭りでしょ!」



そうだった。今日は秋の収穫祭!一年に二回豊作を願う。

私はまだ一度も行ったことがないのだが。

三歳以下の子供は危険なので託児所に預けられるからね。


危険な祭りとは。

前に一度クレアに聞いたことがある。そしたら


「なんかバーンってなってブシャッってなるんだよー」


と眩しい笑顔で教えてくれた。

ジャパニーズピーポーに耐えれる感じかな?


「クレアー!あ、ソフィア起きたのね。二人とも そろそろ着替えなさい。」

「??」

「えーめんどくさい…」


奥の部屋から出てきた母さんは二つのドレスを持ってきた。

どちらも淡い黄色。稲の色をイメージしてみんな黄色なんだって。

フリフリしてるー。


「これ動きにくいじゃん、、」

クレアは乗り気じゃないようだが 私は少しワクワクしていた。

全人類(?)が一度は憧れるであろう正義のフリフリッ!!


二人でご飯を食べる椅子に並んで座って髪を結ってもらう。

「ソフィアもついに参加できるのね。」

母さんは感慨深いわぁ、と言いながら高速で手を動かしていく。


鏡はないけどクレアの方を見ると…

「わぁ…すごい可愛い!!!」


いつも背中までの薄い水色髪を放置しているのだが

ハーフアップにして黄色のリボンで留められている。

くせ毛が泣く超ドストレート。

美少女そのものって感じで、ドアを吹っ飛ばしたり猪を背負う子には見えない。


「ソフィアもすごく可愛いわ。お揃いにするの夢だったのよね…」

恐る恐る触ってみると、どうやら私はハーフツインになっているようだ。

私は全体に癖がある…銀色で毛先だけ青と紫?が混ざった色。

本当にどういう遺伝子してるんだろう?


少しおめかしした母さんもクレアも人間じゃないみたいに可愛い。

この前クレアが狩ってきた白い毛皮の上着を二人で羽織って姉妹コーデ完成!


「出発できるわね?」

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