3.なんかすごい人になりたい。
私は転生したのだと、気付いた日からちょうど二年の月日が経ち
ソフィア(私)は三歳になった。
今ではたくさん歩けるようになったし喋れるようになったよ!
記念すべきこの日に、二年間で分かったことを整理しようと思う。
お絵かき用に、と買ってもらった自由帳に書き留めてみようか。
少しざらざらした茶色い紙に大きな羽ペンを滑らせる。
この羽ペンはこの前「仕留めてきたー!」と言ってクレアがくれた物だ。
どう見ても小鳥とかではなさそうなサイズ。恐ろしい子…。
おっとっと、話が脱線しちゃった。
とにかく、まずはこの世界だね。
聞いて驚かないでね?
ここは、私が死ぬ直前にハマっていた乙女ゲームの世界っ!
そのゲームの大きな特徴は二通りの楽しみ方があること。
まずは乙女ゲームコース。
平民の儚い美少女が強い魔力を持っていると分かり
魔法学園に入学!悪役令嬢とかの妨害にも負けず攻略対象と力を合わせて良い国を作っていく。
もう一つが、戦闘ゲームコース。
魔法や武器でファンタジーな敵と戦う本格的なやつ。
こちらのヒロインは乙女ゲームコースの悪役令嬢、ディルヴィアーナだ。
ヒロインと仲良くなって共に魔王と戦うルートもあるんだよね。
ヒロインも悪役令嬢も戦えないんじゃないかって?
ところがどっこい。
乙女ゲームではか弱い美少女だったヒロインは
可愛い顔して重い斧を振り回す戦闘能力マックスの子へと変貌を遂げ、
悪役令嬢は元から化け物レベルで強いから問題なし。
ヒロインと王妃の座を奪い合うシーンではヒロインを守ろうとする
国内屈指の騎士様と剣で互角に戦っていたもんね。
「こんな棒で物が切れるの?すごいわ。初めて握った。」
とか言いながら。
そんな特殊なゲームは幅広いプレーヤーに支持され大人気。
私もすごく好きだった。
悪役令嬢が絶対死ぬことを除いては。
乙女ゲームコースではどうあがいても主人公の敵として断罪。
戦闘コースでも病気、戦死、断罪、自殺、、、、。
この世の死因コンプリートしたんじゃない?
二つのコースを合わせるとすごいルートの数なのに、
未だに誰も悪役令嬢、ディルヴィアーナ生存ルートを見つけられてない。
彼女、お美しいんですよぉ。
有名なイラストレーターが全力を注いだビジュアル…!
「彼女は私の最高傑作です!」
とインタビューで語られて話題になっていた。
だからグッズは攻略対象と並ぶ、いや、それ以上の人気を誇る。
しかも陰の努力家。
隙一つない立ち振る舞いも美貌も血の滲むような努力の結晶なのだ。
方向性が間違っていることはあれど真っ直ぐな性格も良い。
生き様がカッコいい…
どんだけやっても生存ルート無いから諦めようとしてたけどね。
――――その悪役令嬢が、
ソフィアとクレアの母親だった。
実写化されてるし、ゲームでは令嬢として手入れされてた外見も
少し荒れてるから気付くのに時間がかかった。
経緯は分からない。どうして彼女は今、平民として暮らしているのか。
子供(私たち)は何なのか。
クレアはもう化け物レベルの戦闘能力持ってそうだから
ディルヴィアーナの血を受け継いでるんだろう。
彼女ね、最近 近所の魔獣討伐団のおじさんと一緒に狩りに出かけるの。
魔獣討伐、危ないから激ムズの資格が必要だって聞いたんだけど?
一個前の最年少記録、27歳らしいんだけど?クレアは今 八歳。
でも、私は?
力も特別強くないし魔法も使い方分かんない。
頭脳は大人だから年齢の割には頭いい方かもだけど…
これからどうなるんだろうね?
“どうしよう???”
と日本語で自由帳に書いて締めくくり、誰にも見られないように
クマちゃんのぬいぐるみの中に隠した。
ナイスアイディアじゃない?母さんの裁縫道具でこっそり改造した。
首のリボンを解くとお腹の縫い目が開く。ちょっとグロい自信作!
飽き性の私はこの一年間、様々なことを試している。
走ってみたり、筋トレしたり、クレアと一緒に走り回ってみたり。
料理、裁縫、薬草採集…
どれも相変わらず続かなかったなぁ…
だけど、私にはどうしても頑張りたいものがある。
魔法だ。
せっかくこの世界に転生したんだから!




