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43.その後3

「沖縄……ですか?」


「ああ、どうやら新天地に沖縄を選んだようだ」


 お二人は本当に夫婦二人だけで引越しをなさったそうです。


「戻ってくる気はないのですね」


「戻る場所もないだろうしね」


「娘さんはどうされるのでしょう?」


「親権は鈴木夫人(陽向)の父親が持ったよ。養子縁組もするんじゃないかな」


「そうですか」


鈴木夫人(陽向)が生活全般を支えて、働いているようだ」


「今まで専業主婦だった方が直ぐに仕事を見つけられるものですか?」


「その辺は大丈夫そうだ。意外なことに彼女、かなり資格を持っていたみたいだよ。教員免許に栄養士……。結婚後も色々な分野の勉強をしていたようで、とにかく豊富だ」


「意外ですわね」


「ああ、学生時代だけでなく結婚してからも資格を取り続けていたんじゃないかな?まるで趣味のような感覚で。今後も仕事には困らないようだ」


 そういえば、彼女は確か特待生だったと聞いた事があります。

 元々、頭の良い方だったのです。


 彼と結婚していなければ、どこかの会社の役員に収まっていたかもしれません。


「語学力もあるから重宝されているようだ」


「翻訳の仕事ですか?」


「う……ん。仕事の掛け持ちといった方が正確かもしれない」


「掛け持ち?」


「普段は臨時講師だが、休日は通訳をしている。その通訳の仕事を通して翻訳の仕事をしている。最近は翻訳家として引っ張りだこのようだ」


「となると、陽向さんは今幸せなのですね」


「忌々しい事に……な」


 シオンは悔しそうに顔を背けました。


「彼女は幸せでしょうが、その伴侶(鈴木晃司)はそうでもないようですよ?それで矛を収めていただけませんか?」


 シオンを始め、伊集院家の両親、お兄様、友人達が鈴木家を徐々に衰退していくように追い込んでいたのを私は知っていました。

 私のことが余程悔しかったのでしょう。


 彼等の母校、彼等の友人達をも巻き込んでの報復。


 皆、私の為に動いてくれたのです。


 もういい、と言わなければなりません。

 私は、今とても幸せなのだから。



「今度、沖縄に行ってみましょうか」


「……」


「新婚気分で二人で旅行というのはいかがですか?」


「……っ」


「シオン、愛していますよ」


 彼は私から目を逸らしてしまいましたが、私は知っています。

 彼の耳が赤いことを――



 私を幸せにしてくださって、ありがとう。


 幸せになる事が彼等(鈴木家)に対する最大の報復だと言えば、シオンや皆は軽蔑するかしら?

 それとも、祝福してくれるかしら?


 一度聞いてみたいものだわ。




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